2007.10.3_コーチから――山川 和子さんに「禁止令」


■2007.10.3_コーチから――山川 和子さんに「禁止令」
●「9bs光岳」の下山において、山川 和子さんに突如「禁止令を出そうと思います」と宣言しました。
●なにを「禁止」したいのか簡潔な言葉で言い切ろうとすると難しいのですが、
1)山川さんに対して、食べ物、飲み物に関して、自分用のもの以外を持参することを禁じます。
2)周囲の皆さんに対して、山川さんから食べ物、飲み物を(あめ玉1個についても)もらうことを禁じます。
●山川さんには6.20にワンポイントレポート「山歩きと私の膝小僧痛のその後」があり、今回9.28にワンポイントレポート「南アルプス光岳にて」があります。いずれも下りで痛むひざに関するものです。加えて、登りでも苦労していることが多いかと思います。
●痛みや、それに起因する不安を抱えながら、「a」と「b」という糸の会初期からの組み合わせを原則として守っているのはえらいといえばえらいのですが、そろそろ悲壮感ただよう、という雰囲気もなしとしない感じもあります。
●かなり長い間「体重を落とす」という方向への努力も(一応は)あったようですが、現在ご覧のとおりです。
●ともかく、山の中での会話の95%は食べ物の話ではないかと思えるほどですから、山川さんの「食欲」をセーブさせようとしても成功しないし、強引にセーブしてもストレスが何を引き起こすか分かったものじゃありません。
●食べ物の話は禁じません。どうぞ存分に。それから周囲がうらやむ食べ物・飲み物を見せびらかしつつ食べるのも禁じません。
●そのかわり「だれかにあげる」楽しみを禁じます。おいしいコーヒーも、抹茶もダメです。
●山川さんのところでは、次男の哲太朗くんも結婚して「食べさせる楽しみ」が当面なくなったようです。そのことも考えると、糸の会の防衛策として「禁止令」は適切かと思うのです。
●もちろん、目的は、ひざをだましながら、いつまで山を歩けるかということです。戸籍年齢では元気な先輩が何人もいますから、問題はひざ年齢ということになります。
●しかし、待てよ。ひざの責任にしているけれど、山川さんの山歩きをじわじわと難しくし始めているのは、ほんとうにひざだろうか、という疑問がいくぶん混じっています。
●体重が落ちないのならザックを軽くする。ザックを軽くするためにはザックを小さくするのが早道、ということで新しいザックを買ったはずです。
●しかし外側はコンパクトになったけれど、食料庫たる保冷バックはなんだか以前と同じじゃないかと思うのです。それから、以前、一眼レフカメラを使っていたときと同じようなサイズのバッグを巨大ポシェットとして持っていますよね。ああいうのをぶら下げるのは単純な重さ以上の負担があると考えるのが常識的なところです。
●見ていると、自身の減量も、ザックの減量も「ゆるい」のではないかと思うのです。山でだれかに、おいしいものを食べさせたいと考える「ゆるさ」を禁じるのが今回の本意です。
●具体的な提案をひとつします。予備の水を5リットル持ってください。ペットボトルだと水漏れ事故が心配なので、安いポリタンやウエートトレーニング用の水おもりを買っていただく必要がありますが。
●軽くするのに、なぜおもりなのかというと、山川さんの「ゆるさ」のなかには、まだ、「鍛えればいい」という考えが残っていて、以前の岡田 恭子さんのように「驚異の軽量化」へと向かうことができないのです。ですから5リットル(5kg)のいつでも捨てられるおもりを持って、装備を強制的に減らしてもらいたいのです。
●佐藤 時子さんは数年前に靴の軽量化で延命をはかり、最近超軽量コンパクトなザックにしました。軽さによって山歩きのさらなる延命をはかろうという作戦です。
●そういうことがやれれば、おそらく周囲に「ゆるさ」を感じさせることはないのだろうと思います。「ゆるさ」を縛らずに軽量化をはかるには5kgのウエートを積むという逆手が有効かと思うのです。
●登りは、どうぞ、ハードな小屋泊まりを想定してがんばってください。あまりにもきついようなら水を捨てればいいのです。
●下りでは、もちろん徹底的に軽くして、ひざへの負担をできるかぎり軽くしながら、十分に使って強化しなければいけません。痛みと会話しながら、ゼロからの建て直しという考え方です。
●そして重要なことがあります。「7e八甲田山」で福田 富子さんに対して言ったことなのですが、自分の能力と比較する人を、トップグループのなかに見つけるのではなくて、ドン尻争いのライバルとして見つけなければいけないのです。
●いやないい方になりますが、最初にバテる人が、すべての苦痛を引き受けることになります。その役から逃げるのです。日帰りの「c」や小屋泊まりの「b」ではめいっぱいの計画を立てますから、ドン尻の人は苦しい思いをすることがありえます。(「d」や「e」もがんばるケースはありますが、計画そのものに逃げ道を用意しているつもりです)
●最初にバテないためには、2番目にバテそうな人をマークして、ほんのちょっと抜いて歩ければいいわけです。これは体力、気力というよりも、技術の老獪さというべきです。……そういわれれば、山川さんは、毎回、堂々と歩くイメージではないのでしょうか。小さな工夫が見あたらない。毎回、同じように苦労する。行き当たりバッタリにヤバくなるので、それを気力で押し切るしかなくなってしまう。
●精神年齢が若いのかもしれません。もうすぐジパング世代なわけですから、「老獪さ」が必要です。ひざを「ゆるさ」の負担から解放してみることはできませんか?
●……で「禁止令」はいつまで? ですが、心を入れ替えたようなら、周囲の皆さんのご意見によって、解除します。この冬になんとか新しいスタイルを身につけていただきたいと、思うのですが。
●なお付け加えますと――鈴木 一誌さんのホームドクターはビジネス年齢を長くするという「投資」という考え方で健康を管理しているのですが、肥満のひとには最初に、食欲減退剤を処方して急激に5kg体重を落とすのだそうです。もちろん医者として慎重な管理のもとにすすめるのですが、急激に5kg軽くなると、それまでの状態がいかに病的であったかが実感できるのだそうです。「戻りたくない」と思わせる。ショック療法の体重差が「5kg」なのだそうです。ザックに入れる5リットルの水は、うまく扱えばそういう最先端の感覚を体験させてくれるかもしれません。知恵を働かせて試行錯誤してみてください。


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