「発見写真旅」のいま

★「地平線通信」2023.3.20 529号



 私が「COVID-19」の影響を直接受けたのは2020年の4月からでした。4月から始まる2020年度〜22年度の丸3年間、私の登山講習会は(規制のかかった時期を厳密に排除したので)72回の実施となりました。参加者の中には30年近いお付き合いの方がまだ4名以上いらっしゃって、いまや「初歩の山歩き」が「人生終盤の山歩き」となって、こちらが先に負けるわけにはいかない状況でした。私としては最大の前提条件としてきた「月イチの山歩き」だけは死守したいと考えていたのですが……。
 カメラマン志望だった私が原稿を書かせてもらう面白さや、編集というドタバタの魅力に引き込まれたのは、向後元彦さんの「あむかす」運動や、宮本千晴さんの月刊『あるくみるきく』でいろいろなチャレンジをさせてもらえたからでした。たとえば各雑誌編集部にお願いしてコピーさせてもらった「旅の記事ファイリング」では『資料目録=アフリカ』(500部)。さらには『あむかす・旅のメモシリーズ』を制作・販売。最終巻となった89冊目の『おばんひとり旅 4年半で50カ国 1981.9〜1987.4』は、地平線会議の方ならご存じの、金井重さんのレポートです。
 それは、「手書き」だから編集者の校正作業不要、400字×50枚以上という量は「特定少数」の仲間に届けたい内容として信頼できる、50ページ以上の「書籍」にすれば国会図書館に永久保存される、というものでした。また旅から帰った人のスライド映写会(可能な限り全部の写真を撮影順に、エンドレスで見る会)もやりましたね。その基本線は地平線会議に引き継がれているのだと思います。
 そういう体験のおかげで私は旅の写真や風景写真を中心とした出版物に写真編集者として加わるようになって「膨大な写真を見る」という仕事がけっこう自分に合っていると知るのです。
 そして2001年、大学写真部の同期で毎日新聞写真部長からビジュアル写真集の編集長となっていた平嶋彰彦さんが「宮本常一先生の写真をきちんと見てみたい」ということから始まったのが、2005年に毎日新聞社から刊行された『宮本常一 写真・日記集成』(全2巻・別巻1、60,000円)でした。古い友人の中村鐵太郎さん(詩人)が先生の手帳にかなりしっかりと書かれている行動記録を全文データ化してくれたおかげで、10万点とされるモノクロ写真の多くがその画像の「5W1H」への窓口をひらいてくれたのです。
 至高の「傑作」写真や、人類の探究心を支える「記録」とは別に、私は「撮ってしまった写真に責任をもつ」という撮影者自身の「発見」写真があると考えるのです。平嶋彰彦さんは「失敗にこだわらないカメラマンは伸びない」といっていましたが、その「撮ってしまった」ことへのこだわりから始まる「発見」が私好みでしたから、できればそれが「フォトエッセイ」へと進化できればうれしいと思ったのです。
 いま、写真の保存と公開を考えるとき、ウェブ(クモの巣状)世界では、巨大なファイリング空間と、高機能の検索ロボットを簡単かつ安価に利用することができます。それに対して、いわゆるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)で「発表」の場は広がりました(私ももちろん試みました)が、フェイスブックも、ツイッター、インスタグラムもたかだか1,000点レベルの写真保存量から先が怪しくなってしまうのです。
 また、ある企業のホームページの立ち上げに参加したことがありますが、パソコンでもウインドウズとマックで表示誤差が生じたり、スマホの小さな画面にも対応しなければならず、小さな苦労が次々に出てきました。そのことをド素人が回避する最善の方法は、印刷デザインで写真を「右なりゆき」などと指定した方法が合理的だと考えたのです。つまり文字サイズを若者向きにしようが、年寄り向きにしようが、与えられた画面幅で改行されます。写真などの画像を(私の場合は)「長辺800px」とすると、それがこちらの希望する画面幅の目安となるのです。いくつかの専門用語(HTML)は使うものの、半世紀前のワープロ文書と完全に同じ感覚でいいのです。ぜひ一度ごらんいただきたいと思います。(「山旅図鑑」あるいは「伊藤幸司」で検索できます)
 蛇足になりますが、写真アルバムの1ページを、ぜひ一度、セブンイレブンにある富士フイルムのコピー機(旧ゼロックス)のB4サイズ画面でスキャン(ただし「300dpi」で)してみてください。そのスキャン画像の「コピー」から写真を1枚切り出して、「L判」「はがき判」などを写真店でプリントしてみてください。あるいは未整理でバラバラの写真をB4判画面にずらりと並べてスキャンしてしまえば、捨てられます。スキャンは1回50円です。「300dpi」が重要です。



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