毎日カメラ読本(カメラ買い物情報 '99年夏・秋スペシャル)
カタログ探検紀行【1】
1999.8.5……カメラバッグ(初稿原稿)



 写真業界にはカメラメーカー、レンズメーカーのほかに用品メーカーと呼ばれる一群の会社がある。その「日本写真用品工業会」が春の「写真・映像用品ショー」に向けてつくっている合同カタログがご存じの「写真・映像用品ショーカタログ」。第29巻に当たる1999年版では会員74社中44社がカタログを掲載している。
 日本のユーザーが一般的に入手できる汎用タイプの写真用品(フォトアクセサリー)はこれによってほぼ網羅されているうえに、このカタログ自体も日本全国のカメラ店で容易に入手できる。非常に手近な写真用品事典にもなっている。
 読者のみなさんにはごくごく当たり前のことだろうが、他ジャンルの業界から見ると、こういう乗合い船的カタログの存在そのものがむしろ特殊といっていい。
 それを作る側から見ると、このカタログは春の商戦にきわめて重要な役割を果たしているのだそうだ。各社に対する原稿締切が前年の11月中。年明けからは校正作業がおこなわれるというスケジュールになっている。
 つまり11月までに翌年の商品ラインナップを決定し、試作品をつくり、写真を撮らなければならないのだから、逆算すると「7月中には次期商品の開発目標を決めなければいけない」。
「用品ショー」が3月から4月にかけて東京・大阪・名古屋と巡回するわけだから、その後、夏前までには、新商品の一応の総括がなされるということになる。
 この500ページを超える「写真・用品ショーカタログ」を私なりの探検的フィールドにしてみたいと考えたわけだが、その手始めに選んだのは「カメラバッグ」。流行にもっとも敏感に反応する商品として、年度カタログのもっとも変化の大きな領域ではないかと考えたからである。

*なお、文中でバッグ、ザックの容量をリットル(L)表示しているが、これはカタログ中の内寸を掛け合わして計算しただけの「目安容量」のこと。形状によっては必ずしも正確ではないが、相互の大きさを比較する指標としては有効だと考えた。


■ワイドバリエーションの秘密――株式会社エツミ(エツミ、ハマ、サムソナイト)

●先頭ページにカメラザック
「用品ショーカタログ」を開くと、すぐに株式会社エツミのカメラバッグが登場する。数えてみると、10ページに、なんと約200品目もある。
 最初の2ページにあるのはザックタイプで、「フロントフルオープン」が今年の売りという表現になっている。
 そのわずか2ページ分を一覧表にしてみたが、価格では7800円から4万8000円まで、サイズでは内寸からの単純計算で6リットルから51リットルまでのバリエーションになっている。
 エツミという会社の基本的なコンセプトが「ワイドバリエーション」であるらしく、「必要なものはすべてつくる」という旺盛なパワーを感じる。
 そこでまずカメラザックについてだが、登山用のザックと比べるとサイズがかなり小さい。私は中高年登山の登山講師などをやっているのでそちらの専門的な知識からいうと、初心者の山歩きでもデイパックの最大サイズである25リットル級でないと、冬など防寒衣が入りきらない。
 小屋泊りになると重さが10キロ前後必要になるので、容量も一般的な登山用ザックである35リットル級では満杯になる。そこでウエストベルトのつくりが本格化する50リットル級のザックがむしろ背負いやすいという指導をしている。
 山では、歩くだけでそういうサイズのザックが必要だから、カメラザックはあくまでもカメラ機材だけを背負うかたちにまとめられていると見なければならない。
 エツミのカメラバッグの最大サイズは昨年発売されたR-13(4万8000円)で、カタログ上で本体容量が「36リットル+15リットル」と表記されている。「上蓋に第3の収納スペース」として15リットル分が割り当てられているのだ。36リットルの本体部分は上下2気室になっていて、ザックを地面に立てたまま、上段は上から、下段は前面から出し入れできる。
 内側には中仕切が7枚入っているなど衝撃吸収機能のおかげで、登山用ザックなら自重1・5キロから2キロというクラスなのに3・4キロになっている。カメラを保護するためにかなりの重量を増加しているということができる。
 いまブームの中高年登山では、初心者が最初に背負える重さは5キロ程度と考えていたほうがいい。重い軽いという感覚とは別に、長時間背負っていても疲労が蓄積しにくい重さというのがあるからだ。
 半年もすれば6〜7キロ背負って丸1日歩くことができるようになるとして、たいていの人は10キロの壁を超えるのに1〜2年かかる。壁を突破しても、歩く楽しさをそこなわないためには、それ以上は負荷を大きくしない方がいい。10キロ過ぎるあたりにかなりはっきりとした重さの限界感がくる。
 いや、そんなはずはない、という人も多いかもしれない。今でも、プロのカメラマンなら10キロ以上のカメラバッグをかついで歩けなければ仕事にならないということも事実にはちがいない。
 だからこそ、重さに関する仕切り線を入れておきたいのである。よほど本格的にやろうというのでなければ、全重量が10キロを超えないあたりをひとつの目安にして、機材と周辺装備をコンパクトにまとめるのが望ましいのではないだろうか。
 中高年の山歩きの場合には35リットルザックにびっしり詰めて10キロちょっとという目安だから、比重でいえば0・3前後、ソフトバッグにカメラ機材をびっしり詰めたときには比重はおおおよそ1に近づく。しかし中仕切りのあるカメラザックは空気がたっぷり詰まっているから比重はそれほど大きくならない。0・7ぐらいに見積もっておけばいいだろうか。
 こういう概算をしてみると、入れ物の容量と、入れるものの組み合わせかたとで、重さがなんとなく見えてくる。

●リュックタイプが売れている
 株式会社エツミの野中俊彦さんによると、ここ数年でリュックタイプが5割に近づいて、量販店で1万円前後で買えるものが売れ筋商品になっているという。
「山とかタウンウォークとか、健康指向と重なっているのでしょうか」
と野中さんはいう。
 中でも明らかな傾向は40代から60代の中高年女性の写真ファンの増加だそうだ。
「本格的なものは好まれないのです。軽くて、女性にも違和感のないデザインのものが求められているようです」
 かくして女性向きに開発されたのが、思いきり小型の6リットルザック、ジェノバリュックコンパクト(7800円)だという。
 しかし今年のイチオシは三脚をザックの中央部、重心線に取り付けられるようにベルト締めポケットを用意したエクシードギガG-1(写真。3万400円)とのこと。容量も22リットルでスタンダードなところにあり、背負いベルトを下にして「フロントフルオープン」すると底面が28×50センチで厚さが16センチという平べったいカメラ収納ケースになる。これは車の助手席に置く場合にも便利なカタチになっている。
 市場動向を見ながらバリエーションを増やしていくという方法をとるエツミは、カメラ用ザックに加えて、登山用ザックにカメラを収納するための手提げ付き携帯クッションボックスも、
S…6L…2700円
M…7L…3800円
L…11L…4800円
と新発売している。
 話をうかがった野中俊彦さんはひと部屋構えているので相応の地位にあるはずだが、名刺には名前だけで役職名がない。
 エツミ株式会社では社員を「営業・開発・工場と分けないで、配達も営業も全員でやる」というのだ。
 4月の用品ショーを舞台にして新製品の発表があり、商戦がひと段落すると、他社の動向も見えてくるし、販売状況もはっきりしてくる。
「発表から2〜3週間、長くても1カ月で全体の流れが見えてきます」
と野中さんはいう。
 ゆっくりと尻上がりに売れていくものもときにはあるが、売れ筋のものについてはすぐにわかるし、サイズや価格のバリエーションでの要望が返ってくる。そういう反応を営業マンが直接・間接に聞いてくるのですぐに試作して、全社員で検討していく。売れ筋を時機を逃さずに追いかけるのだ。
 そういう反射神経型の開発システムの結果、めまぐるしいほどの新製品ラッシュになる。最初カタログを一覧したときには節操のなさを疑ったものだが、初心者の女性から、注文の細かいハイアマチュア、そしてプロ用までを視野において、かつ開発の回転を上げようとした結果なのだ。

●「プロ用」への挑戦
 従来型の、いわゆるカメラバッグではどんな新製品が登場したのか。
 アペックスシリーズに加わったパパラッチ(写真)のM、L、LLの3サイズである。
「基本はショルダーですが、ウエストバッグにもなれば、リュックにもなるという自由さに、フラップ真上のジッパーでダイレクトにカメラを取り出せるという速写性を加えています」
 リュックにするときには別売のスクランブルリュックベルト(1650円)が必要だが、それに加えてアペックスモジュールレンズポーチ(M=1280円、L=1480円)をバッグの両サイドに外づけするというような機能拡張も用意されている。ザックシリーズには別売の防水カバーがあったが、これにはレインカバーが標準装備されていて、地面に敷けるシートにもなるという。
カタログに書かれた「パッと取り出し、パッと撮る。パッともどす。このカタチが撮りやすい」というコンセプトが、ハイアマチュアの気持ちをかき立てる。
「しかし」と野中さんはいう。
「売っていきたいのはトゥルーリープロ・シリーズなんです」
 エツミブランドの下にはアペックス、エクシード、トゥルーリープロ、ジェノバ、フィガロといったシリーズがあって、なかなか多彩なのだが、トゥルーリープロ・シリーズは本格的なカメラバッグというコンセプトになっていて、防水・防塵設計の高機能バッグとうたっている。
 このトゥルーリープロ・シリーズでは、まず3モデル。
プロ1…14L…2万1000円
プロ2…25L…3万3000円
プロ3…34L…3万8000円
 それに加えて厚みを調節できるブリーフケース系のものもある。
プロ4…B5…1万1000円
プロ5…A4…1万4500円
 そこにさらに新製品として加わったモデルがある。
プロ35…22L…2万7000円
 このプロ35(写真)はハイアマチュア用としたプロ1とスタジオ持ち込み用などにプロにも人気のプロ2との間を埋めるサイズだそうだ。
 このトゥルーリープロ・シリーズは素材に1680デニールのナイロンを使用して、バリスティックナイロンに近い強度を獲得し、十分な防水性と他社製品より厚いパッドを装着、ウレタンで補強することで「テンバやタムラックより強度を高めて、型くずれもしにくくしています」という。
 社員全員主義の開発システムを採用するエツミの「プロ用」への挑戦ということになるのだろうか。

●ハマとサムソナイト
 株式会社エツミは自社開発のほかにドイツの写真アクセサリーメーカー、ハマ社の製品を輸入販売している。
「昔はキャディシリーズというハイアマチュア用の高級バッグを扱っていたのですが、現在では若い人向けのおしゃれっぽいものを残してあるだけです」
 ハマ社が本格バッグの製造をやめたわけではなく、それらはエツミブランドのオリジナル製品に置き換わって、「オシャレ系」だけを残してある。
 同様にエツミはサムソナイトのカメラバッグも扱っている。サムソナイトは1938年以来のブランドだが、戦後ABS樹脂製のアタッシェケースを発売し、007映画「ロシアから愛をこめて」でのタイアップPRが大成功をおさめて一躍世界ブランドになったという神話をもつ。
 旅行トランクのほうは日本ではかばんメーカーのエースが輸入代理店となっていたが、カメラバッグに進出するという話を受けて4年ほど前からエツミが独占販売権を取得した。
「もっとも、ハデなタイプは控えて、フォーマルな場へも持ち込める上品なデザインのカメラバッグをそろえています」
 サムソナイトのカメラバッグは日本市場の激しい価格競争に巻き込まれないようにオープン価格になっている。
 全員開発のエツミが弱点としているのは、ハマがそなえているオシャレな若い女性向きと、サムソナイトの年齢を超えて上品さを感じさせる高級感あふれるカメラバッグということになるようだ。
 最後につけ加えれば、サムソナイトのカメラバッグはハマ社のプロジュースによって製作されているというから、いわば同じ根っこから伸びた2本の幹ということにもなる。(写真)


■プロ用バッグの定番――銀一株式会社(テンバ、ドンケ)

●布バッグの革命
 時代の先端を切り開いた寵児が、たちまちのうちに陳腐化するという例はきわめて多いが、カメラバッグに関しては奇跡が起きた。米国の2人のカメラマンがそれぞれに作り上げた「自分用」のバッグが現在もなおプロ用の頂点にあって一種の輝きを放っている。「テンバ」と「ドンケ」だ。
 テンバを日本に入れたのは銀一株式会社の丹羽寿成さんだ。現在は第三営業部の部長である。
「テンバが売り出されて2〜3年経ったころ、現地で見て、価格が高いのでビックリしました。しかしコーデュラナイロンという素材を使ってあくまでもタフ、防水性もいいということで、輸入したいと申し入れたのです。日本から何社か話があったようですが、息の長いビジネスをしたいということで、私どもに決まったようです」
 テンバ社が設立されたのが1977年、日本に輸入されたのが79年から80年にかけてだった。
 当時、カメラバッグといえば革製のギャゼットバッグか、合成皮革を使ったそっくりさんバッグが主流だった。合成皮革のものは貴重な機材を入れるにはあまりにも頼りなく、本革のバッグは大型になると、とたんに高価で重いものになった。
 そこで収容力を大きくしたいときにはアルミケースを利用するのが一般的だったが、もとよりそれはハードケースであって、カラダにフィットするソフトバッグとはおのずから守備範囲がちがっていた。
 革製品がナイロン素材へと置き換わっていくのはバッグ類からはじまって、靴にまで広まっていく素材革命の流れではあるけれど、合成皮革の製品がただの模造であったように、単純な置き換えでは時代を切り開くことはできない。
 チベット語で「最高のもの」を意味するテンバの生みの親はカメラマンのロバート・ワインレブさん(現社長)だが、軍用のコーデュラナイロン生地でウレタンのクッションをくるむという手法を採用した。
 素材革命は軽くて強くて性能が均一であるところから始まることが多いが、テンバのバッグもそこからスタートして、いったんフタを占めてしまえば、雨でも砂塵でも防げるという圧倒的な防御性能を獲得したのだった。
 たとえばショルダーベルトは本体底部までまわして完全に一周して大きな荷重に耐えるようにしてあるが、そのベルトを接続するDリングは米軍仕様の金属リングを当初から採用し、現在も使用している。プラスチックの強度不足と径年劣化を心配しているのだ。肩に掛けたストラップに万一の事故があれば、バッグは地面に落下する。そういう心配を徹底的につぶしてある。
 プロカメラマンだったロバート・ワインレブさんは登山家でもあったようだから、登山用ザックに撮影機材を収納する場合のパッキング技術がベースにあったはずである。
 それは、ソフトバッグでのパッキングでは、一部にかかる衝撃や荷重が全体に分散することを計算に入れれば、ハードケースよりはるかに軽量コンパクトに防御能力を獲得できるということだった。
 防水にしても、水中で水圧がかかったときの防水と、雨や飛沫に対する防水とでは設計の要点がちがってくる。テンバのバッグのフタがヒサシ状のおおいを出してファスナー部を隠しているあたりは、家や車の防水と同じである。通常の方向からの雨には完ぺきを期すことができる。
「布の防水は裏打ちによって完ぺきです。激しい風雨のなかでは、サイドポケットには雨がしみこむことがありますが、メインに雨が入ってくることはありません」
 丹羽さんが保証するまでもなく、撮影という攻撃姿勢から、一転して防御姿勢に転じたときの際立った能力によって、テンバはプロ用カメラバッグの最高峰と評価されているのである。
 その巧みさを象徴するのがテンバのフロントベルト。頑丈なファスナーで防御的に閉じられる上蓋を単に開かない程度に仮止めできるフロント側の2本のテープ。これによって機材の出し入れがきわめて迅速になる。

●シリーズの拡張
 テンバの製品は、現在ではかなり広範囲にシリーズバリエーションを展開しているが、基本はプロバッグ・シリーズであり、
P-795…12L…3万9000円
P-595…9L…3万4000円
が当初からのモデルとされている。
 どちらも高さと奥行きが17・5センチで、横幅がP-795は40・5センチ、P-595は30・5センチというちがいになっている。
 そのことから、登場したのが、
P-998…23L…4万8000円
で、フィルター口径77ミリのレンズを並べて収納できるように、高さ24センチ×奥行き23センチに拡大された。横幅は42センチなので従来型のP-795とほぼ同じだが、3辺の増加分を掛け合わせると、容量がほぼ倍増した。
 このモデルはフィールドタイプの4×5も収納可能というが、実際にはAF35ミリカメラに対応するプロ用バッグとして、日本人カメラマンの強い要望を受けて3年前から登場したもの。プロバッグシリーズの最大容量モデルである。
 しかしよく見ると、テンバのプロバッグシリーズの基本は奥行き17・5センチ(7インチ)で、高さが17・5と24センチ(あるいは23・5センチ)という2バリエーション。横幅も30・5センチと40・5センチという2バリエーションしかない。
 よほど頑固なのか、自信があるのか、とにかくそれが20年以上プロの仕事を支えてきた。
 P-998の誕生を丹羽さんは「日本人カメラマンの要望で」とサラリと語ったが、プロショップの銀一がユーザーの要望に応じてさまざまな補強や改造を引き受けてきたところから、メーカーに対してきちんとものがいえる態勢をつくっているということでもある。
 同様に日本からの要望で改良された大きなことがらは、体に当たる背の部分の生地を変えたこと。1990年ごろに遡るが、コーデュラナイロンの強靭さがカメラマンの服を一発で傷だらけにしてしまうという乱暴さを改善した。

●防御的ソフトバッグの進化方向
 軍用規格のコーデュラナイロンでウレタンバッドをくるんだやわらかくて強靭な衝撃吸収素材からテンバのバッグは生まれたが、それもあきらかに進化している。
 銀一が出しているテンバ・カタログによると、たとえば米国航空局の搬送耐久規格をクリアして航空機のカーゴルームや車のトランクに撮影機材を置くことのできるエアケース・シリーズが開発されている。
MFS ………19L…5万1000円
AIR MAX…30L…5万5000円
MULTI……43L…7万円
 衝撃吸収パッドを高密度の厚いものにして、それを構造材となるポリエチレン樹脂製の芯と400デニールのナイロンでサンドイッチ。ケース自体が外部からの衝撃を吸収しながら内部を護るというセミハードのコンテナーになっている。
 このエアケース・シリーズは開けば機材引き出しそのままという合理性を備えている。30リットルのMFエアーマックスと40リットルのマルチには、さらにハンドグリップとホイールを取り付けて移動を楽にしたバリエーションタイプもある。
 それと反対の方向に進化してきたのはトラベラーとプロトラベラーのシリーズだ。こちらは撮影機材以外の、取材用品や旅行用品も含めて収納・運搬・かつ撮影できるような汎用性をめざしている。
 プロトラベラー・シリーズはカメラ以外にも収納したいものがある「雑誌取材のロケ派フォトグラファー」向きのたっぷりサイズのカメラバッグとなっている。
P-655…11L…3万円
P-675…15L…3万7000円
P-684…14L…4万4000円
P-695…20L…4万7000円
 この中でP-684は飛行機の座席に持ち込めるように、高さを17・5センチに押さえている。
 プロトラベラーがヘビーデューティタイプをめざせば、トラベラーはコンパクトで多目的な方向に進んでいる。
P-402…0.2L…………5500円
P-404…8L……1万4000円
P-454…11L……2万4500円
P-415…10-17L…2万2000円
P-503…5L……1万3000円
P-554…11L……2万6000円
P-513…10-16L…2万7000円
P-516…13-22L…3万1000円
 容量可変のものは、たとえばベストセラーとなったP-415(写真。2万2000円)のようにファスナーによって奥行きを10センチと17センチに切り替えられるので、カメラバッグにもブリーフケースにも使える。写真取材もすればノートパソコンで記事も書くという取材記者に評判がいいのは、かなり多量の本やノート、すなわち資料的なものをカメラ機材といっしょに持つ、というところにターゲットを絞っているように見えるからだ。
 そういう流れはテンバの「オフィスパック」という、ノートパソコン対応の衝撃吸収型ビジネスバッグにも見えている。そのシリーズの中にはノートパソコンだけを入れる手つきインナーケースが2サイズあって5000円前後で買える。これなどはテンバ的機能主義が下着ファッション的な魅力にまでなっている。見たらクラクラとなりそうな予感がする。
 しかし、そういう衝撃吸収機能からテンバを見ていくと、カメラザックであるスポーツパック・シリーズの作り方にも独特の匂いがある。衝撃吸収型のカメラ収納引き出しをきちんと作って、それをどれだけ背負いやすくするかという機能の優先順位がはっきりと感じられる。
PBS…8L…2万円
PBP…18L…2万8000円
PBL…23L…4万2000円
PBA…36L…5万7000円
PBH…48L…6万8000円
 丹羽さんによれば8リットルのPBS(フォトバックパック・スモール。写真。2万円)が売れているという。
 大型のものでは36リットルのPBA(フォトバックパック・エアラインタイプ。5万7000円)は飛行機の座席下に収納できるサイズと耐衝撃性能を備えているという。さらに48リットルのPBH(フォトバックパック巨大型。6万8000円)になると8×10のフィールドカメラを収納できるという。
 いずれにしても、自分自身でケアしてやれる範囲にあるのなら、エアケース・シリーズほどの頑強さを持たなくてもいいというシリーズがここにあって、その「衝撃吸収引き出し」をかなり本格的な肩ベルトで背負えるようにしてある。ワインレブ社長自身が山岳写真家であったという解説は、このザックが、ザックもどきではなくて、登山ザックメーカーが作るスリーウェイバッグ(ザック+ショルダー+トランク)の手法をおおいに参考にしているらしいということを感じさせる。カメラ収納部分はあくまでセミハードのカメラケースにして、内蔵式の各種ストラップは登山用に近い本格的な設計になっているからである。

●ソフトバッグの究極
 テンバより1年早い1976年にドンケバッグの前身は生まれた。それは合衆国の独立が宣言された200年後、同じ場所・フィラデルフィアの新聞社のカメラマンたちによってだった。
 新聞写真に代表されるニュース写真の撮影では、カメラマンは走る。走らなくても、人混みをかきわけ、すりぬけてできるだけいい状態のワンショットをものにしなければならない。
 フットワークが重要なのである。機材セットをできるだけシンプルにして、バッグをからだにフィットさせる。それでいてバッグに詰めるものが多いときには、それなりの収容力を発揮してほしい。
 そういう要望を満たすには、ソフトバッグという考え方をとことん追求してみることが必要だった。
 彼らは素材をナチュラルで防水処理のしやすいコットン製のキャンバス地と決め、バッグ自体には衝撃吸収機能は持たせなかった。必要な場合には耐衝撃性パッドで組み立てたコンパートメントと呼ばれる中仕切りボックスを、本体内部の好みの場所にベルクロテープで固定するという方法を採用したのだ。
 こうすることによって、バッグを几帳面な引き出し状態にすることもできれば、ごみ箱状態で使うということも可能にした。
 新聞の名が「フィラデルフィア・インクワイヤー」だったので、それは「インクワイヤー(取材用)バッグ」という名で通販されることにもなった。
 しかし、新聞社の通販事業はうまくいかなかった。売れれば売れたでさまざまな混乱が生じてきたので、その年の末には専属カメラマンのジム・ドンキさんがその責任をとるかっこうで権利の一切を引き継いで、自分の名を冠した「ドンケ(ドンキ)カメラバッグ」として生産・販売を開始したのだった。
 自由度という意味のフレキシビリティを最大限に追求したドンケバッグのもうひとつの特徴は、からだになじんでくるとどんどん使いやすくなってくるうえに、薄汚れてきたりすれば、周囲の人の目にもあまり目立たなくなる。そういう目立たないという意味でのなじみがこのバッグには求められたのだった。
 あらゆる状況を想定して十分な機材を持とうとするときの最大容量と、機材を絞ってフットワークをよくするときの小容量時の、使い勝手の幅がとにかく大きい。
 じつは、使い手の、機材の出し入れの瞬間の扱いがていねいなら、あまりぎょうぎょうしい緩衝材はなくても問題は起こらない。車に乗ったときにはヒザの上に抱くと決めてしまえば、キャンバス布1枚のバッグで何の問題も生じない。
 そういう機材にたいするケアができるのであれば、自由度の大きいバッグを使うことができる。そういういう意味で、ドンケバッグは世界中のプレスカメラマンに使われることになった。

●古いタイプ、新しいタイプ
 元祖ドンケ・カメラバッグがいまもF-2(写真。2万円)としてスタンダードモデルとなっているが、内寸は横幅35センチ×高さ22センチ×奥行き15センチの12リットルとなっている。
 ちなみにテンバのスタンダードモデルP-595は9リットルだから、最大収容能力はドンケバッグの方が大きかった。
 輸入したのはやはり銀一だった。丹羽さんはいう。
「カメラマンのみなさんからの要望が大きかったのですが、生産力がなくてバックオーダーばかりが増えて、品物が来ないんです」
 けっきょく、ジム・ドンキさんの手にもあまっていたみたいだ。その後サンダースグループという会社に権利が移って、ドンケバッグはそのまま生き残っている。
F-1X…12L…2万5000円
F-2……12L…2万円
F-3X…7L…1万5000円
F-4AF…8L…2万1000円
F-5XB…5L…1万円
F-6……8L…1万4500円
F-7……16L…2万9000円
 大は大口径レンズを多用するAF一眼レフシステムで使いやすい16リットルのF-7から、小は5リットルでウエストバッグにもなるF-5XB(写真)まで、バリエーションは7品種まで拡大している。
 また新しいジャーナリスト・シリーズでは、本体素材をバリスティックナイロンに切り替えている。
 ジャーナリストシリーズはAF一眼レフに対応する奥行き16・5センチのシリーズで、
J-1…14L…2万9000円
J-2…10L…2万5000円
J-3…8L…2万3000円
というトリオになっている。
 いちばん小さなJ-3(写真)は奥行き16・5×高さ23センチに対して横幅の内寸が20センチしかないのでずいぶんコンパクトだ。フィルター口径72ミリのレンズを4本入れられる専用コンパートメント(幅20×奥行き15×高さ20センチ)が3機種に共通の付属品となっているので、これでほぼいっぱいになってしまう。しかし、そのコンパクトさが日本では好まれているという。
 じつは従来型のF-1X(12リットル)、F-2(12リットル)、F-3X(7リットル)、F-6(8リットル)にも素材をバリスティックナイロンに切り替えたシリーズがある。
F-1XBB…12L…2万7000円
F-2BB……12L…2万2000円
F3XBB…7L…1万7000円
F-6BB……8L…1万7000円
 傷みにくい、汚れにくいことを望むひとにはこちらが求められているようだ。この黒いバリスティックナイロンバッグはある意味ではドンケが「今ふう」に変貌しつつあることを表している。
 そういう意味では、日本のあるファッションメーカーがコットン製ドンケバッグの最小タイプF-5XBをおしゃれなタウンバッグとして売りはじめたというのも、象徴的な出来事かもしれない。ブラック、タン、ネイビー3色のコットンバッグにはクラシックな雰囲気がただよっている――というふうにも見えるから。


■アメリカ的なるもの――共同写真要品株式会社(f.64)

●写真リアリズムというコンセプト
 「F64グループ」は大型カメラレンズの最少絞り値を名前の由来とした米国西海岸の写真運動体として有名だ。ソフトフォーカスの絵画的写真で名声を得ていたエドワード・ウエストンが1920年の東部旅行でストレートな写真表現を知ったことに始まる。
 対象をストレートに観察して克明に描写する写実的な写真を研究するなかで、アンセル・アダムスも加わってグループが結成された。1932年にサンフランシスコでグループ展が開催されただけで解散するという短命な団体ではあったが、アメリカ的な写真リアリズム運動はこの、アンセルアダムスが命名したという「F64」という名前をシンボルキャッチフレーズとして、全米に広がった。
 その「f.64」(エフ・ロクジュウヨン)をブランド名とするカメラバッグは米国の自転車用バッグ類の工場で作られているという。
「輸入商社からの紹介で扱っているんですが、気だてはいいのにブスという感じでしょうかね」
 売る立場の横浜和彦さん(デジタルイメージ部長)がいうのだからそうとうひどい――という感じはまったくない。
 具体的にいろいろ見せてもらったが、縫製のあとでプレスしていないので、日本ではちょっと肩身がせまいという程度のことなのだ。
「箱に投げ入れるようなかっこうで送ってきますからね」
 気になるひとにはとても気になるが、いかにも新品らしくなくていいというふうに見れば、何の問題も生じてこない。
「アメリカンテイストなんです」
 外見の仕上げのわざとらしさを嫌っているだけで、「こまかな工夫はいろいろあります」というだけの品物にはまちがいない。品質という点でも、プロ用として問題は何もないレベルでの話のようだ。
 基本機種は15リットルのSCX(写真。3万9800円)で、35ミリカメラ2台セットを想定しているようである。その兄弟モデルで、奥行きを2センチアップしただけのMFX(17リットル、3万9800円)はパーティションの内容を中判カメラ用と意識している。
 といっても、この寸法は「用品ショーカタログ」と共同写真要品の価格表で見ていれば問題ないのだが、「f.64」シリーズの日本語カタログだとサイズがメチャメチャになっている。単なる誤植とかいうのではなくて、データが混乱している状態なのだ。
 日本語版だから、もちろんその責任は横浜さんの側にあるわけだが、問題はそう単純ではないらしい。
「本社で作っているカタログがいいかげんなんですね。写真もないからこちらで撮っています。メインコンパートメントをおおうフラップは通常の開き方だけでなしに身体側からも開けられるので便利なのですが、そんなことはひとこともいってこない。こちらで『ツーウェイフラップ』と名づけました」
 謙虚というか、のんびりというか、はたまたうかつというか、品物は値段相応の仕上がりになっているのに、日本人向けの配慮に欠けているというわけだ。
 値段もかなりいいけれど、出来もいい、という感じがする。商品としての化粧は下手だが、製品としての実質に関しては問題ない――というより、そういう頑固さが気に入ったというひともいるというが、さもありなん。
 日本でメジャーになるには、横浜さんたちの意見をもっと聞かないといけないわけだけれど、こういう質実剛健的アメリカンテイストをむしろ好むというひとのあいだで、ひそかに支持されているあいだが、あるいは「f.64」的黄金期なのかもしれない。

●ベイシックモデルのつくり
 メイン機種となっているSCXは横幅が39センチで奥行きが17センチ、高さを23センチとっている。テンバと比べると、2番目に大きいP-995とほぼ同等。ドンケと比べると最大級の大きさということになる。
 メインコンパートメントに35ミリ一眼レフカメラ2台をレンズ付きのまま収納したうえでレンズ4本とクリップオンストロボを入れるという目安になっている。
 上ぶたが身体側から大きく開くのはバッグを背負ったまま、いつでも撮影の態勢に入りたいスナップ派には重要な機能といえる。そのときに、レンズ付きの35ミリ一眼レフ2台が速写の構えで入っている。
 サイドポケットはフィルム用と考えているようで、プロが炎天下、ここにフィルムを入れるだろうかという疑問は残るものの、着脱式ながら、しっかり固定できるという作り方は、バッグの外寸調整という機能にもなるわけで、フットワークにかかわってくるかもしれない。
 フロントポケットは大きく前面に開く構造で、仕切りも細かいので撮影用アクセサリーや筆記具類を収納するには使いやすそうだ。こまかなところまで神経を使っているという感じがするが、いかがだろうか。品物を見る限り米国的なパワフルなベンチャー企業という感じがする。
「ある輸入商社からの紹介で扱っているのですが、私のところはプロショップなので工房で改造もできます。そういう目で見る限り、f.64はきちんとした製品だと思います。商売が上手とはいえませんが」

●広がる展開
 ラインナップを見ると、いわゆるカメラバッグは次のようになっている。
SCX…15L…3万9800円
MFX…17L…3万9800円
SCM…9L…3万0500円
SC……8L…2万2000円
SU……3L…1万0500円
 カメラザックはどうだろう。
BP……22L…3万1500円
BPX…32L…5万9800円
 さらにセミハードケースのシリーズもある。
CM……20L…4万5000円
CL……40L…7万3000円
 ともかく、堂々たる展開になっている。
 いちばん小さい3リットルバッグのSU(1万0500円)はレンズ付きの35ミリカメラを横置きにして、さらに交換レンズかクリップオンストロボの収納が可能という最小形を実現している。
 それと32リットルのカメラザックBPX(5万9800円)や40リットルのセミハードケースCL(7万3000円)がどれも「f.64」という共通イメージのなかで大型機種として並んでくるのは、デザインコンセプトも含めて、本格的な商品開発がなされているからではないだろうか。
 横浜さんによると、人気があるのはLBX(写真。1万6000円)だそうだが、これは最近はやりのブリーフケースタイプで、横幅41センチ×高さ30センチは大4切あるいはB4判に対応する。奥行きを9センチから13センチに広げられるので、ノートパソコンも入れられれば、カメラも持てる。
 安くて人気というのが交換レンズ用のケース(写真)で、直径9・5センチで大きい方のLPX(4800円)は長さ28センチ、小さい方のLP(3400円)は長さ20センチになっている。ジャストフィットするサイズでなくても、最後に2本のベルクロベルトを締めることによって固定できる、という考え方をしている。
 むかし、北米のユーコン川でカメラバッグごとカヌーから放り出されたことがあった。水面に出たときにすぐ手の届くところにカメラバッグがあった。
 むかしのことなので革のギャゼットバッグだったが、中には35ミリの一眼レフカメラが2セットと、日記や資料などかなり大量の紙類が入っていて、重さは10キロを超えてずしりと重かった。
 そのバッグが、水面に浮いてきたのだった。カメラバッグが比重1に満たないという発見はこのときのことだった。しかし、ベルトをつかむとス〜ッと水中に沈むので、頼りにはならなかった。
 さいわい、すぐに救出されたのだが、レンズをつけて最上部に置いておいたカメラ、レンズには水が侵入して使えなかった。
 しかし、革袋で包んだものや、革の小物袋に入れてあったものは湿った程度で助かった。ノート類はその後じっくりと乾かして、どうやら使いつづけることができるようになった。
 防水でないのに水の侵入をある程度くい止められたのはどうしてか。
 防水になっていなくても、空気の流通がいくぶん阻害されるような緻密な組織になっていると、内部の空気が泡になってでていった分だけ水が侵入してくるというふうに見える。
 水圧がかかれば一発で水浸しになるけれど、浮いた状態では、水は礼儀正しく入ってくるという感じなのだ。
 防水が完ぺきという場合には、内部の湿りが抜けないで、思わぬ失敗をするということもある。そういう意味では、ある程度の防水素材で作られた使いやすい袋が合理的なのだ。f.64のレンズケースがどの程度高いレベルに到達しているかわからないが、汎用でありながらキッチリ固定できるというあたりに、ひとつの方向を示している。


■壮大なシステムに女性の目配り――株式会社ケンコー(タムラック、アオスタ)

●精密機械のように仕上げていく
 創業20周年を迎えたという米国のタムラックはアメリカ的というよりは、どちらかといえばドイツ的なキッチリ感が第一印象として迫ってくる。
「工場はロスにあるのですが、それが素晴らしい。袋物の縫製工場というと糸くずが散らばっていたりというのが相場なんですが、日本製のJUKIミシンがずらっと並んで、まるで精密機械工場という雰囲気なんです」
 株式会社ケンコーの宣伝課長・堀江勉さんは、まず真っ先にそういった。
 その精度の高い縫製技術の追求によって、20年間で販売量世界一のカメラバッグメーカーにのし上がってきたということなのだ。
 とくにヨーロッパで強いというところが、タムラックの繊細さにあるのではないかと思われる。
 日本人好みの精密感にもかかわらずブランドが圧倒的な強さというわけでないのはどうしてだろう。
「長い間、日本ではポラロイド(日本ポラロイド株式会社)が代理店だったのです。先方の意向もあって、3年前からケンコーが日本での輸入総代理店になりました」
 タムラックは世界中に正規の代理店を設けて売っていくという、有名ブランドのファッションバッグのようなシステムを確立している。そして5年保証の実施。
「ファスナーの縫いがくずれたというケースがありましたが、素材がいいのですり切れるということもほとんどありません。ほとんど壊れないバッグですね」
 そういうことも一般にはあまり知られていないというほどに、タムラックのブランドイメージは日本ではいま一歩というところにとどまっているようだ。
「用品ショーカタログ」の223ページの見出し部分には黒帯に白抜き文字で「『Tamrac』総合カタログが用意してあります。ご請求ください」と書いてあるが、48ページ立てのそのカタログは微に入り細を穿って読みごたえがある。買う買わないということの前に、一種完ぺき主義のカメラバッグメーカーの自信作を一堂に並べてある「圧巻」をお楽しみいただきたい。
 しかし、それでも、ちょっと気になるという人がいるはずだ。私もそのひとりかもしれないが、きちんとし過ぎ、ピッタリしすぎで、ついつい肩に力が入ってしまいそう」……なのだ。
 案の定、経営者は姉妹だという。男女差別ではないつもりだが、そのおふたりはきっとゲルマン系のアメリカ人ではないかと勝手な想像をしている。
 細部に至るまで絶対に手を抜かないという意志が貫徹している上に、こまごまとしたバリエーションを、これもひとつひとつきちんと作り上げている。細心の心配りが全体を作り上げているという見事さに圧倒されるのだ。

●ザックタイプのバリエーション
 今回、ブランドごとに写真付きで紹介している商品は、選択を完全に先方におまかせした。「主要なもの3点ぐらい」という条件で選んでもらったものについて話もすすめてきたつもりだ。
 しかしこの、見るものを圧倒するタムラックの製品ラインナップから見ると、選ばれた4点は逆に日本的な選択をあらわしているように思われる。
 一番人気は、5リットルから14リットルまでのコンパクトでオシャレなデイパックシリーズで、カメラコンパートメントの上に三角屋根状のサブコンパートメントを重ねた2階建てになっていて、雨具やお弁当も気軽に持てるようになっている。
748…5L…2万1000円
750…9L…2万7300円
752…14L…3万3000円
 Mサイズにあたる750(写真)は幅29センチで、奥行き17センチ×高さ18センチはモータードライブ付きの35ミリカメラ1台と交換レンズ3〜4本の収容力を持っていて、カメラバッグならプロ用のサイズだが、その上部に三角屋根のサブコンパートメントを載せて、女性にも持ちやすいやさしいデザインのザックタイプになっている。色はブラック、グレー、グリーンの3色だが、とくにグリーンが好まれているという。
 また、タムラックには創業20周年を記念して開発されたというエクストリームシリーズのフォトバックパックがある。
757…8L…4万7700円
767…15L…4万6500円
777…17L…5万9000円
787…21L…6万6000円
と並んでくるが、プロ用としてならばともかく、アマチュアようとしては値段が高いという印象がまぬがれない。タムラックが苦戦しているとすれば、プロ用としてのブランドイメージが確立していないからだろうか。

●プロ用バッグ
 タムラックには、カメラバッグにもプロシステムがある。
608…10L…3万4500円
610…14L…4万3200円
612…17L…5万2200円
613…17L…5万8500円
614…26L…6万9400円
 613は612のスペシャルバージョンで、バッグ背面下部に身体側から開くポケットがついていて、長さ35センチまでの望遠レンズを収納できるようになっている。
 さらに中判カメラに対応するシリーズも用意されている。
620…10L…3万2500円
622…17L…5万2200円
623…17L…5万9700円
625…25L…8万1800円
 しかしそういう本格的なカメラバッグではなくて、小型のズームシステムと呼ばれるものが日本では主力商品になっているようだ。
 このズームシリーズは最新機能搭載用モデルのようで、カメラをレンズ付きのまま収納できるレンズブリッジや調整可能なクッション付き仕切りのレンズゲート、フラップ内側につけられた着脱式の半透明フィルムポケットのポップオフ、大きく開くフロントポケットのジップドロップなど、それぞれ特許取得済みという機能で固められている。
 この、プロシステムの下位機種に当たるのは、
603…7L…1万6800円
604…9L…2万1600円
606…9L…2万6000円
 薄型のものもある。
605…5L…1万8200円
 縦長型のものもある。
607…7L…2万4000円
 このシリーズだけでも、どこがどうちがうのか見ていくとおもしろい。写真は目安容量9リットルの604だ。
 それだけではない。「世界最高のカメラバッグ」というワールドコレスポンデント・シリーズというのもある。
826…9L…3万4500円
828…10L…3万8600円
 バリスティックナイロンに本革の縁取り、背中に当たる面の書類用ポケットのサイドジッパーを開くことによって収納スペースが拡大するエクスパンション・ポケットなどの革新的機能もあちこちに用意されているという。興味のある人はカタログをごらんいただけいたい。スタイルや機能に大きな違いがあるというわけではない。

●素材革命は進む
 むしろ革新的といえるのはスーパーライトシリーズかもしれない。軽くて丈夫なパワーグリッド・コーデュラナイロンに防水処理をしたうえ、バッグ全体をクッションで包み込みながら、からだにフィットするソフトな感触を失わない――というきわどいところをねらっている。
444…8L…3万円
446…7L…3万3000円
448…13L…3万3000円
449…16L…3万7200円
 というラインナップになっている。売れ行きモデルとして選ばれたのは横長タイプの446(写真)で、長さ19センチまでのレンズをつけた35ミリ一眼レフカメラ1台と交換レンズ3〜5本を収納するというコンセプトになっている。
 タムラック・カタログを見ていくと、セミソフトの大型機材ケースもそろっている。ストロングボックス・シリーズである。
644…18L…6万5100円
646…33L…7万7400円
648…40L…9万4200円
 キャスター付きのローリングストロングボックス・シリーズというのもある。
652…29L…8万1000円
654…46L…8万9600円
という本格派だ。
 まだある。スタジオ機材用のローリングスタジオ・シリーズだ。
660…62L…8万9600円
661…80L…10万3200円
662…100L…11万7600円
 このカタログにはないけれど、堀さんの話ではタムラックはテレビ取材用の機材ケースの分野に本格的に進出しているという。タムラックというメーカーの底力はそうとうのものだということがカタログを開くだけで伝わってくる。
 ところが、「用品ショーカタログ」のケンコーのところを開くと、58ページ中のたった1ページがタムラックに与えられているだけ。「Tamrac総合カタログが用意してあります、ご請求ください」という一文の背後の広がりはかくのごときものである。総代理店のケンコーはまだタムラックを本格的に売る態勢になっていないともいえる。

●自社ブランドは軽いタッチ
「用品ショーカタログ」のケンコーのページにはAOSTAブランドのカメラバッグが4ページにわたって展開されている。ケンコーのオリジナルブランドということだが、全体を見渡すと軽快感のある色づかいに気を配っているようだ。
 その中で今年の売れ筋としてケンコー側がチョイスしたのは、ザックタイプのモデラート(写真)とブリーフケース感覚のトゥデイ(写真)だという。どちらも容量は10リットルでザックタイプのほうは上下2気室になっている。ブリーフケースタイプのほうはA4判書類を入れられるほか、側面のファスナーを開くと底部が8センチ拡大する。


■豪快かつ徹底的に――株式会社みなと商会(ロゥプロ)

●買いやすさの秘密
 いま私は仕事としてお客さんを連れて山歩きに出かける日が年間100日以上あるけれど、背負っている登山用ザックはロゥアルパインの70+20リットル(2万4000円)で、雨の日でもカメラを速写態勢で持ち歩いて、しかも肩コリしないしないためのカメラケースはロゥプロのトップロードズームというシリーズで、大口径ズームレンズを装着したときには2型(5000円)、広角レンズをつけていざというときには雨具の下に隠せるようにするときには1型(3800円)を使っている。
 どちらもいろいろ調べて買ったのではなくて、シンプルで軽くて安くて、ユーザーをバカにしていないという基準でたまたま見つけたものを買ったのだった。
 登山用ザックは国産ブランドでシンプルでスリムで軽量というコンセプトでつくられたものがあるので一度使っておきたいとおもったのだが、こちらが半額セールだったので出会い頭に買ってしまった。中味が少ないときには50リットル級にまちがえられるほどスリムなのに、詰め込みたいときには驚くほど容量がアップする。構造が簡単で安いというのがすっかり気に入っている。同クラスのものはたいてい4万円前後の値段が付いているので割安感がすばらしい。
 登山用品のロゥアルパインとカメラ用品のロゥプロとはもとはひとつだそうだが、いまは完全に別会社になっているという。しかし、ロゥプロ製品は「ロゥアルパイン社のデザイン・製造のライセンスによる」と英文カタログには明記されているから、コンセプトが似ていて当然といえる。
 カメラケースのほうも、圧倒的に割安感があったのがロゥプロのものだった。使っているうちに素材自体の防水を完ぺきにするという考え方でなく、必要なら防水・防塵のカバーをかぶせるというところが雨の日に若干の不満を感じないわけではないということになった。またすでに2代目を使っているということは耐久性に欠けるのかもしれないが、それ以上の不満はない。
 横浜の馬車道通りにあるみなと商会の2階の事務所を訪ねたとき、真っ先にそのことを話した。
 じつは取材相手は専務の田中さんだったのだが、急な用事で、営業部課長の藤本桂一郎さんが待っていた。
「そうなんです。ロゥプロは安いんです。扱いはじめたときにドルの換算レートをかなり低く設定して、輸入ブランドとしては思い切った安い価格設定にしたんです。専務がね。私たちは猛反対したんですが」
 単に為替レートの問題ではなかったろう。キッチリした輸入ブランドは価格がかなり高い。そのうえ日本の市場の値引き商戦の波にのまれると、商売がものすごくむずかしくなってしまう。
 そういう市場環境のなかで、みなと商会はカメラバッグをロゥプロ一本に軸足をかけていこうと決心した――というところから始まったようなのだ。
「ロゥプロ自体は15〜16年の歴史があるようです。北米のカメラショーで見て、扱いたいと申し入れたのがはじめでした。
 じつは最初はあまり質がよくなかった。ところが次々に新しい製品を出して、メーカーとして素晴らしく成長してきました」
 かくして、いま、みなと商会でのロゥプロの売り上げの割合はじつに3分の1を占めるという。ロゥプロブランドを売ることが、すなわちみなと商会の経営の軸となっている。
 日本の量販店で競争力をもつ本格的輸入ブランドとして積極的に展開することに成功したといえそうだ。
 みなと商会の「みなと」はもちろん横浜のこと、創業の志は輸出企業として飛躍したいということだったそうだが、写真用品ではMinatoをラテン的に色づけしたMinette(マイネッテ)ブランドを成立させた。それがいま、輸入商社としてロゥプロを売ることにかなりの比重をかけている。
 しかし、ロゥプロのラインナップのなかで日本で売れるのは、やはりコンパクトで安価なクラスであるようだ。

●本格的なカメラザック
 ロゥプロが登山用ザックのロゥアルパインの系列にあることで、トレッカーシリーズと呼ばれるカメラザックはなかなか魅力的だ。背負いベルトなどのハーネスシステムが本格的なのだ。
スーパートレッカーAW
     …40L…8万円
プロトレッカーAW
     …26L…5万8000円
フォトトレッカーAW
     …22L…3万6000円
ネイチャートレッカーAW(写真)
     …16L…2万9800円
フォトトレッカークラシック
     …20L…2万7500円
ミニトレッカー
     …14L…1万6000円
 日本では最小サイズのミニトレッカー(写真)が売れ筋だそうだが、シリーズの実力は大きい方の、いわゆるフラッグシップモデルをみるとよくわかる。
 最大サイズのスーパートレッカーAWは800ミリ望遠レンズをアウトドアに持ち出せるカメラザック、あるいは大判の8×10カメラまで収納可能のザックと英文カタログには書いてある。重量では50ポンド(約23キログラム)以上を背負う場合を前提として、立体裁断のショルダーベルトや汗をかきにくい背面のメッシュなど、ザックとしての基本機能を追求しているという。
 加えて、かなりいろいろなサブパックを取り付けることができるようになっている。親亀の背中に子亀式のトレッカーディパック(約10リットル。6500円)や上部に乗せる形になるトレッカーベルトパック(2リットル。4500円)、各所に取り付け可能というトレッカーポケット(1リットル。2300円)、サイドポケット(3リットル。2000円)、各サイズのレンズケースなどが用意されている。
 傑作なのはトレッカートート(120リットル。8500円)で、カメラザックも外づけポケット類も、三脚も、すなわち撮影機材一式をそっくり入れてしまえる袋があらかじめ用意されている。これはテント生活で撮影機材を管理するようなときにはとりあえずほうり込んでしまうのがいいという合理的提案のようにみえる。

●カメラバッグからカメラポーチへ
 全天候型カバーを内蔵した新しいAWシリーズのカメラバッグは次のようなラインナップになっている。
25L…4万円
16L…2万8000円
12L…1万9000円
9L…1万円
7L…1万2000円
 このあとでプロマグの1型と2型がユーザーの具体的な要望によって加えられたのだろうか。35ミリのプロ用AF一眼レフカメラに80―200ミリF2.8レンズを取り付けた状態で収納できる高さ26・5センチの縦長のバッグで、交換レンズ数本と、大きい方の2型ではサブボディも収納できるようになっている。
1型…9L…1万6000円
2型…13L…1万8000円
「どの商品にも、ひとつひとつ役割があるんです」
 藤本さんがいうことは、こういうところでわかってくる。英文カタログを見ると使用カメラをほぼ特定してバッグを設計しているらしいことが見えてくる。カタログ写真ではニコンと、中判カメラではマミヤが使われている。各社のカメラを混在して見せるというようなことはあまり考えていないらしい。
 こういう、ヘビーデューティのカメラ+レンズをできるだけコンパクトに持てるようにしたいというのが最近のロゥプロの流れのようで、レンズ付きのカメラを1台入れられるだけのウエストポーチ型カメラケースの左右に大型のレンズケースを着脱可能にしたオフトレイルが1型と2型、それをさらに肥大させたオフロードというのがある。
 値段を見ると、直径7センチのレンズケース2本付きのオフトレイルが6600円、9500円のオフトレイル2は80―200ミリF2.8レンズを装着したカメラを収納できるケースに、直径9センチのレンズケース2本付き。本体部分をバッグ状にして収納力を拡大したオフロードには直径8センチのレンズケースが2本ついて、1万4000円。
 特定のターゲットに対して新しい試みをしていくという姿勢が、こういうところに現れているように思う。

●コンポーネントシステム
「先日、カナダから社長がきまして、新しいシリーズを自ら解説してくれました。大柄で、エネルギッシュで、圧倒されます」
 新しいシリーズというのはS&F(ストリート&フィールド)システムと呼ばれていて、バッグやケースと身体の接点になる部分を「コア・コンポーネント」というかたちで完全に分離したところにある。
 ベストハーネス(7000円)はベスト型のリュックベルト、それからリュック型のショルダーハーネス(3サイズ、各7000円)があり、ショルダータイプのライトベルト(2サイズ、各4000円)とウエストベルト(4サイズ、各7500円)があるので、まずはじぶんの好みのものを購入する。
 そこに好みのものを取り付けていくのだが、大は21リットルのザックであるS&FローバーAW(本体1万9000円。写真はウエストベルトとショルダーハーネスがついたキットで3万3000円)。小さいものではプレスカメラマンがプレスカードなどを入れて身分を明らかにするためのIDポケット(1800円)まで大小いろいろいろそろっている。
 カメラバッグでいちばん大きいのはS&Fリポーター500AW(写真。2万5000円)で15リットルある。これも背負ったり、肩から下げたりできるようになっている。
 レンズケースは大小5種類もあるので必要なものを必要なところに取り付けることができる。
 小さなポーチ類も大小いろいろあるので好みによって選べるが、そういうコンポーネントという考え方はいいとして、なにか、どうも、大げさすぎてちょっとまぶしい感じがする。
 ところがどうして、「小物がよく売れている」という。システム全体のコンセプトを完全に無視したところでも、それぞれがなかなかよくできているからだろう。統一したデザインなので、少しずつそろえようとするときに違和感がないし、細かいものも細部までしっかり作られている。アイディア倒れになっていない。
 なかでも話題を呼んでいるのはS&FフィルムドロップAW(4500円)という小さなケースで、口が絞り羽根状になっていて、撮影済みフィルムカートリッジをポトンと入れると、「サーお立ち会い!」跳んでも、逆立ちしてもこぼれない。フィルムと決めなくても、出し入れ自由にしたい小物入れとして秀逸といえる。
 ――というふうに、ロゥプロは大胆に新しい提案を展開してくる。みなと商会は当分、ロゥプロの発展にみずからの命運も掛けると腹をくくっているように見える。


■日本的に、おだやかに――株式会社浅沼商会(キング)

●老舗の品揃え
 明治4年(1871)に日本で最初の写真材料の店がオープンした。弱冠20歳ながら薬種商として土佐藩主山内容堂の屋敷に出入りしていた浅沼藤吉さんが、「写真薬品」という方向に大転換、写真材料の専門店としての看板を掲げたのだった。
 当時日本橋にあった浅沼商会は輸入商社としても成功し、国内では販売ネットワークを確立していった。昭和初期には富士写真フイルムの特約店として流通部門をになうことになる。
 戦後には主要なカメラメーカーとも次々に特約店契約を交わして、写真業界全体の流通基盤を支えるという「卸流通」を確立した。
 戦後移転した千代田区平河町にはかなり大規模な建物があるのに、店舗に類するものはなにもない。
「富士写真フイルムの四大特約店のひとつでして、各カメラメーカーさんとのおつき合いも含めると全体の8〜9割が卸流通になります。残りが用品で、用品メーカーさんの商品も扱っていますから、当社オリジナルのキングブランドは全体から見ればわずかなものにすぎません」
 株式会社浅沼商会の商品部・キング商品課の主査・多田善雄さんに話を聞いた。
 浅沼商会の特殊な地位からして、キングブランドは「狭く専門化することなく総合的なジャンルの製品」をめざしているということのようだ。
 そこでカメラバッグだが、シェルパシリーズがすでに4〜5世代続いて17〜18年になるという。
 つながっているのはみな古くからの店で、古くからのお客という意識がある。専門店に対しても「じっくりやるから、お願いします」というかたちになる。
 そういう体質が、アイテム数を増やさずに、ロングセラーをねらっていくというかたちになるという。
 この5〜6年、英国の高級手作りバッグのフォグを扱っていたのだが、昨年でやめたのは、バッグの売れ筋が全体として安いものにシフトして「高級手作り」ではむずかしくなってきた。フォグは小さいものでも3万円から、いちばん大きな24リットルタイプは12万円もした。
 そこでシェルパシリーズの素材をフォグに似た二重のコットン地の間に天然ゴムをはさんだ完全防水地にして、高級路線を継承したCRシリーズが登場した。
CR-10…3L………7800円
CR-15…4L………7800円
CR-20…8L………9800円
CR-25…10L…1万6800円
CR-30…11L…2万円
CT-35…13L…2万4500円
CR-50…17L…3万1500円
CR-60…27L…3万6500円
 CR-35(写真。2万4500円)は横幅38センチで奥行き16センチ、高さ21センチという、使いやすい13リットルバッグになっている。カメラボディ1〜2台に交換レンズやストロボを持つことができる。
 同じシェルパシリーズでも、ポリエステルにPVC加工をした軽量タイプのFシリーズが新発売になっている。
F-05…4L………4800円
F-10…5L………6000円
F-15…8L………7200円
F-20…11L………9800円
 いちばん小さいF-05(写真。4800円)は35ミリカメラにクリップオンストロボと交換レンズ1本程度が入る軽量バッグながら、売れ筋となっているという。
 また別に、撥水加工のポリエステル地を使用して耐久性を高めたトライコンシリーズのゼアスシリーズ(写真)も売れ筋の商品となっているという。
ゼアス-1…5L………5900円
ゼアス-2…6L………7900円
ゼアス-3…7L…1万2000円
 このあたりでは、軽快感が非常に重要視されているということがわかる。


■マイナーチェンジの根気――ハクバ写真産業株式会社(フルト)

●日本全国の専門店に並ぶ品
 両国国技館の近くにあるハクバ写真産業株式会社では営業推進部長の松沢真一さんと製品開発課長の池田慎二さんの話を聞いた。
 そこでわかったのは、ハクバのビジネスターゲットは各地方の専門店チェーンで、「大型売場をまかなえるだけの品揃え」と、「町のDP店でも売れる価格帯の商品」を供給していくことにある。
 最近はそれにスーパーで売れはじめているコンパクトなバッグやケースがあるので、婦人層を意識した開発もおこなっているという。
 ハクバのカメラバッグは全体にルフト(大空)というブランドがかぶさっていて、その下にかなりたくさんのシリーズがある。サイズと価格帯から見て中心的なシリーズはルフト・ランディとルフト・クリンクルだそうである。さっそく一覧してみたい。
ランディS…3L…3200円
ランディM…7L…3800円
ショルダーポーチ
     …1L…2200円
ミニポーチ…1L…1300円
 ずいぶんと小さくて安い。ルフト・クリンクルのほうはどうだろうか。
CRS…4L………3300円
CRM…5L………3900円
CRL…8L………4400円
ショルダーポーチM
   …0.4L………2200円
ショルダーポーチL
   …1L………2400円
 どうも、ここまでのカメラバッグの世界からどこかへワープしてしまったような気持ちになったが、じつはこちらが現実のようである。
「カメラバッグも多様化しています。ソフトバッグの市場には他の業界からどっと進出して、しかもほとんど100%が輸入です。激しい価格競争にさらされている」
 松沢さんはそう力説する。
 そういうなかでユーザー層はどうなっているのだろうか。
「ハイアマチュアの方からは機能的な注文が多いですね、使い勝手、持ち心地、防水、防塵。それに対して初心者の方は色と価格なんです」
 開発担当の池田さんはいう。ハクバのカメラバッグはそういう領域で売れ筋を残しながら「半歩先へ」と進んできたのだ。

●売れ筋モデルの素顔
 そこで今年の売れ筋を、今回の取材の基本パターンということで、3モデル選んでもらった。
 ひとつは「年輩のお客様に好評」のルフトランデックのカメラバッグ。
S…4L………7800円
M…9L…1万2500円
 売れ筋のMは横幅は29センチと短めに対して奥行きは18センチと深め、高さは18センチと浅い系列に属するだろうか。カメラ1台にレンズ数本というシステムならどのようにでも対応できる。
 女性向けにはブラック、ネイビー、グリーン、レッド、コンビと色を取りそろえたルフト・カロリナシリーズがある。入れるカメラはAPSやコンパクトカメラ、せいぜいコンパクト一眼レフまでという軽量バッグのシリーズである。
ミニポーチ……1L……1900円
ポーチ…………1L……2300円
ショルダーS…3L……3500円
ショルダーM…6L……4300円
リュックS……8L……5300円
リュックM……11L……7000円
 写真はこの中のショルダーバッグSで横幅24センチに対して高さが14センチあり、奥行きが11センチとなっている。レンズ付きの一眼レフカメラも入るサイズになっている。
 なにはともあれ、サイフの堅い奥様方に、(オシャレのではなく)遊びの道具を買っていただくのはたいへんなことのようだ。
 そしてもう一点、選ばれたのはカモフラージュデザインということで話題になっているというルフト・ミルフォードシリーズからだった。
レンズポーチ……1L……1500円
ウエストバッグ…4L……6500円
カメラバッグS…4L……7000円
カメラバッグM…7L……8300円
リュック………11L……7400円
 写真はカメラバッグS。横幅22センチのずいぶん小ぶりなバッグだから、本格的にアウトドアへ分け入って……というのではなさそうだ。カタログには「遊び心あふれる」と書いてある。
 そう、写真は「遊び」なのだ。自分流に、楽しくやれる間が、いちばん健全なのかもしれない。


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