お知らせいろいろ
………2001.9.30(scrolling messages)


■scrolling messages
*このメッセージは、私のすべての計画書(糸の会、朝日カルチャーセンター千葉、東武カルチュアスクール)に、順次スクロールしながら載せているものです。ここに再録したのはその6.18〜9.25分。


●事故未遂と睡眠薬についての報告です。9月20日から4泊5日の赤石岳+荒川岳はとんでもない好天でした。残念ながら西は白山までで日本海は見えませんでしたが、東は伊豆大島から駿河湾の奥に沼津アルプスもバッチリ見え、南は浜名湖、北は北アルプス全域と雨飾山〜妙高山あたりまで。富士山は前日の初冠雪で白く輝き、時間とともにそれが少しずつ消えていく……といったドラマチックな風景のなかを歩きました。晴れているのに風はなしという爽快な天気に、赤石岳山頂ではけっきょく2時間半も遊んでしまいました。
●で、事故未遂ですが、3日目のその好天の朝、K.西沢さんが岩稜で岩から転落、千枚岳と悪沢岳(荒川東岳)の鞍部の谷に吸い込まれていきました。今回のルート上には慎重に通過したい場所が3カ所あったのですが、その最初で事故は起こりました。クサリをつけるほどではない岩場ですからホールドもスタンスもあって危険ではないのですが、左右は深く切れ落ちて、高度感はすこしあります。しかし、その恐怖感によって動きが鈍ったというのではないようでした。
●西沢さんは昭和ひとケタ世代ですから糸の会ではしばしば最高齢の参加者となりますが、喘息をかかえながら「a」と「b」に積極的に参加されています。今回はその喘息が(発作としては軽いものだったそうですが)出て、長い登りはちょっと苦しそうでした。そのような疲れもあったでしょうが、直接的な問題は岩場で裏返って三点支持で下る数歩のところで、手袋をはずさなかったことにあると見えました。結果的に幸いだったのは悪沢側の谷に転がり落ちていったのですが、そこは草つきのふかふかの土の斜面で、西沢さんは10mも下らずに、足を踏ん張って止まっていました。小さな打撲と、眼鏡の紛失というだけで、済んだのは、標高3火000mの岩稜での転落としては奇跡的でした。
●……で、話は睡眠薬についてです。夜のミーティングでA.小林さんが、睡眠薬や睡眠導入剤などを使用すると、朝目覚めても、薬の影響は18時間ぐらい続くので危険なことが多いという話をしました。西沢さんは山小屋での安眠を確保するために少量の精神安定剤を利用していたのです。
●……で、3泊目と4泊目に西沢さんは精神安定剤の使用を中止しました。その結果、やはり薬を使わないと午前中の体の動きがずいぶんちがうということを確認したということです。じつは8月の北岳〜塩見岳で(西沢さんは大丈夫だったのですが)K.斎藤さんが苦しみました。もともと高度障害の出やすい体質だったのですが、1泊目の北岳肩の小屋で眠れなかったことから翌日は胃が食べ物を受けつけることができなくなって、消耗戦になったのでした。そのとき安眠対策をいろいろ話し合ったのですが、睡眠薬にしろ、睡眠導入剤にしろ、精神安定剤にしろ、薬で眠ろうとする結果が、翌日に危険な要素を残すという認識まではありませんでした。山小屋泊りを嫌うH.小池さんあたりに睡眠導入剤などの利用をすすめたりしてきましたが、こういう危険があるということは十分に考えないといけないと思いました。(9.25)


●最近、写真に一歩踏み込もうとしている人を見かけます。流れのひとつはカラーリバーサルフィルムで撮りたいというケース、もうひとつはデジタルカメラにしようかなと考えているケースのようです。
●簡単に書きますが、花の写真などには接写能力に優れたデジタルカメラが向いています。画素数は200万画素で十分ですから、5万円以下で買えるはずです。パソコンを使える人は、エプソンやキヤノンの写真画質プリンターの最高品質のもの(実売価格6万円以上)を使うといろいろなことができます。それらのプリンターでダイレクトにプリントできる機種もありますが、パソコンなしにデジタルカメラを使いたい人は、フジの看板を出したDP店で、「フロンティア」というデジタルミニラボ機をそなえたところを探して下さい。従来のカラープリントと同様の写真が(いくらか割高になるかもしれませんが)プリントできます。データをCD-ROMに保存しておいてもらうこともできます。
●また、従来のカラー写真(カラーネガフィルムからDP店でプリント)では見たものがそのまま写らないという人は、多くの場合、カメラが悪いからではありません。注文をつけて焼き増しを頼むと驚くほどちがった写真になって出てくるので、そのことがわかります。プリントのときにキカイとオペレーターがシロウト好みに調整しているからです。そういう他人のお節介がいやな人は、カメラが撮った写真をそのまま再現してくれるカラーリバーサルフィルムを使うのですが、これはデリケートなフィルムなので、コンパクトカメラなら10万円以上の高級機、あるいは一眼レフカメラでないとなかなかうまく撮れないはずです。とりあえず試してみたい人は量販店でフジクローム「プロビア100F」を1本買って、オートのまま撮ってみて下さい。それで「驚くほどいい」写真が撮れていたら、そのカメラはOKです。
●その結果、本気で撮ってみたいと思ったら、写真を見るためのライトボックスとルーペが必要です。ライトボックスはフジカラーのものをすすめます。A4薄型で普及価格の「カラーイルミネーターLite」(定価27,800円)か、小型で安い「フジクロームビュアー5000」(定価13,000円)が最低条件と考えておいて下さい。ルーペはプロ品質の4倍がベストです。フジ(定価14,800円)、キヤノン(定価19,000円)、ニコン(定価14,000円)、ケンコー(定価19,800円)、ドイツ製の最高級品としてはシュナイダー(定価28,000円)やローデンシュトック(定価28,000円)があります。私が仕事で使っているのはニコン印ですが、同じものがプロラボの堀内カラーから出ています。定価はたしか9,800円。HCLというマークが入っていると思います。DPチェーン店のカメラのキタムラの堀内カラーのコーナーで買えるようです。いずれも定価は量販店で割引価格になります。
●なお、カラーリバーサルを現像に出すときには「スリーブ仕上げ」として下さい。要するに6コマ切りのフィルムが透明シートに並んで入ってくるだけです。それをライトボックス上でルーペで見て、ザッツ・オール。終わりです。プリントしたり、印刷したりするのは二次的なことで、フィルムをルーペできちんと見たときが最終の写真のカタチと考えておいて下さい。(9.15)


●朝日新聞社の「週刊日本百名山」の最終巻(第50巻)の原稿を入れました。無責任な書き方ではありましたが、毎週2山(しかも地図を先行入稿)というのはけっこうたいへんで、連休などを利用して書きためようと思ったことも何度かありましたが、けっきょくズ〜ッと締め切りに追われっぱなしで終わりました。本は12月まで出つづけますので、原稿料も年内支払われるわけですから、その間に代わりの仕事をやるように準備していたところ、某出版社の編集者が『がんばらない山歩き』の続編のようなものを書けませんかと言ってきました。初対面で、やることに決めました。たぶん、ここ6年間の500山に近い体験で実際にあったエピソードをきっかけに、道具と技術について語れればと思っています。……それはどちらかというと軽い仕事だと思うのですが、いよいよ、糸の会の発端でみさなんに了解していただいた「ガイドブック作りのための取材を兼ねて」の山歩きのまとめにかかります。地図をどうするかという大きな問題に解決策が見えてきたのと、インターネット上でも扱える方法というのが視程内に入ってきたからです。こちらはこれから、ゆっくりと動き出します。(9.10)


●M.森山さん(ACC千葉&糸の会)からのEメールの全文です
★突然ですがお別れの時がきました。田井さんに10月期欠席通知のTelを入れてから数日後、パート先の店が9月いっぱいで閉店する旨、上司から通知があって私達パート一同路頭に迷う事になってしまいました。2〜3ヶ月前から何となく嫌な予感がして、「店が潰れるのが先か、私が潰れるのが先か」なんて言っていたのですが、思ったより早く店じまいになりました。ということは、私の生活が土台から考え直す時期でもあると思いました。
★今のパートは13年になりますが、平成9年2月にA.C.C千葉の山歩きを始めてから生活がとても張りのある楽しいものになりました。苦しみ、自信喪失、先生はじめ会員の皆さんに会える喜び、帰りの食事やお風呂の時間の楽しかった事、想い出は数限りなくあります。山歩きの経験やレベルは拙くとも私なりに精一杯過ごしました。
★これからやりたい事がいっぱいあります。好奇心のおもむくままに列挙してみますと、まず金時山、高尾山、筑波山、三頭山といった低山を四季を通じて歩いてみたい。ボランティア、書の練習の再開、将棋を初歩から、パソコン教室に通いたい。きっと私の事だからみな中途半端になるかもしれないですね。
★何はともあれ4年間ありがとうございました。ACCと糸の会を退会させていただきます。皆さんによろしくお伝えください。ただ心残りといえば、今一度先生の転ぶところを見たかった。地球上のどこかで私を見かけることがありましたら、声なり足なりかけてください。
★2001.9.3……Moriyama


●夏のはじめにユニクロのドライTシャツを買いました。売り出し特価で700円ぐらいだったと思います。ところがそれは綿が60%も入っていて、「乾きやすい綿Tシャツ」という域を出ないものでした。ところが見落としていたらしく、定価1,900円でポリエステル100%のドライTシャツがあったのです。8月も半ばを過ぎて買いに行くと、オレンジとイエロー2色のSサイズだけが20着ほど(五反田TOC店)残っているだけ。特価1,000円でとりあえず1枚買いました。これは米国デュポン社のクールマックスを使っているので、登山用のTシャツと同じと考えていいいようです。着たときの軽いベタつき感も本物です。……残念ながら今年は終わりで、また来年の夏だそうですから、情報としては役立たずですが、ドライタイプのTシャツが来年には安く買えるようになるのでしょう。(8.18)


●ヒザを故障しました――という報告です。7.11-12にACC千葉で鳳凰三山に行きました。地蔵岳の山頂付近でキバナノアツモリソウの群落を見るなどすばらしい山でしたが、標高差約1,600mの下りで左足のヒザを痛めたらしいのです。じつは昨年の暮れに、どこかの山で右ヒザを木の根の出っ張りにぶつけて、(ほとんど忘れていたのに)ときどき痛むようになって、下りで深い角度でヒザを曲げると痛みが出るようになっていました。鳳凰三山から帰ってしばらくして痛みが出てきたので、無意識のうちに右ヒザをかばったことで左ヒザに疲労が蓄積したのかと思いました。
●そのうちヒザが腫れてきて、心配が大きくなりました。7.20-23の糸の会の北アルプス・雲ノ平では最終日に双六小屋から新穂高温泉まで標高差約1,500mの下りがあります。7.28-30の槍ヶ岳では山頂から新穂高温泉まで、一気に2,000m下ります。正座ができない状態でしたので、大きな不安をかかえての出発になりました。そして行ってみて驚いたのは山小屋の和式のトイレでしゃがめないこと。こんなに苦しい思いは……そういえば最近なかったなあ、と妙な感心をしながら悪戦苦闘をしていました。
●ところがどうも、疲労によるヒザ痛ではなかったようです。もちろんストックを使ってていねいに下りましたが、ヒザ痛はひどくならず、槍ヶ岳のときにはトイレでなんとかしゃがめるまでに回復しました。いろいろ観察していると、どうも右ヒザと同じような性質の痛みなのです。そういえば、鳳凰三山でだったか、左ヒザをやっぱり木の根でコツンとつついていたということに気づきました。ヒザ頭は想像以上に弱いようです。
●……で、左右同じような痛みが同じような場面で出てくるのですが、今回の事件で徹底したことがひとつあります。痛み止めを使わなかったことです。さすがに雲ノ平に出かけるときにはバンテリンかなにか買っておこうと思ったのですが、買うのを忘れて出かけました。買ったとしても、もとより使う気はなく、痛みをとことん観察してみるつもりでした。自分の体と直接対話できるのはたぶん痛みという言葉によってだろうと思うからです。それと、小さな痛みと大きな痛みを勝手に評価してしまってはいけないとも思っていました。機能が阻害されることは恐れていましたが、痛みは(もちろん不安の元でしたが)それなりに楽しみにしていました。
●山の世界の人たちには、足や手をつぶしたり、凍傷で失ったりしている人が驚くほどたくさんいますが、機能障害と痛みとをかなり明確に分けています。どんな痛みであれ、山にいる間は痛みととことんつきあってみるという考え方から、自分の体との新しい関係が生まれてくると思います。そういう意味で、両ヒザの痛みはかなり安定的に残っていますが、対話は断続的、かつ友好的です。ともかくヒザのおかげでスリリングな夏になりました。(8.15)


●たまたま高齢な方が……というふうにしておきますが、登りで予定時間をオーバーするという例が何件か続発しました。日帰りの苗場山(糸の会)と編笠山(ACC千葉)がその象徴的な例ですが、じつは同じ問題があちこちで見え隠れしています。糸の会の雲ノ平や槍ヶ岳への参加を見合わせた方が何人かいらっしゃるのも同根と考えます。要は、「皆さんに迷惑をかけずに登れるだろうか?」という不安をかかえた方がたくさんいらっしゃるのです。しかも私は「行ける/行けない」というようなことに関して一切保証をしません。「行く/行かない」という判断は皆さんにしていただくのを前提にしているからです。
●私の山行はしょせん「お勉強」ですからある程度の許容度はもたせています。それにチャレンジ精神を尊重します。チャレンジするということは結果が失敗に終わるということも含んでいるということを前提にしています。……でも、判断基準にあいまいさがあるということは認めざるをえなくなりました。それは歩きながら(どちらかといえば)軽い方へシフトさせる心づもりを含めていた糸の会の「c」やACC千葉の「I」がなくなったことによります。軽めのものと、逃げ道のないハードなものとが混在すると、日帰りでは少々無理のある苗場山や編笠山のように予想と現実がずれるケースがでてきます。
●そこで、そのような不安を感じていらっしゃる方に提案です。私がはめているフィンランド製のスント(SUUNTO)の高度計つき腕時計をお買い求め下さい。各種ありますが登山用品店の割引価格で2万5000円以下で買えます(私のは高度計と温度計がついただけの最低価格のものです)。これには毎分の上昇/降下速度が表示されるので、それでペースを見ながら自分の健脚度をチェックしていただきたいのです。
●私は1時間に300m登るというのをひとつの基準にしていまして、調子のいいときにはそこに短い休憩が含まれるような歩き方になっているつもりです。毎時300mの上昇は単純平均で毎分5mですから、調子のいいときには毎分7〜8mの上昇となっていることがあるはずです。そういうときに自分が遅れて、毎分5mほどになっているというのは十分に許容範囲に含まれています。問題はなにもないのです。
●遅い人が何人かいて、そういう人は毎分5mぐらいまで落ちているけれど、自分はさらに遅くなって、毎分3mしか出ていない、というような場合が問題なのです。山歩きの脚力は平たんなところでのスピードではなく、1歩ごとの登坂力なのです。だからちょっと遅れても平たんなところで追いつくという計算は正統ではないのです。遅れ気味の人が毎分5mの上昇速度となっている急登で、自分が毎分3mしか出ないというのは、比べれば、あきらかなパワー不足です。弱者基準の山歩き(糸の会の「d」のような)にするか、頭脳的にチャレンジするかしかないのです。
●標高差300mを1時間で登るのは毎分5mですが、10分の休憩を捻出して50分で歩くとすると毎分6mになります。もし毎分3mなら1時間に180mですから300m登るには1時間40分かかる計算になります。
●シミュレーションマップの急登の部分で上昇速度を見て、自分が毎分5mという上昇速度を維持できないかもしれない領域がどのくらいあるか見て、そこで脚力をチェックするという見方をしていただきたいのです。急登の領域が少なければ、そこで遅れても全体の時間に吸収されて問題にはなりません。計画に時間的余裕のある場合には急登部に予備の時間を投入することが可能です。そういう「逃げ」を設けられないタイトな計画のときもあるので、そのへんの読みをしていただきたいのです。糸の会の「a」でもACC千葉の日帰りでも、3つにひとつの見当でハードめにした計画を混ぜています。逆にいえばソフトめも入れてあるということなのです。そういうあいまいさが、みなさんの「行ける/行けない」の判断をいくぶん揺すっているのではないかと思います。
●ちなみに、78歳のT.大杉さんが7月の入門編槍ヶ岳(糸の会)に参加したかったのを家族に止められたと残念そうでした。「80歳になるまでの夢」だそうですから、大杉さんの来年の可能性を考えながら槍ヶ岳へ行きました。自分の体がどれだけの登坂能力を残しているか、もう一度(いくぶん科学的に)チェックしてみませんか? 糸の会では来年、「65歳以上で槍ヶ岳」というプランをやってみようかと考えはじめています。(8.1)


●H.鈴木さん(糸の会)の『知恵蔵裁判全記録』(太田出版、4,700円)をようやく読み終えました。発行が1月28日で、すぐに鈴木さんからいただいた本なので半年かかりました。いつだったか「トイレで読んでいます」といったら、鈴木さんがムッとしたようですが、読書家でない私は、端から全部読む本はトイレで読むことにしているので、これも律儀に読みました(悪しからず)。負けた裁判のドキュメントなのですが、極端にいえば最近の政治改革の流れと通底する、裁判(法)との対決のドキュメント。デザイン(システム)フォーマットという著作権の最前線が裁判にどこまで理解されたか(たとえば建築設計と比べてみて)という記録です。できましたら、みなさん、図書館から借りて、パラパラとめくってみて下さい。
●朝日新聞社の登場人物の中で出番がもう少し早かったら裁判になんぞならなかったといういい役で登場するのが先日まで朝日カルチャーセンター千葉の社長だった長塚進吉さん。59ページから数ページにわたってやりとりがあります。ちなみに178ページにWeb上の判例集を書いている小樽商大の長塚真琴というのは長塚さんのお嬢さんということがある段階で突然明らかになったのですが、鈴木さん側から見て父は味方、娘は敵という認識だったようです。
●デザイナー・鈴木一誌について知りたい人は控訴審に提出された専門家の陳述書のうち、作家・金井美恵子(238ページ)とグラフィックデザイナー・戸田ツトム(241ページ)のところをお読みいただきたいと思います。
●巻末にいろいろと付録(あるいは本文)がついていますが、知恵蔵裁判の深みを感じられるのは鈴木さん本人が節目節目に書いた「複製論」(280ページ)と「複製論2」(288ページ)ではないかと思います。「雨上がりの山道を歩いていて、体長20cm近いミミズに出会うことがある」というような一節もありますが、こういう文章を読んでいると、鈴木さんは山ではほとんど頭を使わずにしゃべっているということがわかります。頭を使っているときにはドタバタとコケそうになっているんです、たぶん。
●知恵蔵裁判の開始が1995年3月、鈴木さんが糸の会に参加するのが96年の1月ですから、裁判の進行にかかわる断片をときおり聞いていましたが、私は日和見のひとりでした。265ページ、黒田弁護士の手紙にこういう一文があります。「ちょうど家内に文章を読んでもらう機会がありました。『タチコウ(都立立川高校の略)』の人は皆こだわりをもった生き方をしているのね、とは彼女の感想です。そうではありません。こだわりを持った生き方をしている多くの同級生と私が機縁を深めているだけなのですが」
●鈴木一誌さんは映画の評論家でもあって、最近はとくにドキュメンタリー映画に深く関わっていますから、この裁判の記録もドキュメントとして一級品だと思います。読んでいくと法廷ドラマとしてもなかなかおもしろいのです。私は法律の一歩先に論陣を張るという戦術によってビジネス的に世界制覇を果たしたビル・ゲイツ(マイクロソフト社)という人のやり方と重ね合わせながら読んでいました。朝日新聞社も鈴木一誌さんもビル・ゲイツじゃないですけれど……。(7.10)


●……と書いたらすぐに、K.高橋さんのもう1冊の本が出ました。講談社文庫でなんと650ページ、1,067円という厚い本で、Gパンの尻ポケットに入りません。それがジェリー・ケニーリーという作家の『誘拐指令』。「4年も前に訳したので、ほとんど忘れてしまっている」そうですが、ロス市警の警官から私立探偵になって作家に転身したというケニーリーの初邦訳本とか。高橋さんの小説翻訳は同じ講談社文庫にカッツェンバックの『理由』と『追跡』、ニック・トーシュの『抗争街』があるようです。ばくは読んでいないのでそれ以上わかりません。『理由』は映画化されましたっけ? 7/20からの雲の平(糸の会7s1)に持っていこうかな、と考えています。山で本が読めたためしはないのですが……。(7.1)


●K.高橋さん(糸の会)の翻訳がまた出ました。英国の経済ジャーナリストのポール・ウォーレスという人の『人口ピラミッドがひっくり返るとき』(2001.6・草思社・1,900円)です。ついこのあいだまで私たちが恐れていた地球の人口爆発はすでに危険領域から遠ざかり、20世紀文明の成果であった死亡率の減少や長寿化が、高齢化という人口革命を引き起こしつつあるという新しい恐怖のストーリー。世界の高齢化が専門家たちの予想をはるかに上回るスピードで進行しつつあるという警告の書。世界が驚くほど急速に変化していくというシミュレーションです。元百科事典編集者の高橋さんの翻訳は『2000年間で最大の発明は何か』(2000.1・草思社・1,500円)や『鳥と飛行機 どこがちがうか』(1999.10・草思社・1,900円)など、ちょっと癖があるけれど、革新的なものに相性がいいのでしょうか。(6.18)


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