山旅図鑑 no.193
倉見山
2018.5.3

山旅図鑑 目次


糸の会(no.1082)
2018.5.3
倉見山
46パワー

車道7p→登り13p→稜線9p→下り6p→車道11p

*倉見山は富士急行線沿線の小さな山ですが、その麓でクマガイソウの群生が見られるというので計画してみました。
*ところが、小さい山の場合、麓から地元の人が登る道が何本もあるのが普通です。私が使っている地図(地形図や登山地図)が古いためか、わからないルートが何本もあるように思われました。だいたいクマガイソウの場所も「行けばわかる」という感じで、地元の案内情報なども手元の地図に落とせない状況でした。
*そこで計画書には「糸の会で最近流行の道迷い体験になるやもしれません。まずクマガイソウを見て、それから登るルートを決めたいと思います」と書きました。

・0920……富士急行線・三つ峠駅出発(標高約600m)
・0955-25……クマガイソウ園(標高約700m)
・1030-45……堂尾山公園への分岐で休憩・Sさん合流(標高約700m)
・1130-40……堂尾山公園で休憩(標高約850m)
・1205-10……休憩(標高約1,000m)
・1240-45……休憩(標高約1,150m)
・1250……倉見山〜杓子山稜線分岐(標高約1,200m)
・1310-30……倉見山山頂(標高1,256m)
・1250……倉見山〜杓子山稜線分岐(標高約1,200m)
・1415-30……向原峠で道探索(標高約1,100m)
・1510……登山道終了・向原集落へ(標高約800m)
・1635……車道をたどって葭之池温泉へ(標高約750m)

今回の写真出展メンバー(提出順)は以下の1人です。

伊藤 幸司(66点)



山旅図鑑 no.193
倉見山
2018.5.3

倉見山登山、三つ峠駅
【撮影】09時17分=伊藤 幸司
三つ峠駅といえば、前の東京オリンピックの前後には超有名駅で、土曜日の仕事が「半ドン」で終わるとこの駅に向かい、三ッ峠山目指して登り始めたという夜行日帰りで賑わいました。
その光景を私自身は見ていませんがヤマケイオンラインにありました。
【三ツ峠は岩登りのゲレンデとして古い歴史がある。大正13年6月1日、沼井鉄太郎らにより試登され、その記録が発表された。昭和4年には富士山麓電気鉄道(現富士急行)が営業運転を開始し、新聞輸送を兼ねて、早朝3時前後の電車を運転していた。休暇の少なかった勤労青年も夜行日帰りが可能となり、多くの岳人を迎えた。】
いま、糸の会ではほとんど、裏側からさらっと登ってしまいますが、山頂の小屋泊まりでこの駅から登ったことはあります。

倉見山登山、倉見山
【撮影】09時24分=伊藤 幸司
今日私たちが目指すのは三ッ峠山とは反対側の小さな山、標高1,256mの倉見山です。これまではこの小さな山を向かって左手から登り、右手へと下っていました。今回はこちら側から登ってみて、右手へと下るつもりです。なんで「登ってみて」かというと、第一の目的がこちら側の山裾にあるからです。

倉見山登山、西桂小学校
【撮影】09時32分=伊藤 幸司
西桂町立西桂小学校です。この校舎がいつ建てられたものかネットでは簡単に出てきませんでしたが、どう見たってバブル期の匂いですよね。

倉見山登山
【撮影】09時37分=伊藤 幸司
じつは私たちは「クマガイソウ園」を目指しています。
公益社団法人やまなし観光推進機構のサイトに「クマガイソウ群生地公開」という記事がありました。
【クマガイソウ群生地は、故池田正純さんが昭和45年から「この花を絶滅から守り、後世に引き継ぐ為に・・・」という趣旨から栽培を始め、最盛期には3万株を数えるまでの群生地となり、毎年美しい花を咲かせ、見学者を楽しませてくれていました。
現在は5,000株まで減少してしまいましたが、最盛期の状態を目指し、保護・管理を行っております。
平成30年のクマガイソウ群生地の公開期間は下記のとおりといたします。(生育状態により変更あり)
今年は4月25日より5月13日まで公開します。見頃の期間は5月3日〜10日を予想しています。皆様のご来場をお待ちしております。】

倉見山登山、アツモリソウ
【撮影】10時00分=伊藤 幸司
これはクマガイソウではなく、クマガイソウ園入口の目立つところにあったアツモリソウ。熊谷直実に対して平敦盛も置いておこうという親切心からでしょうか。でもこちらが主役みたいな雰囲気がありました。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時00分=伊藤 幸司
こちらがクマガイソウ。ほどほどの日陰でないと育たないのだそうです。

倉見山登山、エビネ
【撮影】10時01分=伊藤 幸司
エビネもありました。西桂町には別に「エビネラン〔とうざんの里〕同時期公開」というのがあるらしいのですが。
エビネは地上性のランで、日本のほぼ全域から中国・朝鮮半島までに分布してジエビネ、ヤブエビネとも。
ウィキペディアにその「異変・変種」という項目がありました。
【花の色は変異が大きい。がく片と側花弁は赤褐色、褐色、黄褐色、緑褐色、緑など。唇弁は白または薄紫紅色。花の色に基づいてアカエビネ、ダイダイエビネなどの品種を認めることがある。】
でもエビネって、もっと多彩、もっと華やかな存在だったように感じています。ただの「エビネ」だけですむのでしょうか。
蘭裕園というランの品種改良専門農園のサイトに以下のような解説がありました。
【世界中の温帯地域で、庭植えして楽しめるカラフルなランとして品種改良した新しいタイプのエビネです。山野草のエビネとは違い丈夫で育てやすく、カラフルな花を長い間楽しめます。
世界でもっとも多彩なランとして知られ、カランセという名前で呼ばれています。スプリングカランセは種まきにより作られたもので、クローン株とは異なり、いずれも世界にひとつしかない株です。ペットにそれぞれ名前を付けるように、好きな名前を付けて自分だけのオリジナルの花としてお楽しみ下さい。
花言葉は株ごとに異なる多彩な変化があり、同じ花が二つとないことから「あなたらしく」「華やかに美しい人」です。また花色が澄んでいることから、「澄んだ瞳」とも言われています。】

倉見山登山、エビネ
【撮影】10時01分=伊藤 幸司
これは山野草のエビネBという感じでしょうか。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時01分=伊藤 幸司
これまでいくつかの場所で見たクマガイソウは狭いところに押し込められているという印象ばかりでしたから、この広がりは新鮮です。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時02分=伊藤 幸司
ときどき花が2つ咲いている株もありました。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時03分=伊藤 幸司
入場無料ですからみなさんボランティアなのでしょうが、私たちはずいぶん詳しい説明を聞くことができました。クマガイソウのこの広がりやら、林間の採光条件やらが、なかなか思うようにいかないらしいのです。
ヤサシイエンゲイというサイトに「クマガイソウの育て方」がありました。
【自然の環境下では竹林内など、やや薄暗い場所に群生する植物で直射日光は苦手です。午前中はうっすらと日が射し、午後からは日陰になるような場所を好むので、一年を通して明るい半日陰で栽培します。そのような場所を確保できないなら、寒冷紗や遮光ネットを使って春と秋は50%、夏は80%の遮光を行います。油断して夏の直射日光に当てると葉焼け(葉がヤケドを起こして一部が枯れる)します。葉焼けで枯れてしまうと株の生育が衰えて翌年に花を付けないこともあります。特にクマガイソウは他の草花に比べると葉数が少ないので、葉焼けには気を付けましょう。
また、暑さが苦手なので夏はできるだけ涼しい場所で管理しましょう。ただし、常に風が当たるような場所はあまり好ましくありません。】

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時05分=伊藤 幸司
花の樣子がわかるように下から撮ってみました。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時05分=伊藤 幸司
こちらに向かってくる群衆という感じでしょうかね。
「おんせんニュース」というサイトに「【福島】全国でも3ヶ所!絶滅危惧種の希少なクマガイソウが見頃!」という見出しがありました。
全国で3か所というので読んでみると
【群生地は、全国でも3ヶ所(福島2ヶ所、山梨1ヶ所)しか残っていないんです。この水原のクマガイソウは、「水原の自然を守る会」のみなさんが守り続け、約15,000株のクマガイソウが自生しているのです】
とのこと。
その「山の斜面一面にクマガイソウが咲いています」という写真はいかにもすごい。それが1万5000株というのですから山梨県のここの3倍、でもここは池田正純さんという人が昭和45年(1970)から自力で栽培を始め「最盛期には3万株を数えるまでの群生地」となったそうですから、写真の2倍だったということになります。
すると東京新聞のWeb版の2018年4月5日に「淡紅色光る 所沢でクマガイソウ咲き始める」という記事がありました。
【所沢市中富の多聞院(たもんいん)で、希少植物のクマガイソウが、淡紅色の花を咲かせ始めた。このところの暖かさのため、例年より10日ほど開花が早いという。】
【手入れをしている市観光協会の平塚信夫さん(70)によると、多聞院では計1000株の5割ほどに芽がついた。10日ごろ満開となり、20日ごろまで楽しめるという。】
調べてみれば、あんがい身近で見られるのかもしれません。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時06分=伊藤 幸司
なんだか褒めてもらいたくてすり寄ってくる感じ。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時06分=伊藤 幸司
代表者が先頭に並んでいる感じかも。
クマガイソウに関してはネット情報がたくさんあります。福島市の「クマガイソウの里」については環境省の「生物多様性保存上重要な里地里山」に選定されていて、その正式な選定理由がわかりました。
【市の南端に位置し、田んぼを雑木林や杉林が囲む山里であり、約15,000株のクマガイソウが自生する国内最大規模の自生群生地である。農地を中心としたモザイク状の土地利用が維持されており、手入れの行き届いた林内にはニリンソウやチゴユリなど里地里山に特徴的な植物も生育している。なお、クマガイソウの自生地は全国的に激減しており、大量に群生する自生地は本地区を含め全国に3箇所程度が残るのみといわれている。】

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】10時07分=伊藤 幸司
レンズを近づけたからといって、花の構造がわかるわけじゃありません。
筑波実験植物園の「植物図鑑」には「研究者ノート」に記述がありました。
【クマガイソウは日本、朝鮮半島、中国の浙江省から四川省に分布するラン科の多年生草本です。日本では北海道から本州、四国、九州まで全国の、落葉広葉樹、スギ、竹類の林床に生育しています。クマガイソウはかつて里山や都市の緑地にふつうに見られた種ですが、今ではめったに目にすることのできない植物となってしまいました。環境省版レッドデータリストでは、100年後に絶滅する確率が10%以上あるとされています。(遊川知久) 】

倉見山登山、エビネ
【撮影】10時08分=伊藤 幸司
帰りがけに、エビネももう一度撮っておきました。

倉見山登山、エビネ
【撮影】10時08分=伊藤 幸司
ついでにエビネの花のアップも。

倉見山登山、エビネ
【撮影】10時08分=伊藤 幸司
ついでに色違いのやつも。

倉見山登山、アツモリソウ
【撮影】10時10分=伊藤 幸司
そして最後に平の敦盛さんも。
『おどろきの植物 不可思議プランツ図鑑:食虫植物、寄生植物、温室植物、アリ植物、多肉植物』という本の電子版の立ち読み部分だと思うのですが平の敦盛さんと熊谷直実さんの話が載っていました。コピーできないので「アツモリソウ」のところをお読みいただければと思います。

倉見山登山
【撮影】10時43分=伊藤 幸司
クマガイソウ園を出たところで態勢を立て直すべく休憩していたら、電車の遅れで欠席となったSさんが現れました。分岐点の反対側からやってきたので、私たちがそこで休憩していなかったら、クマガイソウだけひとりで見て帰るつもりだったSさんとは会えませんでした。

倉見山登山
【撮影】10時47分=伊藤 幸司
クマガイソウ園から倉見山に直登する道があることは確認しましたが、道標によって堂尾山公園経由で登る道がメインだと判断しました。それにはもうひとつ、できればそのルートで行きたいという理由がありました。
私の古い地形図にはまったくない道なので、とりあえず、道標に導かれるまま進むことにしたのです。

倉見山登山、フジ
【撮影】10時58分=伊藤 幸司
フジが大きな木にかぶさっていました。丿フジ(ノダフジ)かヤマフジかはわかりません。
「樹木の写真」というサイトで「フジ」に関するちょっと気になる記述がありました。
【別名にあるノダフジは本種の栽培種。山地に生えるフジをヤマフジと言うのは誤りで、正しくは関西以西に自生する別の種を言う。神奈川県には、自生のヤマフジは無い。本種のフジが広く分布している。】
この見解が正しいかどうかはわかりませんが。

倉見山登山
【撮影】11時08分=伊藤 幸司
すぐに植林地帯に入りました。道はしっかりしています。

倉見山登山、富士鉱山跡
【撮影】11時10分=伊藤 幸司
ここには立派な道標が立っていて、このあたりに鉱山があったと記されていました。どのような鉱山かは登山者がみんな疑問をもったまま通過しているということがネット情報からわかります。
そこですこししつこく調べてみると、これが砂鉄を産出した「富士鉱山」で、昭和12年(1937)に鉱床が発見され、西桂町の広い範囲で昭和30年(1955)まで(たぶん小規模に)採掘が行われていたようです。
その本格的な調査報告は国立研究開発法人産業技術総合研究所の報告書にあって「山梨県・桂川:地方砂鉄鉱床調査報告」というのが昭和29年(1954)の調査結果を載せています。
「西桂地区の砂鉄鉱床」によると、
【調査区域は山梨県南都留郡西桂町上暮地から下暮地に至る東西3km,南北2・5kmの範囲である。富士鉱山の現場はその西端の殿入沢入口附近に位置する。中央線大月駅において富士山麓電気鉄道に乗り換え,三ツ峠駅下車。国道沿いに南西進1.3kmで上暮地に達し,さらに北西方に1.3km進み現場に至る。三ツ峠駅から現場まで,トラツクの運行可能で,交通運搬の便はきわめて良好である。】

倉見山登山
【撮影】11時13分=伊藤 幸司
かならずしも手入れが行き届いているとは思いませんが、広大な植林地帯をくぐり抜けて行く感じです。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】11時37分=伊藤 幸司
じつはこの堂尾山公園の近くに、自生のクマガイソウがあると知らされていたので、今回、どうしてもそれを見ておきたいと思ったのです。
直前に稲葉和平さんからメールをもらいました。
【倉見山、残念ながら不参加です。 △→×。
倉見山は以前行ったことがあるのですが、その時、間違って真ん中の道で、山頂手前の展望台に直登してしまいました。落ち葉で道は不鮮明でしたがリボンが付いていたので、ズルズル歩きにくいことを別にすれば、ルートに関しては問題ありませんでした。たぶん、見通しさえ良ければ、残念ながら道迷いの心配はありません。
ただ、落ち葉で覆われたどこが道かわからない急斜面ですので、雨で水を含んでいる場合は相当な苦戦が予想されます。
もう一つ、こちらが重要なのですが、クマガイソウの群生地は、二箇所あります。一つは、移植され保護されて育成された山麓の群生地です。斜面に広がるクマガイソウの大きな群落は見応えがあります。
もう一箇所は、倉見山から寿駅方面への下りの堂尾山公園の…………に、自生のクマガイソウの群落があります。途中で出会った人に教えてもらったのですが、規模は小さくても、自生のクマガイソウの風格のようなものが見えて、一見の価値ありです。
もう一つ。三つ峠駅からクマガイソウ群生地へは、 駅前の国道を右にという標識には惑わされないように!。少し左に回って桂川公園から川沿いに町営グラウンドを目指して歩くのがいいと思います。】

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】11時37分=伊藤 幸司
ここはずいぶん日当たりの良い場所でしたが、まさに野性味あふれる、という雰囲気のクマガイソウ群落でした。

倉見山登山、クマガイソウ
【撮影】11時37分=伊藤 幸司
クマガイソウがちゃんと咲いているという確認のために、強風で揺れ動く中、クローズアップでも撮っておきました。

倉見山登山、富士山
【撮影】11時40分=伊藤 幸司
標高約800mだと思うのですが堂尾山公園で富士山を見ることができました。公園というからどんなところかと思ったら、崩れかけたあずまやがあっただけ。「展望台」がいいところ。いささか誇大広告という感じでした。
ふじよしだ観光振興サービスによると桜の名所のようです。
【山梨県富士吉田市小明見。ソメイヨシノが100本。山頂近くには、富士山と市街地が一望できる広場「富士見台」を整備。富士山と桜が調和した憩いの場。】
富士急行の寿駅から登ってくると30分なんですね。

倉見山登山、ホタルカズラ
【撮影】11時41分=伊藤 幸司
見たときにはなんとなく「ワスレナグサかその仲間?」と思った程度のことでしたが、本当は「ムラサキかその仲間?」と思うべきでした。なぜならワスレナグサは古い帰化植物。それに対してムラサキは万葉集の時代からの紫色の染料だから。そしてこれはその近い仲間のホタルカズラ。
「四季の山野草」にありました。
【古代より根が紫色の染料として用いられたムラサキの仲間だが、ムラサキの薄い青と違い、鮮やかな青。これだけの青い色の花は、他にはツユクサ、オオボウシバナなどのツユクサの仲間くらい。真ん中にある星型の白い線が蛍の光を連想させることから付いた名前で、茎が地面を這って伸びるつる性植物】だそうです。

倉見山登山、イカリソウ
【撮影】11時48分=伊藤 幸司
イカリソウがありました。あまりうまく撮れていないけれど、たまたまここにあったという雰囲気でした。

倉見山登山、富士山
【撮影】11時50分=伊藤 幸司
送電線に邪魔されないで富士山が見えたので撮っておきました。みなさんこういう場面では富士山を撮るのを諦めてしまうようですが、空に向けてシャッターを半押しして撮ると富士山が主役になります。ダメモトで撮っておくことを勧めます。

倉見山登山、キランソウ
【撮影】11時53分=伊藤 幸司
キランソウ、だと思います。正直なところキランソウ(ジゴクノカマノフタ)とジュウニヒトエの違いすらわかりません。どう違うかというあたりを厳密に調べていないから、ではあるのですが。
「あの頂を越えて」の「ジュウニヒトエ」には【同属種にキランソウがあり、本種と雑種ジュウニキランソウが知られている。】とあります。
「hiroの気ままノート・絵手紙日記」には別の角度からの記述。
【山野草の好きなお隣のお宅からキランソウをいただきました。ちょうど咲き始めたアジュガの花とそっくりです。そうそう カキドオシの花もそっくりですね。よく見るとローズマリーの花もよく似ています。似ているはずです。どれもシソ科の花ですものね。紫色の美しい花たちです。】
私のようなド素人は「ジゴクノカマノフタ」などという刺激的な名前に引っ張られているのが本音です。
ちなみに「似た花」サイトというのでしょうか、そこで「キランソウと似た花」を見てみるとオウギカズラ、ツクバキンモクソウ、ニシキゴロモ、ヒメキランソウ、タチキランソウ、ジュウニキランソウが顔を並べています。

倉見山登山
【撮影】11時55分=伊藤 幸司
スミレの仲間(スミレ属)は間違いないでしょうが、ここでわかるのは花が紫色で葉が卵形あるいは心形。この2つで調べてみると『フィールド版・日本の野生植物』(平凡社)では「A 花は紫色または白色」で「F 葉は円形、卵形〜長卵形」「H 花は濃紅紫色または帯紅紫色。葉の基部は浅い心形」のところにアカネスミレとサクラスミレがありました。アカネスミレは「春葉は3角状卵形」でサクラスミレは「春葉は3角状長卵形」で「夏葉はときに耳の開いた狭3角形」とのこと。
アカネスミレでいい、のでしょうか、ねえ。

倉見山登山、タンポポ
【撮影】11時58分=伊藤 幸司
まずはタンポポだと思いましたが、葉っぱの雰囲気が違います。たぶん根本の大きな葉っぱがこの黄色い花のものだと思うのですが、タンポポなら葉の縁がギザギザに深く切れ込んでしかもトゲトゲ……のはず。
「タンポポと間違いやすい植物」にノゲシ、オニタビラコ、ブタナ、オオジシバリが列記されていました。
ところが想像を逆転させるものがあったのです。
「タンポポの葉の形」に次のようなレポートがあったのです。
【自宅で栽培中の各種のタンポポの葉の形を観察しましたが、結論としてはタンポポの葉の形から種類を判別することはできないことがわかりました。
その理由は、タンポポの葉の形はタンポポの種類に応じて固有な形をとるわけではなく、同じ種類のタンポポでも葉の形はさまざまで、発芽からの生長段階に伴う変化・日当たりの良さなど育つ環境による変化・季節による変化等により、葉の形も大きさも大変異なることがわかったからです。
写真は、セイヨウタンポポについて周囲の環境が違う場所から葉を採集し、どれだけ形に違いがあるか比較してみたものです。】

倉見山登山、シロバナノヘビイチゴ
【撮影】11時58分=伊藤 幸司
これはたぶんシロバナノヘビイチゴ。花の雰囲気がちょっと違いますがまだ若いからではないかと思います。
じつは私はノウゴウイチゴというのを見た記憶がありません。ほとんど見落としているのだと思います。一番美味しい野いちごとしてモミジイチゴがありますが、それとノウゴウイチゴを食べ比べてみたいのです。
でこれはいつも見ている美味しくないシロバナノヘビイチゴなのですが、改めて調べてみると次のような常識的な知識が私には欠落していました。
「山野草の育て方、植物図鑑、庭造り」の解説です。
【よく似ていますが、シロバナノヘビイチゴが、花弁、萼弁、副萼弁は5個なのに対して、ノウゴウイチゴは花弁、萼弁、副萼弁は7〜8個と多く、小葉が灰緑色、裏面は白色であることから違いが分かります。】
私にはそういう認識がありませんでした。シロバナのヘビイチゴをもっと注意深く見ていたら、ノウゴウイチゴの見落としを防げるのではないかと思うのです。

倉見山登山
【撮影】12時07分=伊藤 幸司
堂尾山公園から登り始めるとしばらくの間、足元に小さな花がありました。そしていよいよ本格的な登りの気配になってきました。

倉見山登山、ヤマツツジ
【撮影】12時12分=伊藤 幸司
深い自然林に潜り込んでいくと、たちまちヤマツツジが出てきました。

倉見山登山、ヤマツツジ
【撮影】12時16分=伊藤 幸司
ヤマツツジは咲き始めたところのようです。

倉見山登山、ヒトリシズカ
【撮影】12時24分=伊藤 幸司
ヒトリシズカがありました。2対の葉が直角に重なって4枚の輪生葉に見えます。何日か前ならその4枚が白い花穂をまろやかに包んでいたはずです。一人静の誕生シーンがあったはずです。
ところが「花穂」(かすい。文字どおり花が集まって穂状となる)が特殊です。
「松江の花図鑑」によると
【葉がのびきる前に葉の中心から白い花穂を1個(まれに2個)のばす。花には花弁も萼もなく、雌しべ1個と子房の横腹に雄しべ3個がつく。雄しべの花糸は白色でよく目立つ。外側の2個の雄しべは基部の外側に黄色の葯があり、中央の雄しべには葯がない。】
たしかに、ムギ類やススキ、オカトラノオなどのイメージとは違って花柱(雌しべ)の側面に子房がたくさんあって、そこから3本セットの花糸(雄しべ)が外側に伸びています。よく見るとその3本のうちの2本には(先端部ではなく)根本に花粉のついた黄色い葯がついているという不思議な構造。

倉見山登山、クサボケ
【撮影】12時31分=伊藤 幸司
クサボケがありました。この朱色はなかなかのものです。……で、木なのに草とはこれいかに。ボケというと人の背丈ほどに立ち上がる木の風情なのに、クサボケは枝が横に伸びて足元の草に紛れているから。でも基本となる一重の朱色の花はボケもクサボケもいっしょで、魅力的です。

倉見山登山
【撮影】12時37分=伊藤 幸司
斜面を真っ直ぐに登っていく感じの道が続きます。

倉見山登山
【撮影】12時46分=伊藤 幸司
ヤマブキですよね。花が数珠つなぎになっていないのでちょっと自信がないのです。おまけにヤマブキは山の中で見るよりも、山に向かう林道などでよく見るので、ここに一輪というのがそもそも不自然だというふうにも感じるからです。たまたま花弁がジャスト5枚に見えないのも不安を解消してくれません。

倉見山登山
【撮影】12時48分=伊藤 幸司
11時55分に見たアカネスミレと比べると、花の色が明らかに白っぽい。そこでまた花の色と葉の形で調べてみたのですが、うまくいきません。
「チューメイくんの田舎ぐらし」というのにスミレの違いをわかりやすくイラストにした葉の一覧がでてきました。
でもけっきょくわけがわからなくなりました。

倉見山登山
【撮影】12時53分=伊藤 幸司
12時50分に倉見山と杓子山を結ぶ尾根道に出ました。倉見山山頂へと向かう尾根は岩っぽくなりました。

倉見山登山、富士山
【撮影】12時56分=伊藤 幸司
山頂手前の「みはらし台」で富士山がきれいに浮かび上がってきました。

倉見山登山、富士山
【撮影】12時57分=伊藤 幸司
雲がなかなかドラマチックな動きをしているようなので、そちらを主役に撮りました。

倉見山登山
【撮影】13時03分=伊藤 幸司
ベンチのある「みはらし台」からこの下り。登り返したところが山頂でした。

倉見山登山、三ッ峠山
【撮影】13時10分=伊藤 幸司
山頂から見た三ッ峠山。富士急行線・三つ峠駅をはさんでお隣さんです。

倉見山登山
【撮影】13時20分=伊藤 幸司
山頂で、ゆっくり休むことにしました。以前、甲府盆地が30度Cを越える猛暑日のとき、この山頂に立ったことがありましたが、吹く風は驚くほどの涼風でした。標高わずか1,256mですから、真夏には登りたくない、という低山ですが、登ってみればその途中で、下界の熱風から山の風、たぶん富士山から吹き下ろしてきたのだろうと思われる涼しい風に一瞬で切り替わってしまったのを思い出します。そのあと再び下界の猛暑に逆戻りして、温泉に一直線。汗を流したのですが。

倉見山登山、富士山
【撮影】13時21分=伊藤 幸司
山頂からの富士山。

倉見山登山、富士山
【撮影】13時22分=伊藤 幸司
その富士山。

倉見山登山
【撮影】13時26分=伊藤 幸司
山頂での記念写真。

倉見山登山
【撮影】13時58分=伊藤 幸司
堂尾山公園から登ってきた道との分岐をやり過ごして杓子山への縦走路を進みました。

倉見山登山
【撮影】14時06分=伊藤 幸司
杓子山への縦走路は、ちょっと荒れた感じがしました。小さなアップダウンはありましたが、標高約1,100mまでどんどん下って行きました。

倉見山登山
【撮影】14時38分=伊藤 幸司
14時15分に向原峠に出ましたが、ちょっと道を外れたりして、向原に向かって下り始めたのは14時30分。大きな問題のある道ではないようでした。

倉見山登山、ヤマツツジ
【撮影】14時42分=伊藤 幸司
傾き始めた日差しの中で、ヤマツツジがチラホラとありました。

倉見山登山
【撮影】14時56分=伊藤 幸司
向原峠からの下り始めはちょっと曖昧な道でしたが、下るべき尾根が定まると快適になりました。

倉見山登山
【撮影】15時10分=伊藤 幸司
ちょうどここで林道に出ました。標高約800m。登山道の部分が短い下り……ではあったのです。

倉見山登山、富士山
【撮影】15時36分=伊藤 幸司
15時30分に集落に入りました。こういう富士山を見ながら生活している人たちの世界です。

倉見山登山、セイヨウタンポポ
【撮影】15時52分=伊藤 幸司
セイヨウタンポポですが、耕作放棄地かなにか、広大なタンポポ広場になっていました。

倉見山登山
【撮影】16時36分=伊藤 幸司
道筋のよくわからない舗装路を訪ねながら1時間歩いて、富士急行線の葭池温泉前駅の向こう、葭之池温泉へとたどり着きました。

倉見山登山、葭之池温泉
【撮影】17時19分=伊藤 幸司
湯船は小さいけれど地元の人たちが愛しているとわかる温泉です。

倉見山登山、葭之池温泉
【撮影】17時44分=伊藤 幸司
吉田うどんの一番ゴージャスなやつ。おすすめです。

倉見山登山、富士山
【撮影】18時40分=伊藤 幸司
風呂上がり。駅までのわずかな道で、今日最後の富士山。
ウィキペディアの「葭池温泉前駅」にはちょっと気になる記述がありました。
【富士山の鉱泉である葭之池温泉の最寄り駅となっており、駅を出て踏切を渡ると5分ほどで温泉に到達することが出来る。葭之池温泉は葭池温泉とも言われ、駅名はこちらからとられた。また古くは尾垂の湯とも呼ばれていたため、戦前はこの駅も尾垂鉱泉前駅という名称であった。】
【1930年(昭和5年)1月21日 - 富士山麓電気鉄道の尾垂鉱泉前駅として開業。
1939年(昭和14年)までに葭池温泉前駅に改称。
1960年(昭和35年)5月30日 - 社名変更により富士急行の駅となる。】
「旅は哲学ソクラテス」というタイトルの風呂ナビブログに葭之池温泉と尾垂鉱泉の関係が書かれていました。
【創業は安政3年というから、160余年の歴史を持つ。玄関には「翠松閣葭之池鑛泉」の看板。小さな池(とおぼしき窪み)には葭が茂っており、それが葭之池温泉たる所以だが、かつては裏山の名にちなんで尾垂の湯と呼ばれていたそうだ。いまは裏手に中央自動車道が走っている。】



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