箭内和子……山笑う・山眠る
遠くの山 32
南アルプス甲斐駒ケ岳・尾白川黄蓮谷――2013.8.13-17



■南アルプス甲斐駒ケ岳・尾白川黄蓮谷


黄蓮谷


千丈の滝


千丈の滝前

日時     2013年8月13日〜17日
メンバー   佐藤さん、裕子さん、克行、和子

黄蓮谷右俣遡行 
13日  11時 郡山〜16時半 竹宇駒神社駐車場(テント泊)
14日  7時 日向山林道ゲート〜8時15分(下降点)林道の行き止まり
〜入渓〜千丈の滝〜13時15分 五丈沢の向かい辺りでBP
15日  7時10分 BP〜坊主滝〜二股を右俣へ〜14時過ぎ 
奥千丈滝下BP
16日  7時15分 BP〜奥千丈滝上〜12時15分 涸れ沢
     12時35分 登山道分岐〜12時40分 甲斐駒ケ岳山頂
     15時10分 七丈小屋テント場
17日  7時10分 下山開始〜13時 竹宇駒神社駐車場着
     15時半  帰途に着く 

遡行のあらまし 
●13日  佐藤さん、裕子さん、郡山の我が家に集合。11時 郡山発〜東北道〜北関東道〜関越道〜圏央道〜中央道・須玉IC(15時40分)より、一般道へ。道の駅「はくしゅう」と、隣接のスーパー「エブリ」にて食材の買い出し。竹宇駒神社の駐車場に向かう。皆で、神社の境内へ水をいただきに行く。お社で「無事、遡行出来ますよう」真摯に祈る。駐車場の傍らにエスパースを2張り設営。入山祝いに突入する。

●14日  6時半、予約しておいたタクシーに乗って、日向山林道へ向かう。尾白川の下降点へ向かう林道を終点まで歩く。男女のペア1組、男性3人組、それに私達の3パーテイが、黄蓮谷を目指しているようだ。入渓の準備をして、沢に入る。白い岩と、碧の水。男性3人組は、すぐに見えなくなった。男女のペアと私達は、のんびり遡行だ。入渓して間もなく、克行の左右のふくらはぎが、それぞれ攣った。佐藤さんが膝の不調を言いだす。暗雲が立ち込めた気分になる。鞍掛沢の出会いを過ぎて、ワイヤー滝を巻いて、しばらく進むと、花岩が右上に見える。その下は、噴水滝。つぎに獅子岩が見える。本谷出会を過ぎた頃から、遡行を中止して、五合目小屋跡に戻るのかな?「それはそれで構わない」と思いながら歩く。そんな私も、滑る苔の上に左足を置いて、ずり落ちたり、水流にふらついたり、木の枝に乗って、滑ったりと、危うい歩きです。千丈の滝を右岸より巻く。巻き終えて沢に下りると、先行していた男女のペア組が、左岸より下りて来た。左岸の巻きは苦労したそうだ。五丈沢を確認して、次の滝を左岸から巻く途中の樹林の中に良い感じの焚火跡があり、今日は、ここまでとする。ここなら、明日、撤退するとしても、すぐに五合目小屋の登山道へ戻れる。H1700mくらいかな・・・。タープを張り、焚火の準備。沢の衣類をすすいで、ロープに干す。のんびり、まったりした時を過ごす。明日の事は、明日の朝の皆の体調次第だ。19時過ぎに就寝。月明かりの中、木々のシルエットが浮かび上がり、不思議な空間だった。

●15日  BPの下の方に雲海が広がり、八ヶ岳の姿がぼんやりと見える。今日も青空が冴えている。佐藤さんの膝の痛みは、大丈夫そう。克行も、登る気満々。準備をして沢に入る。すぐに坊主滝。ここまでに狭いけれど、ビバーク地が2か所あった。坊主滝の巻きの途中にも、素敵なテラスがあった。坊主滝は、巻き過ぎないように注意しながら巻いて、落ち口に下りる。二股を右へ。
裕子さんは、怖い~怖い〜と言いながら、ぐんぐん登って行く。私は、お助けロープを何度も出してもらった。斜度のある河原状を進み、多分奥千丈滝に入った。H2000mくらいから、雪渓が出て来た。H2145m地点で休憩。谷のあちらこちらに雪渓が、残っている。佐藤さんが、バイルをホールドにして登った滝。ここから少し登った所で14時頃、急に黒雲が広がり、雷の音が聞こえて来た。雨粒(雹)が落ちて来た。急いで雨具を着たが、随分濡れてしまった。大きな雪渓の下に回り込み、雨宿り。雨の勢いが強い。広い花崗岩のスラブの中なので、増水したら、動けなくなる。佐藤さんの指示で、巻きの途中で通過して来たBPに撤退する。H2400mあたりの所だ。雨の中、タープを張り、シートを敷いて乾いた衣類に着替える。15時頃になると、雨雲が通り過ぎて、明るくなった。濡れた木を集めて、なんとか火を熾す。焚火を囲み、ホッとしたひと時。タープの下は、岩があってまっすぐ横になれなかったが、8時頃には眠った。

●16日  青空の下、雲海と八ヶ岳の姿を眺めながら、スラブ登りと、樹林の中の巻き道をせっせと登る。佐藤さんが巻きに飽きて来て、沢に下りて、ロープを出す。ロープを出しての滝登りは、やはり、時間がかかる。ガスがかかってきて、上の方が見えない。ルーファイが難しくなる。涸れ沢になり、H2900mあたりで、休憩。踏み跡をたどると、人の声が聞こえる。北沢峠と甲斐駒山頂と竹宇駒神社の分岐の標識がある所に飛び出した。12時40分、甲斐駒山頂に着いた。残念な事にガスがかかり、まわりの景色を見る事が出来なかった。写真を撮り、七丈小屋にビールがあるかどうか、心配しながらテント場へ下山した。下山途中も、雨がぱらつき、雨具を着たり脱いだりと、忙しかった。タープを張り終えて、一息ついた頃、また、雨が降って来た。雨は、1時間位で、止む。七丈小屋で冷えたビールを購入。乾杯、乾杯。黄蓮谷の印象は、今までの沢登りとは、全然違う感じだった。でっかい沢でした。沢ではなく、谷ですね。沢登りではなく、谷から山頂を目指す「谷登り」だった。
周りのテントの方達と歓談しながら、夜が更けた。

●17日  5時、起床。食事をして、撤収準備。7時10分、下山開始。
鳳凰三山や富士山の姿が、望遠出来る。佐藤さんの膝が痛みだしているので、無理のないように静かにゆっくり下る。私達も、筋肉痛があり、パッパと下れない。13時にやっと下山口に着く。6時間近くかかった。2010年にこの尾根を下った時は、4時間半で下っているので、私達のヨレヨレ度がよく分かる。川遊びの家族連れがたくさん来ていて、賑やかな竹宇駒神社に戻り、お社に「無事に遡行出来て、有難うございました」と、お礼をする。「尾白の湯」にて、汗を流し、帰途に着いた。

私にとって、こんな大きな沢登りは、最初で最後になると思う。
同行して下さった仲間に感謝。なんとか、仲間に着いて歩けた事に感謝。
応援してくれた家族に感謝。甲斐駒に感謝。そんな気持ちで一杯だった。


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