★0821-25「ハシゴとダブルストック」
▲燕岳〜槍ヶ岳 2002










★0821-25「ハシゴとダブルストック」燕岳〜槍ヶ岳2002
 燕岳から槍ヶ岳への「表銀座コース」はさすがに(特別な技術を求められない)日本有数の縦走コースだと思います。ここにある写真は2泊目の西岳ヒュッテからいよいよ槍ヶ岳山頂へと向かう切り立った岩稜でのことでした。槍ヶ岳の穂先へと登る時には大きなハシゴをいくつか登らさせられことで「だれにでも登れる槍ヶ岳」になっていますが、その槍の穂に近づきつつあるというところにも長い階段がありました。
 登山の常識ではストックなどをもっている人は、そこでそれをザックなどにしまうなどして、邪魔にならないようにするのですが、私はそこでストックをきちんと持って、ハシゴを下ることを要求しました。近くにいた登山者の方からはお叱りを受けましたが、わたしは断固として「不要なストックをさばきながら下る」ということを要求したのです。
 ストックのストラップを手首にかけたまま、両手を使ってハシゴを下るというのは、もちろんストックが邪魔になります。ピッケルならザックと背中のあいだに差して両手を自由にする、などが常識でしょう。
 しかし私は、参加メンバーの皆さん(初対面ではありません、もちろん)のこの高度感、ハシゴのこの危うさ、での「安全度」を見ておきたいと思ったのです。(居合わせた登山者の方にはもうしわけありません、でしたが)
 ハシゴのトップのところで裏返って(腹を岩に向けて)ハシゴの最上部にきちんと立ちます。そのとき左右の手首にストックがぶら下がっていますから、それがハシゴに絡まないように注意しながら、一段、一段、下ってもらう……だけなのです。
 私は下から見上げているので、細部はよくみえません。そこで、その人の(邪魔な)ストックのさばき具合を見ていくのです。ゆっくりと、一段、一段、下がっているあいだは、たぶん、問題は起きません。そのリズムに狂いが生じたら、まずは、いちばんやっかいなストックさばきに混乱が見えるのではないかと思うのです。そうしたらとりあえず「ストップ!」と命じたいのです。
 そこで人が落ちるかどうかではなく、心理的な不安が見えた初期段階で、一度立ち直ってもらえれば、こちらが安心なのです。そのこちらの安心のために、ややこしいことを命じて「恐怖心」を測っておきたいと思うのです。私は「危険」よりも前に現れる「恐怖心」のほうがずっと怖いのです。
▲写真106点