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【撮影】10時37分=伊藤 幸司=015
これは10時40分始発の「上野村ふれあい館」行きバス。日本中央バスが運行する「奥多野線」で、神流川(かんながわ)ぞいの道を上流にむかって進み、終点まではほぼ3時間かかるという長距離バスです。私たちは手前1/3ほどの神流湖の湖畔「活用センター入口」で下車します。
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【撮影】11時56分=伊藤 幸司=025
「活用センター入口」バス停には○の中に桜の絵があって、オリジナル画像で見てみると小さく「冬桜」と書かれています。……ということは、たぶん、このバス停だけになのか、この一帯の複数のバス停にか、その「冬桜」の絵を入れているのでしょうね。
時刻表の下にはこの全行程の略図があり、バスの写真もあって、ガイドブックの1ページという感じの情報量。「藤岡市」という地名は四角い穴をあけて向こう側にどこかから持ってきた「藤岡市」を貼り付けたという感じです。2006年以前はここに「鬼石町(おにしまち)」という文字が書かれていたのでしょう。ウィキペディアによると鬼石町は1889年(明22)の市町村制で誕生し、周囲の町村を合併して人口7,000人に。三波石渓谷や冬桜が有名であり、町内には神流湖がある、とのこと。
さらに鉄道欄によると
———町内に鉄道路線は存在しない。かつては緑野馬車鉄道が新町駅と当町を結んでいた。また、多野鉄道が新町駅と当町との間に鉄道敷設免許を取得していたが実現する事はなかった。———
でも、この「活用センター」というのがナニモノかというと、バス停から神流湖畔に下ったところに「自然活用管理センター」というのがあるらしいのです。
ネット上で探してみると「自然活用管理センターやどや」というのが出てきました。「藤岡市のその他の宿泊施設」であり、「民宿・やどやの運営を手掛ける会社」の運営となっています。
「藤岡市自然活用管理センターやどや」というサイトを見ると,
1泊6,800円からの宿泊で、宴会やら研修、バーベキュー、法事にも、……という湖畔の宿みたいですね。
この施設の担当は藤岡市役所・鬼石総合支所の「にぎわい観光課」産業観光係の担当で、2022年5月に行われた「指定管理業務運営状況評価表」の「総合評価(改善に向けた取組及び今後の方針等)」によると
——— 令和3年度の藤岡市自然活用管理センターの運営は、ほとんど機能していない状況であった。新型コロナウイルス感染症の影響で、緊急事態宣言中は休館。また、それ以外の期間でも新型コロナウイルスの影響により、多数の予約キャンセルがあった関係で営業は102日間のみと厳しいものであった。利用がなくても施設の維持管理は行う必要があり、除草作業や清掃、浄化槽、ボイラー等の設備は業者委託することで行った。また、感染予防のため、テーブル、イスの間隔を広くしたり、パーテイションを設置するなどして感染予防に努めている。学習塾やサッカークラブからの申し込みもあったが、キャンセルが発生した。パート職員3名は、体験学習館の業務や辛みそづくりを行ってもらい解雇せずに対応した。新型コロナ感染症が収束後には、神流湖アカデミーや野外活動センターとの連携を図るとともに、体験学習館と連携を実施する。———
「活用センター」というのは、とりえずそんな感じの施設のようです。
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【撮影】11時57分=伊藤 幸司=030
活用センター入口バス停からすこし逆戻ります。ひとつ手前の保美濃山(ほみのやま)バス停との中間あたりから正面の山肌を這い上がっていく林道が分かれます。正面に見えている高まりの左に国土地理院の地形図では「保美濃山」という名が置かれていますが、ヤフーの地図だと、正面の高まりのあちこちに「保美濃山」を散りばめてあります。
これは山の名前ではなく「地区名」で、古い村名が、合併によって大字(おおあざ)となったいわば最後の村名というべきものです。ウィキペディアには「保美濃山」があって、かなり詳しい歴史解説となっていますが「保美濃山」という山があったかどうかについては触れられていません。
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【撮影】11時59分=伊藤 幸司=035
これが季節の指標となるモミジの葉色です。桜山の紅葉は間違いない、と一安心。
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【撮影】12時03分=伊藤 幸司=041
バス道から左に折れて脇道に入ったのですが、グーグル・マップで見ると「御荷鉾(みかぼ)スーパー林道」という文字が数珠つなぎ書かれていて、驚きます。ヤフーの地図だと名前がどこにもありませんので、本当に「スーパー林道」なのかどうかはわかりません。
どうもこれは「御荷鉾スーパー林道」へと上がれる支線ということのようです。でも御荷鉾スーパー林道はなんと「西上州の絶景林道」だそうで
バイク系のサイトで見るとすごい道なんですね。
———東御荷鉾山/西御荷鉾山/オドケ山の3峰を主峰として、多くの峰を従える御荷鉾山連山の麓、群馬県藤岡市から南甘楽郡南牧村勧能までを繋ぐ延長67.1kmと関東屈指の長さを誇る「御荷鉾スーパー林道」(昭和58年開通)。現在は20km弱のダートを残すのみだが、未だに多くのオフ車乗りに愛されるプラチナルートである。———
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【撮影】12時06分=伊藤 幸司=045
奥に下久保ダムがあって、手前の水面が神流(かんな)湖です。たぶん、写真右端の湖岸と思われる場所に白い屋根がありますが、あれが「自然活用管理センターやどや」だと思います。
1973年に竣工した下久保ダムによって縄文時代の保美濃山遺跡が湖底に沈んだそうですが、同時に旧保美濃山村の120戸が沈んだとウィキペディア(保美濃山)には書かれています。
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【撮影】12時07分=伊藤 幸司=046
何を撮ったかというと、ツバキだかサザンカだかの花も桜山山頂で見られる、という証拠としてですね。
でも私はむしろ、傍若無人に広がりつつあるクズのおどろおどろしい姿に目を引かれてしまったのです。その根っこからは葛餅や葛湯、葛切り、葛根湯などがとれるという身近かなイメージなのに、いったん猛威を振るうと「世界の侵略的外来種ワースト100」の悪玉植物のひとつとして、特に米国では「最悪」とされているとか。
ウィキペディアの
クズによると、
———かつての農村では田畑の周辺に育つクズのつるを作業用の材料に用いたため定期的に刈り取られていたが、刈り取りを行わない場合は短期間で低木林を覆い尽くすほど成長が早い。 伸び始めたばかりの樹木の枝に巻き付くと、それによって樹木の枝が曲がり、やがては枯死、さらに森林全体を衰退させてしまうこともあるため、林業ではクズなどを除去するつる切り作業は森林を健全に成長させる作業の一つとされている。地上部のつるを刈り取っても地下に根茎が残り、すぐにつるが再生する。———
と、まあ、地球に襲いかかってきたエイリアンにも見えてきます。
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【撮影】12時24分=伊藤 幸司=057
これは「県立おにし青少年野外活動センター」の体育館です。これまでいつもここでひと休みしてきましたが、だんだん廃墟という顔つきになってきましたね。このすぐ下に「1泊素泊まり680円」の和室やテントサイト、炊事棟、レストラン……など、しかも「通年」という宿泊研修施設があるとWeb 情報にはありますが、体育館だけが廃墟に向かっているんでしょうかね。ほんの5分も下れば実際に見られるはずですけれど、わかりません。
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【撮影】13時01分=伊藤 幸司=065
御荷鉾スーパー林道がどうなったかわかりませんが、県立おにし青少年野外活動センターを過ぎると、ここで初めて、まちがいなく関東ふれあいの道を選び取ったということがわかりました。倒れた支柱から跳んだ案内板に「関東ふれあいの道 桜山 5.7km」とありました。
正式いうと「群馬県 コース34 桜山のみち」で私たちが降りたバス停の近くの御荷鉾スーパー林道分岐から、桜山山頂までの7.8kmで、それを往復しなさいという15.6kmのコースです。正式なガイドマップには「標準歩行時間 行き3時間00分、帰り2時間30分」となっています。
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【撮影】13時08分=伊藤 幸司=079
いよいよ、林道から離れます。この分岐手前にあった標識によると、ここは譲原森林整備区域といって、平成26年度に「ぐんま緑の県民基金水源地域等の森林整備事業(条件不利地森林整備事業)」で20.0 ha の間伐が行われたものだそうです。キャッチフレーズとして「ぐんま緑の県民税 〜みんなの森をみんなで守ろう〜」とありました。平成26年は2014年ですからこれは間伐後10年目の森ということですね。
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【撮影】13時12分=伊藤 幸司=084
とりあえず、やさしくて、たのしい樹林の道です。ある意味、最高の未舗装路です。足元の小石が小さいので「石車に乗る」という危険も少なく、落ち葉が地面を隠して不安、ということもありません。ほどよい下りが背中を押してくれて、自然にからだが前に進んでいくという感じ、最高の道です。ストックは使う必要がありませんが、動きは止めていません。突発的な「何か」に即応できる体勢なので、気持ちにはさらに余裕が加わります。
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【撮影】13時16分=伊藤 幸司=088
こういう場面では、リーダーとしての私はほんとうは列の前に出ているか、前方の様子が見えて、いざというときには、たとえば「ストップ!」という声がかけられるところにいなければなりません。そういう意味で、最後尾にいてのんびりカメラをカメラを構えたりしていてはいけないのです。でも、もう5年あまり、私は最後尾からついていくだけです。なにしろ私にとって初めての道ではないし、参加したみなさんだってたまに初めての人がいるくらいで、2度め、3度目という人が何人もいたりします。しかも10分交代のリーダー制で全員が(いくぶんかでも)リーダー的な目をもっていますから、周りの人のことも考えて、安全ということも考えて(くださって)いるように思います。だから先頭からなんらかの信号がこなければ、あせって前にでなくてもいいのです。なにせ10年、20年というおつきあいのみなさんばかりですから。
……でも、道はあきらかに変化してきましたね。
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【撮影】13時17分=伊藤 幸司=091
わ〜っ、私にとっては最高のストックワークの写真です。この段差を見て、脇から先回りして、これを撮りたかったのです。わたしが四半世紀前に、女性の下りでの安全とスピードを確立したいと考えて当時2万円だったLEKIを標準装備としたときに「3歩先にストックを突いて、深い前傾姿勢をとって、真下に1歩目、2歩目は中央、そこからストックをまた3歩先に突いて……」という中心的な技を強調したときの理想像です。そのおかげで糸の会の女性は登りはふつうのシニア登山隊ですが、下りではスピードが「2ランク」上の「ベテラン登山者」になります。私はスピードはあまり求めていませんが、安定したスピードで、事故を起こさないということがリーダーとして、全体の安全性をどれほど高めてくれたことか。残念ながらダブルストックの本当の価値を知らないリーダーたちが多いのに驚きます。
四半世紀前、LEKIはほとんどバラして1本売りされていました。地方の山に登ると、スキーストック1本で、深くえぐれたぬかるみの登山道の上部斜面をヒラヒラと器用にトラバースしていくベテランが多かったと思います。その人たちにわが女性軍(都会的なミドルエイジでしたね、みなさん)は「4本足にはなりたくないなあ」などとからかわれたものです。
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【撮影】13時18分=伊藤 幸司=094
一時期、ストックを1本にする体験を繰り返したことがあります。たとえば北アルプスの岩稜では鎖が山側にありますから、ストックは必然的に谷側になります。そしてその谷側の手が長くなるメリットは驚くほどです。しかもまともなストックは高級な刃物が石突についていますから、岩にきっちり食い込みますし、岩の表面の小さなシワにもポイントをとることができます。谷側の手を無駄にすることがなくなります。
ここでも谷側にストックを置くことで、心の安定が高まります。まっすぐ立てるだけで足元が道の傾斜に振られる危険も小さくなります。
……で、ストックを1本にしたらどうなったかというと、みなさん、ダブルストックも利き手で8割ぐらいの、1本杖歩行に近い人が多かったのです。ダブルストックを左右均等に使えることで安全性は飛躍するのに……。そのレベルでの私の指導はなかなか満点を狙うまでにいきませんでした。利き腕でないほうの役割が2割だとしても、心理的な不安をとる価値はかなりあると思います。
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【撮影】13時26分=伊藤 幸司=103
私がダブルストックを標準装備としたことで得たものは、みなさんそれぞれの安全性だけでなく、リーダーとしてのわたしの安全管理に大きく寄与してくれました。ストックはときに邪魔になります。鎖場やハシゴなどではそれが最大値になります。ですからわたしはストックをつけたままにしてもらいます。周囲で見ている人に怒られたりしますが、じつはメンバーの個々の動きを見るときに、邪魔なストックのさばき方を見ていると、その人の心理状態がよく見えるのです。とくに恐怖心が見えたら、集中的にケアします。
あまり危険を感じさせないこの道でも、ストックの使い方を見ていると、この道が谷側にいくぶん傾いていることと、路面がずれやすいことが心理的に影響しているかどうか、見えることがあるかもしれないと思うのです。できるだけそれを見逃さないようにするのです。
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【撮影】13時40分=伊藤 幸司=120
前方を見てみると歩いて下れない人、ですね。御年8?歳の創設期会員です。最近下りで安全確保のために腰を下ろすケースが増えてきました。ご本人は自分の能力を超えない範囲で山歩きを続けたいと考えて、参加する山を選んでいるのです……けれど。
「ハイキング」なら歩く部分は基本的に「整備されたもの」ですが、登山道では基準がちょっと違います。車の道のガードレールのように事故が起きたらあわてて整備するというような後手の整備でも「あるとありがたい」と考えるべきでしょう。別の言い方をすれば、引き返すことも選択肢の中にある道となります。ここはハイキングルートとしての「関東ふれあいの道」なのですが、長距離自然歩道の先駆けとなった東海自然歩道でも見られるように、ハイキングルートと登山道を接続したいわばハイブリッド型なので、全線ルンルン気分で歩けるとはかぎりません。
実際、この道は(命に関わるというレベルでの)危険な部分はほとんどありませんが、ここでもみられるように、斜面を削って作った道が、ところどころで侵食されて斜面に戻りつつあります。過去にその崩壊を食い止めようとして土留めの板を加えたりした部分は(そこがいちばん侵食の激しかった部分でしょうから)他に先がけてさらに補強部分まで破壊されたりしていました。
関東ふれあいの道は環境省の長距離自然歩道構想に基づいて1989年(平成元年)に全線開通したもので、首都圏の1都6県をぐるぐるまわる全160コース=約1,800km(ただし134kmは東北自然歩道と接続するために2007〜9年に増設)となっています。たぶんその2007〜9年ごろではないかと思いますが、東海自然歩道やこの首都圏自然歩道(関東ふれあいの道)に大規模な保全工事の手が入ったように思います。現在使用中の道標類はおおかたそのころのリニューアルではないかと想像しています。
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【撮影】13時41分=伊藤 幸司=122
前の写真の1分後です。この道はよく見ればまだまだ「危険」な領域には踏み込んでいません。私自身は70歳を過ぎてから足元がおぼつかない気配があって、家の中でも数センチの段差に引っかかる気配を感じて、あわてて「足と目」の判断レベルの調整を試みました。脚力が落ちたから家の中で転ぶというのが一般論ですが、畳の縁につまづく程度のことが脚力の衰えなどと考えるのは「無能なアタマ」の責任回避です。目で見た情報をもとに足をコントロールするのがアタマの役目ですから、データ処理の際の足への命令を修正しなかればいけないところをサボっているからです……と私は考えて段差情報の精度を上げたのです。
この道でも、ルートファインディングというべき目の精度を上げれば、前の写真の段差より、少し手前のこの段差のほうが小さく、私が立っている一段下がった元々のルートからだとほぼ段差なしだとわかります。体力・脚力の衰えはやむを得ないことですが、目と頭で補える部分も大きいと考えるべきでしょう。
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【撮影】13時42分=伊藤 幸司=126
すばらしい道になりました。イチョウの巨木があるんですね、斜面の上に。冬の低山の最高の贅沢は、ゴミ扱いされる都会の落ち葉とは違って、この季節の主役として、フカフカに積もって私たちを迎えてくれているというところです。路面が見えないので嫌だという人もいますが、蹴散らしながら歩いたり、慎重に真上から靴底を押し当てるように歩いたりする判断も、目と頭のゲームとして楽しいじゃないですか。しくじったら命が危ない、というような場面でもやるかどうかも頭の判断ですけれどね。
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【撮影】13時43分=伊藤 幸司=129
この写真には、このルートが斜面の侵食やら崩壊の危機に直面しているといいうことがわかります。土留めの板がありますが、いずれもちこたえられなくなるんでしょうね。でも、ドサッと崩れたとしても、新しい踏み跡道ができる程度の斜面ですよね。私が次に来るときにはどんなふうになっているでしょうかね。
なお、この写真は足もとの記録のために撮ったのではありません。前方に人工的な空間が見えたので、とりあえずシャッターを押しておきました。
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【撮影】13時44分=伊藤 幸司=130
見上げると、あの山。桜山にまちがいありません。
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【撮影】13時45分=伊藤 幸司=133
集落に出てしまいましたね。この道に入ったのが13時08分でしたから、40分弱のウォーキングでした。下ったところが三波川になります。
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【撮影】13時56分=伊藤 幸司=138
ここで塩沢橋を渡りました。じつは渡りたくなくて、いろいろ調べてみたのですが、以前たどって、三波川の河原で休憩したその道が完全に消えていました。(桜山の古い写真を見ていただけば、それがこのルートのハイライトのひとつだとわかります)
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【撮影】13時56分=伊藤 幸司=140
塩沢橋から見下ろした三波川。じつは1996年に最初に桜山を目指したときには、関東ふれあいの道・群馬県コース1「三波石峡のみち」から歩き始めてこのコース34「桜山のみち」につなげたのですが、じつはこの三波川を渡ったところで時間切れになりました。以後「三波石峡のみち」は歩いていません。どうなっていることか。
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【撮影】13時57分=伊藤 幸司=143
この赤はなかなか、でした。じつはなんだかわからずに、グーグル・レンズで調べてみたらあっさり「ナンテン」と出てきました。ほかの候補がなかったので、たぶんナンテンなんでしょう。葉っぱも調べてみましたが、セーフみたいですね。ともかく「赤み」が印象的でした。
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【撮影】13時58分=伊藤 幸司=145
「写真アルバム」のほうにはルート上の標識類はできるだけ全部のせて、撮影時刻とその道標類でルートをおおよそ地図上で頼れるようにしています。ここでこの標識の写真を載せたのは、このルートがこのバス通り(群馬県道177号会場鬼石線……ちなみにこの「会場」の読み方はわかりませんが、藤岡市西端部にあって「名無村」の先になります)で前半が終了して、これから桜山への「登山」になります。ちなみにバス停には「スクールバス停留所」とありますから、路線バスはない、ということのようです。
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【撮影】14時01分=伊藤 幸司=148
バス通りのきわに、なかなか立派なお地蔵さんが立っていました。手に持っているのはなんでしょうかね、アップの写真を見てもわかりません。……服装などからすると地蔵尊ではないかも。……わかりません。
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【撮影】14時01分=伊藤 幸司=151
なんと桜並木がありました。ホッ! ですね。12月1日に桜山まつりがあったというので、まずは大丈夫だろうと思いましたし、すでに桜の花は見ていました。が、この桜は冬と春の二度咲きで、しかも花が小さめですから、いわば貧相覚悟でした。でもこれなら十分に「桜並木」と言えますよね。
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【撮影】14時02分=伊藤 幸司=155
桜の斜面を冬桜で覆いつくそうという試みでしょうが、見る角度によってずいぶん違うんですね。もともと、このチラチラ咲きというイメージが桜山の冬桜にはありますから。でも最近は春の桜に花見客を呼び込もうという動きもあるみたいです。この桜の斜面は、春にはどんなふうになるのでしょうか。
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【撮影】14時04分=伊藤 幸司=158
県道沿いの立派な家、ということになりますね。ツバキだか、サザンカだかの生け垣というのが私には新鮮に思えました。
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【撮影】14時06分=伊藤 幸司=160
こちらはサザンカと柿の実。花びらがバラバラに落ちていたらサザンカだと聞いています。
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【撮影】14時11分=伊藤 幸司=167
じつは桜山への道はちょっと問題あり、なのです。この道は県道から金丸という集落のところ(久々沢入口バス停があった?)で桜山から下ってくる自動車道路に入ります。この道は以前、桜山の「桜まつり」(桜山まつりではありません)がテレビの季節ネタでよく見られた頃には、下りの一方通行とされていました。ですから車道を登っていけば桜山の山頂に至るのですが、標高約300mの久々沢集落のところから登山道を登ると車に煩わされることなく標高591mの山頂に至ります。
その「関東ふれあいの道」の公式マップでははっきりしない正規ルートが、県道から登り始めてすぐ、じつはこの風景の正面に見える、左手に入る道標にしたがって歩道に入ると、久々沢集落のすぐ下まで、車道を歩けずに出られるのです。
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【撮影】14時12分=伊藤 幸司=171
これが標高約200mのところから左手に導いてくれる道標です。塩沢橋から1.1km、桜山山頂まで2.8kmとなっています。標高約300mの久々沢集落へ抜ける道なのです。しばらく先で、地図にないルートが登場します。
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【撮影】14時16分=伊藤 幸司=176
登りの道筋に民家が数軒あって、この車庫を覚えている人がいました。雨に降られて、あわててその屋根の下に飛び込んで雨支度をしたんですね。
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【撮影】14時17分=伊藤 幸司=181
数軒の民家が終わって、これが最上部の神社。ここからなかなか魅力的な登山ルートが始まります。
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【撮影】14時22分=伊藤 幸司=184
私好みの落ち葉道になりました。ところがコーチたる私のだらしないところなのですが「葉を見て木を知る」というところは全然ないのです。世田谷区の樹木ガイドになったKさんにいろいろ教わったりもしましたが、だめですね。
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【撮影】14時24分=伊藤 幸司=189
「久々沢経由桜山公園・階段の道1.3km」というのが地形図に描かれている登山ルートです。ここで突然現れたのが「桜山公園・あと1.5km(一般向き)」でした。標高約300mのところから等高線にそいながらゆるゆると西に向かい、標高約400mあたりで桜山の真南に至ると、そこから一気に登るかっこうになるのです。
「階段の道1.3km」と「あと1.5km(一般向き)」とを見比べたら、だれだって等高線沿いの道を選びますよね。
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【撮影】14時24分=伊藤 幸司=190
選んだ道はとりあえずこんなふうに始まりました。
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【撮影】14時43分=伊藤 幸司=197
こんな葉っぱがありました。色が抜けて品のいい赤みが加わたのでしょうか。グーグル・レンズで調べてみたら「ハナミズキ」と出ましたが、ヤマボウシにしてもちょっとちがう。なんですかね、突然、花びらみたいな葉っぱ。
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【撮影】14時48分=伊藤 幸司=202
小さい山なのに、深い森を抜けていくような道筋です。
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【撮影】14時48分=伊藤 幸司=203
山腹を回り始めてから30分が過ぎました。楽ですけれど、無駄に歩かされている気分にもなってきます。
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【撮影】14時54分=伊藤 幸司=210
道がちょっと荒れた感じになると、元気になるというのが糸の会の特徴かと思います。見ていてけっこう楽しそうですもんね。
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【撮影】14時55分=伊藤 幸司=213
シダも現れて、けっこう古い道のように思われます。なんで最初からこのルートにしなかったんですかね。
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【撮影】14時57分=伊藤 幸司=222
ここではっきりと、直登に切り替わりました。標高約400m、山頂まであと約200mの登りです。
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【撮影】15時04分=伊藤 幸司=233
地形図によればここが標高約500m。私たちが最初に歩いた車道をここで横断して、いよいよ最後の、桜山公園に入ります。
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【撮影】15時09分=伊藤 幸司=237
桜山公園は山頂部の標高差70〜80mを切り取ったような構造でした。まずはこれまでと同じような広葉樹林の道。落ち葉が惜しげもなく散り敷かれていました。
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【撮影】15時13分=伊藤 幸司=239
最初に登場したのはモミジでした。先に見たのは正直色気が少なかったので、これでちょっとホッとしたのを覚えています。
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【撮影】15時16分=伊藤 幸司=246
道筋はあいかわらずの落ち葉敷……と書いてみて、ちょっとその「落ち葉敷」というコトバでいいのか、ひかかかってしましました。さっそくグーグルで検索してみると「落ち葉敷」そのもので出てきたのは
GINZA田屋でした。
———落葉は、木が冬を越すために余分のものを取り除く、いわば自然のメカニズム。秋の梢から、はらはらと葉の舞い散る光景に“はかなさ”を覚え、情緒や美意識へと発展させてきた日本人。モミジ。カエデ。チドリノキ…。シルクのネクタイにやさしく広がる、紅葉&黄葉の落ち葉柄。季節限定の田屋オリジナルネクタイです。
———1万3200円のネクタイにはリアルな落ち葉模様が散りばめられていました。
すぐに「落葉敷紅葉散歩」というコトバも出てきました。
わたしたちのページという以上のことはわかりませんが、力作ぞろいの花の写真アルバムが蓄積されているようです。そこにあでやかな紅葉の落葉がずらりと並んでいます。
たとえば———日本では古い時代からカエデ属の落葉を、敷紅葉(しきもみじ)と美しい言葉で呼んできました。初冬の11月下旬京都嵯峨野小倉山山麓にある常寂光寺を花散歩していると、緑色の苔の上に、イロハモミジを始めカエデ属の落葉が黄色、オレンジ色、赤色、紅色に染まり敷き詰められていました(撮影11月下旬)。小倉百人一首が編纂された小倉山に近い常寂光寺、小倉二尊院付近の紅葉と苔の上に落ちたカエデの落葉は見事です。———
埼玉県のこの山の売りはまだ「冬桜」1本で、それにモミジやらツバキ、サザンカが加えられてきたところです。私流の語感では「落葉敷」でいいんでしょうね。
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【撮影】15時17分=伊藤 幸司=249
わが登山隊の列の前方から順々にカメラ(やスマホ)が向けられた紅葉です。ちょうど日が陰っていたのがラッキーなのかアンラッキーなのかわかりませんが、山咲さん、稲葉さんのスマホの写真と比べても同じような色味だったとわかります。もし夕陽が射してくれたら、どんな色になるのか? と思いました。
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【撮影】15時22分=伊藤 幸司=258
道はだんだん公園らしくなってきました。道筋に落ちた椿の花は、見たところ踏みつけられていませんね。
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【撮影】15時22分=伊藤 幸司=261
これはツバキ(ヤブツバキ)ですね。足元に落ちていた花が、ウィキペディアによれば———散るときは花弁と雄しべが一緒に落花する———ですからツバキなんでしょうが、じつは、どうも、そんなに甘くないようです。
ウィキペディアで
ツバキを見てみると、———ヤブツバキは園芸品種の母種でもあり、他家受粉で結実するため、また近縁のユキツバキなどと容易に交配するために花色・花形に変異が生じやすいことから、古くから選抜による品種改良が行われてきた。江戸時代には江戸の将軍や肥後、加賀などの大名、京都の公家などが園芸を好んだことから、庶民の間でも大いに流行し、江戸・上方(京都)・加賀・中京・肥後などの地域ごとに育成された品種が作られた。なお、「五色八重散椿」(ごしきやえちりつばき)のように、ヤブツバキ系でありながら花弁がバラバラに散る園芸品種もある。
17世紀に日本から西洋に伝来すると、冬にでも常緑で、日陰でも花を咲かせる性質が好まれ、大変な人気となり、西洋の美意識に基づいた豪華な花をつける品種が作られた。ヨーロッパ、イギリス、アメリカで愛好され、現在でも多くの品種が作出されている。———
そしてまあ、この写真ですけれどウィキペディアによればまるごと薬のざいりょうなんですね。———花を山茶花(さんちゃか)、葉を山茶葉(さんちゃよう)、果実を山茶子(さんちゃし)と称して薬用にする。花は天日乾燥して生薬にし、葉は随時採って生を用い、果実は圧搾して油を採る。葉のエキスが止血薬になる。———だって。
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【撮影】15時25分=伊藤 幸司=270
いよいよ、山頂への最後の登りが眼前に迫ってきました。県道から登り始めて1時間15分ほど。何もなかった単調な道ともいえますが「1時間ドラマ」としてはそれなりに色々あったとも思います。地味な日帰りの山でも何かあれば心が騒ぎますし、穏やかに進行すれば、からだに疲労感やら活力やら、が出入りして、時間が自分の周りを回り始めるような気持ちになります……私の場合は。
さて、でもこの日のイベントのフロアディレクターとしては、眼前に迫ってきた山頂という舞台に飛び出したとき、どれほどのサプライズが演出されることになるか、祈るような気持ちになってきました。
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【撮影】15時29分=伊藤 幸司=282
あきらかに最後の階段にさしかかりました。土留めの階段が、ここではまだそれほど侵食されてはいませんが、やはりとなりに踏み跡道ができています。手間と知恵を投入して造った階段が嫌われて、そのとなりの素朴な踏み跡が歩きやすい道になっているという日本の山の「技術力」がここでもザンネン!という感じです。技術的矛盾ですよね。
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【撮影】15時31分=伊藤 幸司=289
私はこのあたりの桜を心配していました。ウィキペディアの
桜山(群馬県)にこの山の歴史がかなりこまかく書かれています。
———
・古くは虚空蔵山と呼ばれた。
・1908年(明治41年)、日露戦争の戦勝記念として、三波川村村長飯塚志賀と村民が桜とカエデを山頂に植樹する。
・1916年(大正5年)頃より、植樹した桜の一部が冬に開花するようになる。
・1937年(昭和12年)、国の名勝及び天然記念物に指定。
・1947年(昭和22年)、上毛かるた「さ」の札に収録(三波石と共に名高い冬桜)。
・1973年(昭和48年)、山火事により冬桜の大半が消失。志賀の子、飯塚馨を中心とした三波川桜山保存会により、新井民志が保有していた冬桜の苗を用いた復興事業が始まる。
・1989年(平成元年)、県立桜山森林公園として整備される。
———
このあたりは老樹となっていて、しばらく前にはもう花を咲かせないのではないかと心配するような光景でした。だから私にとっては、これを見たときに「よかった!」という気持ちでした。メンバーの皆さんの目にどう映るかわかりませんが、桜山の冬桜の復活! という気分になりました。
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【撮影】15時32分=伊藤 幸司=291
これは、さて、枝にカイガラムシがべったりと貼りついた状態でしょうか。それでも花が咲いています。冬咲きとしては大きな花だと思われます。
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【撮影】15時33分=伊藤 幸司=295
私の速報写真は、原則的に前方しか撮りませんが、振り返ると桜はこんなふうに咲いていました。
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【撮影】15時35分=伊藤 幸司=302
桜の先には紅葉がありました。日差しがあったら、この風景はずいぶんちがったものになるでしょう。
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【撮影】15時37分=伊藤 幸司=315
山頂部にはみごとな冬桜。最近早咲きの河津桜があちこちで見られるようになりましたが、これは冬と春の二度咲きですから、これだけの満開感が見られれば大満足です。
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【撮影】15時39分=伊藤 幸司=326
白い花はサザンカ。私の理解ではツバキとほとんど同一だが、花弁が1枚ずつ落ちればサザンカ……という程度。
庭木図鑑・植木ペディアによると、写真1枚ごとに特徴が書かれています。
———
・原種は白い一重咲き 園芸種のイメージが強いものの、暖地に自生する
・新葉は赤味を帯びることが多い
・サザンカの葉はツバキよりも小さくて幅が狭い
・枝葉に白毛が生え、葉軸が赤黒いのが特徴
・ツバキと違って雄しべが筒状にならない
・秋から春まで様々な品種が咲き続ける
・絞り品種の「六歌仙(ろっかせん)」
・若い実は細かな毛に覆われる
・熟すにつれて赤く色付く
・熟すと自然に裂け、黒い種子がこぼれ落ちる
・童謡「たき火」でお馴染みのサザンカ
・円筒形や垣根が一般的だが・・・
・剪定に強く、様々な形に仕立てられる
・サザンカの幹
———

【撮影】15時39分=伊藤 幸司=329
ドウダンツツジの根本に、イロハモミジの葉が散り敷かれ、そこにサザンカの白い花弁が散っています。
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【撮影】15時39分=伊藤 幸司=330
サザンカの花はたしかに、ツバキと比べると雄しべの団結力が弱くて、花弁の1枚1枚に自由を保証する感じがします。赤いツバキを権威主義の象徴と見ると、最後の最後、ポロンと道に落ちる姿が象徴的……かも。
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【撮影】15時40分=伊藤 幸司=332
これはドウダンツツジですよね。目立たないけれど、桜と楓の足元で風景を整えるという役割をはたしているように思います。
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【撮影】15時40分=伊藤 幸司=333
サザンカの花が、ツバキよりふんわりとしたいい感じで、よくない? というふうに見え始めました。
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【撮影】15時40分=伊藤 幸司=335
これは紅・白・紅葉という常識的な冬景色です、かね。
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【撮影】15時44分=伊藤 幸司=341
山頂です。タクシーを呼んだので、少し下った駐車場のところへ30分後に、ということにしたら、みなさんぞろぞろと下って行きました。
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【撮影】15時49分=伊藤 幸司=342
なかなか元気なサザンカ・シスターズでしょうか。冬桜を圧倒する勢いですね。この時間、山頂部にいるのは私たちだけみたいですけれど。
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【撮影】15時50分=伊藤 幸司=344
サザンカの花ですね。だんだんツバキのシャキッとした花より好きになってきたみたい。
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【撮影】15時50分=伊藤 幸司=345
サザンカの足元風景……です。
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【撮影】15時50分=伊藤 幸司=346
山頂ではサザンカに目を奪われてしましましたが、冬桜も大きくきちんと咲いていました。6日前の12月1日が「桜山まつり」だったそうなので、そのときが「満開」状態だったのかもしれません。
祭の日というサイトの
桜山まつり(群馬県藤岡市)には(樹種の説明にいささか?がつきますが)次のように書かれています。
———
桜山まつりは、毎年12月1日に行われるイベントです。
12月なのに桜のお花見が出来る!
桜山公園は、冬桜の名所となっています。(約7,000本)
冬桜とは別名を「小葉桜(こばざくら)」ともいい、ヤマザクラとマメザクラの雑種とされています。
木自体も小ぶりで繊細になっており、葉はその別名の通り小さく、花は一重小輪、花の色は白から淡い紅色で、花の見頃は11月~12月と4月です。
紅葉と桜のコラボレーションも見ごたえたっぷりです。
歌手による歌謡ショーや、名物「とっちゃなげ汁」も配布されます。
———

【撮影】15時56分=伊藤 幸司=362
こう見ると、ツバキはシャキッとしていますね。
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【撮影】16時02分=伊藤 幸司=374
山頂部を15分ほど歩き回って、いよいよ下りにかかりました。するとこの風景。いかにも桜山という風景が広がっていました、
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【撮影】16時06分=伊藤 幸司=386
堂々たる桜並木ではありませんか。私たちは桜山へ、裏口から入って、表玄関へと出ようとしています。このあたりの桜は元気だな、と思いました。
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【撮影】16時07分=伊藤 幸司=388
なかなか素晴らしい花見ができた、という気持ちになりました。
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【撮影】16時07分=伊藤 幸司=390
若木ながら、なんとも立派な立ち姿ではありませんか。
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【撮影】16時07分=伊藤 幸司=392
これなどは、春に咲く花芽を残しているのだろうかという満開です。
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【撮影】16時10分=伊藤 幸司=397
標高500mあたりで渡った自動車道路が、ここまで登ってきました。駐車場まであと少しです。
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【撮影】17時50分=伊藤 幸司=398
私たちはタクシーで「おふろ Cafe 白寿の湯」へ直行しました。ここでは以前、ゆっくりさせていただいて、仲間の落語を聞いたりもしました。食事処は「寝かせ玄米と糀料理 俵や」の力作なんですが、コロナ禍で作り手の力量が保たれていたのかな? という疑問は残りました。
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【撮影】17時53分=伊藤 幸司=399
私は「海なし県で旨い鯖を食す 鯖ずくし御膳」というのを頼みました。近々、「海なし県」のこのあたりで鯖の養殖が始まるのだそうです。その前哨戦として「さば料理専門店・SABAR」の「とろ鯖」を使っているというので頼んでみましたが、コンセプトに追いつけない感じがしました。みなさんそれぞれ、ちょっとずつ「残念」でした。
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【撮影】19時03分=伊藤 幸司=404
19時09分の路線バスで本庄駅南口へ出る予定でした。前にもそうでしたが、バスは県道上里鬼石線ではなく、そこに出ようとする裏道からきて、朝日工業というこのあたりでは目立つ会社の正門近く(下渡良瀬朝日工業前バス停)に止まるのです。周囲が真っ暗なのに「脇道をぬける」みたいなことになるのです。以前もそうでしたが、途中のファミリーマートで聞いて、確認したほどです。
ベンチのあるそのバス停を覚えている人もいて、ホッとしてバスを待つ間、風もなく、澄み切った夜空にほぼ満月を見たのです。もうすこし早く晴れてくれれば、桜山山頂は絶景だったかもしれません。