【撮影】09時00分=秋田 守
今回の基本プランは千葉からのあずさ3号だったが、調べたら、最寄り駅を始発に乗れば、塩山駅に6分遅れで間に合うことが分かり、実行。さらに土曜なので週末お出かけパスが使える。適用範囲は大月までだが、乗り越し精算してもおとQの3割引より安い。ふふふ。この1ヵ月、始発で出発するのは3回目。さらに都心を迂回するべく武蔵野線経由。無事に到着した塩山駅前に武田信玄の像があった。久しぶりで糸の会先輩女史の皆様に再会。
【撮影】09時02分=秋田 守
塩山駅前に立つ甘草屋敷こと、旧高野家住宅。重要文化財。江戸時代、幕府の命により漢方薬の材料、甘草を栽培していたのでその名が付いたそうだ。元々は茅葺き、中央の2段の突き上げ屋根が特徴で、甲州屋敷の典型という。時間がなくて立ち寄れなかったが、毎年この時期には、享保雛など貴重なひな飾りのあれこれを展示しているようだ。秋には立派な軒下にころ柿をびっしりと吊すそうで、それも機会があれば一度見てみたいと思った。
【撮影】09時07分=秋田 守
駅を後にしばらく歩くと、家並みの間から富士山のてっぺんが顔を見せてくれた。さらにその先、お墓の向こうに今日登る塩ノ山が見えてきた。新緑の山というより丘ですね、これは。標高は553m、塩山駅が410m、すなわち本日は150mも登らない、ということ。塩ノ山なんて名前だから、山塩でも採れたのかと思ったら、四方の山、しほの山、というのが起源らしい。そうだよね、塩がもし採れていたなら、敵に塩を送るの故事が成立しないよね。
【撮影】09時16分=秋田 守
歩いているうちに、塩山温泉の温泉街に入っていた。一応、旅館が7軒あると地元、甲州市観光協会では説明している。こういうご時世なので、休業した宿があるかもしれないが。右手のお宿、元湯廣友館はちゃんと営業している風だった。玄関先には「塩山温泉元湯の地」という石柱も立っていた。信玄の隠し湯のひとつと書いてある説明もあったが、これは当てはまるのかどうかは不明としか言いようがない。ある意味、言ったモノ勝ちかも。
【撮影】09時18分=秋田 守
塩山温泉には公衆浴場がある。宏池荘という旅館がいわゆる立ち寄り湯をやっている。写真のおっちゃんふたりが座ってる奥が入り口。若井さんは入ったことがあるそうで、400円、浴槽は広くて地元の人たちが入りに来てる、と。後で調べたら、相当強力なぬるぬる系のお湯で、熱いお湯と冷たい温泉の2つの浴槽があるようです。これまた一度入りに来なくてはいけないなあ。それにしても、若井さん、温泉は相当数入り潰していますねえ。
【撮影】09時18分=秋田 守
公衆浴場から先へゆくと、道端にトウダイグサが生えていた。地味な色合いだけど、ちゃんと見てるからね。この植物は全体に毒があるそうで、茎などから出る白い液に触れると水疱ができるし、口にすれば下痢、腹痛、嘔吐、痙攣などが起きるそうだ。見た目とは違ってコワイねえ。その先、自然遊歩道入り口の看板に従って、温泉街から小道に入り、急な階段を登って、塩ノ山へ入った。そうそう糸の会ルール、10分先頭交代は休憩後から。
【撮影】09時26分=秋田 守
山の中は新緑で彩られ、気持ちのいい空間。松の木が多いが、赤松という看板。後で乗ったタクシーの運転手さんによれば、昔はマツタケも出たが、もう今は出ないらしい。あちこちにヤマツツジが咲いていたが、今シーズン、すでに1週間前、別の山歩きの会で、東武東上線小川町駅から仙元山へ登った時に早々とヤマツツジが咲いているのを見てびっくりしてしまっていたので、さほどの驚きはナシ。今日でもかなり早咲きとは思うのだけど。
【撮影】09時29分=秋田 守
塩ノ山で一番たくさん見かけた花はこちら。後で教えてもらったが、アオダモ。枝いっぱいに咲いていると、まるで雪が積もっているようだった。アオダモと聞いて、若井さんがすかさず、野球のバットに使う木だよねと言う。そうだ、それは聞いたことがあると思いだした。材質が堅く木目が美しい。最近はシンボルツリーの庭木として人気らしい。なぜアオという名前かというと、枝を切って水に漬けると青色の蛍光色に光るからとのこと。
【撮影】09時38分=秋田 守
事前のコーチの案内によれば、山頂までは1時間とあったが、30分ほどで553mの山頂に出た。富士山がはっきりよく見える。山頂にはまだまだたっぷりの雪。この角度からじっくり富士山山頂を見たことはなかったような気がする。左下には雪煙が立っていた。強風が吹いているに違いない。さすがに今、この時、あそこに登っている人はまずいないと思うのだが。昔、一度だけ日帰りで登ったことがあるが、もう二度と登ることはないだろうな。
【撮影】09時55分=秋田 守
塩山は甲府盆地の東の外れ。たった500mほどでも、高みから眺めれば、盆地らしい盆地のありようがよく分かる。四方をぐるりと山々に囲まれ、平らに開けた広い盆地が広がっている。そして南の山の壁の向こうに、富士山がアタマを出しているという構図になる。いい風景だ。JRの中央線は、東京方面から山間を抜けて甲府盆地の東端に出て、その縁を勝沼ぶどう郷駅から塩山駅にかけてゆるやかに盆地の底に向かって下っていくという訳だ。
【撮影】10時04分=秋田 守
塩ノ山山頂で、景色を楽しんだり、軽食を食べたり給水したりしていると、幼い子供を二人連れて若いお父さんが登ってきた。上の子は3歳か4歳ぐらいかな。偉いことにちゃんと自力で登ってきた。下の子はまだよちよち歩きを始めたばかり。1歳半ぐらいなか。お父さんに抱っこされてきた。会のおネエ様が近づいてあれこれ話しかけても、お兄ちゃんはしっかり相手をしてくれる。重ね重ね、いい子だ。この子達には向嶽寺脇の神社でも再会した。
【撮影】10時07分=秋田 守
山頂から見えたのは富士山だけではないぞ。南アルプスの高峰も見えるではないか。北岳の雄姿。さらに間ノ岳、農鳥岳から南の峰々も。ここからは、3776m、3193m、3190m、と日本の高い山ベストスリーが見えることになる。なかなかすごいじゃないか。やるじゃないか、塩ノ山。ちょっと見直してしまった。こっちはたった553mなんだけどね。北岳はこれまでに二度登ったが、花に惹かれてまた登ってもいいかなと思う。コロナ騒動収束後の話だが。
【撮影】10時39分=秋田 守
塩ノ山から下山して向かったのは、向嶽寺。大きなお寺で驚いた。本堂前に古くて立派な枝振りの松。濃い青色の袈裟を着た坊さんがこっちにやってきて、もうすぐエライ方がやってくる、そのためにきれいに掃き清めてあるので参道は歩かず、溝の格子蓋の上を歩いてくれと言う。どんなエライ様かと楽しみに待っていたら、若い坊さんが自分で車を運転してやってきて、拍子抜け。帰りは皆で掃き清めたという参道を思い切り歩いてやった。
【撮影】11時09分=秋田 守
恵林寺へ向かう前にトイレ休憩。近所のモモ畑でお仕事中の女性に話を聞いた。モモの花は咲き終わったが、いつもより1週間早い。4月12日に恵林寺で信玄公忌が行われるが、例年はその頃が満開なのだそう。満開のモモ畑も見たかったなあ。モモ畑が一面に広がるこのあたり、まさに桃源郷を体感できそうだ。事前に近くのワイナリーのHPで入手したイラストマップを頼りに歩いたのだが、途中、曲がる所が分からず、バス通りに出てしまった。
【撮影】11時18分=秋田 守
道端にはいろいろな野の花が咲いていた。こちらはムラサキサギゴケ。なかなかたくさん咲き群れていて美しかった。もっと青色が濃いキランソウも。今日はちゃんとしたマクロレンズを持参してないのであまり花は撮らなかった。この写真は、100均ショップで買ったマクロアダプターをiPhoneに装着して、躙り寄って撮った。どちらかと言えば雑草の類いだが、この日ほかに見た野の花は、ツタバウンラン、ホトケノザ、ヒメオドリコソウなど。
【撮影】11時37分=秋田 守
ブドウ棚の下に一面ホトケノザが咲いていた。どうでもいいけど、この辺のホトケノザは丈がめっちゃ高い。普段見てるのに比べたら、3倍か4倍くらいの背丈。こんなのウチの近所で見たことないなあ。草刈り機で刈っている方がいたが、やはりこれは肥にするために敢えて生やしているのかな。それにしてもブドウ畑は本当に多い。最近は、高く売れるシャインマスカットを栽培する畑が増えてると言うけど、安くなったらどうするのかな。
【撮影】11時56分=秋田 守
辿り着いた恵林寺。ここも大きな寺だこと。ちょっと横っちょから入っちゃったけど、山門からの参道も長くて立派。堂宇もたくさんあるし、寺域も広い。観光名所としても名が知られ、訪れる人も多いようだが、後で乗ったタクシーの運転手さんによれば、先ほど寄った向嶽寺は、寺本来の格式としては恵林寺より向嶽寺の方が高いとしているらしい。なるほど、そういうことがさっきの坊さんの態度にも表れている訳か。嫌だな、そういうの。
【撮影】12時12分=秋田 守
恵林寺を拝観する前に、門前の精進料理のお店、一休庵で昼ご飯となった。能舞台の席もあったが、靴を脱がなくてはならないのでパス。いくつかのテーブルに分かれて着席。窓の外に枝垂れ桜があり、まだ咲き残った花を見ることができたのは幸いだった。お能を観る時には、桜の下のあたりが客席となるのだろうか。左手には甘味処、信玄にちなんでか武者団子が名物。今日は休みだったが、近くの別の店はよもぎ団子が名物のようであった。
【撮影】12時18分=秋田 守
一休庵で食べたのは、甲州名物ほうとう。その前に、若井さんと中瓶ビール1本。つまみは天然タラノメの天ぷら。突き出しにはコンニャク辛煮。タラノメはスーパーで売ってる先っちょだけの軟弱栽培モノではなく、トゲトゲも生えてそうなでっかいサイズ。まずは塩で。うーん、いい香り。春を食ってる感じがたまらん。お出汁でも。やがて運ばれたほうとう。ちょっと上品な感じの仕立て。麺が美味しい。コーチは精進弁当をお召し上がり。
【撮影】12時58分=秋田 守
恵林寺拝観は500円。入り口に本日のご出勤、野良猫くん、たまに噛むことがあります(泣)、お気をつけください、と猫の似顔絵。ご本人、いや本猫は、昼寝中だった。本堂裏手の庭がすごかった。スケールの大きな庭。ああ、枝垂れ桜が散ってしまってる。あの花が一斉に咲いていたら、どれだけ贅沢な眺めになっていただろうか。惜しいなあ。平年並みの咲き方だったら、ちょうど見頃くらいだったろうに。ま、そしたら大混雑で、密必至だったか。
【撮影】13時03分=秋田 守
武田不動尊という不動明王像が一番の見物のようだったが、最近、修理の際にファイバースコープで調査がされて、新発見があったらしい。制作者と制作時期が判明したという。へえ。不動尊のモデルは武田信玄。甲州はどこへ行っても信玄が出てくる。不動尊が祀られているお堂へは、うぐいす張りの廊下を通っていくのだが、これがきいきいうるさいこと。そうでなければ、うぐいす張りにした甲斐もないのだろうが。いや参った、参った。
【撮影】13時05分=秋田 守
恵林寺本堂前に小さめのピンクの花を付けた大きな木が立っていた。花梨、と看板がかかっていた。ちょうど花盛り、そこへ花を食べるのだろうか、野鳥がたくさん来ている。ヒヨドリじゃないかと教えてもらったが、どうだろうか。調べると、花びらを食べるのではなく、花の蜜を吸いにやってきてるのだという。桜の花が散る時に1枚ずつではなく、花全体が丸ごと落ちてるのは、こうした野鳥たちが花の蜜を求めて突っついた結果らしい。
【撮影】14時02分=秋田 守
恵林寺からタクシーで移動して釈迦堂遺跡博物館へ。昨年6月にリニューアルオープンしたとのこと。中央自動車道工事中に発掘された縄文遺跡からの発掘物を展示しているが、中でも土偶は1000点以上出土して、三内丸山遺跡の詳細が分かるまでは日本一の出土数だったとか。これら土偶の顔が面白すぎる。しゃかちゃん、しゃっこちゃん、ですよ。これらは整った顔立ちだけど、もっとくしゃくしゃの個性的な顔もあれこれたくさんあった。
【撮影】14時14分=秋田 守
そして土器の見事な装飾。こうした紋様はこれまで火焔式とばかり思っていたが、これは水煙文と呼ばれる。ちょうど企画展が開催中だったが、刺激的。土器そのものも大型のものが非常に良い状態で出土しているし、紋様もきれいに残っている。考古学者の先生の中には、新潟あたりに多く出ている火焔式土器も、炎ではなく、水の紋様を模した、水煙文ではないかという説を言ってる方もいらっしゃるようで、今後論争が発展するなら面白い。
【撮影】14時18分=秋田 守
釈迦堂遺跡博物館の脇では、ハナモモが花盛り。ピンクに白、紅と色とりどり。果実用の桃の花は終わっていたから、花期が違うのかもしれない。コーチは今回、集合写真を撮ることをお忘れではなく(時々、お忘れになることもある)、塩ノ山山頂でも、そしてこのハナモモの前でも撮影してくれた。それはいいのだけど、最近、写真だけの速報版すらちっとも上げてくれないから寂しいんだよね。忘れた頃に写真を見ても、しょうがないから。
【撮影】14時32分=秋田 守
釈迦堂遺跡博物館から、基本プランは8km歩いて石和温泉、温泉入浴と夕食の後、千葉方面直行のあずさで帰る、というもの。が、若井さんとぼくはここで離脱。勝沼ぶどう郷駅まで1時間ほど歩くことにした。早い話が、2時間近くも歩くのはご勘弁、という甲斐性無しだ。中央道を陸橋で越して、しばらくはブドウ畑の中の細い道。ブドウの枝に若芽が出ていた。少し風が出てきて、ひんやり。でも気持ちのいい道。お天気に恵まれて良かった。
【撮影】14時34分=秋田 守
しばらく畑の中を歩いていたら、花は散っているが、大きな桜の木が何本も聳えているのが見えて、寄り道。皇大神社。狭い敷地に、4本の桜の老木大樹がそれぞれに大きく枝を張り出している。1週間前だったら、さぞかし見事な花見ができただろうにな。脇の方に女の子が3人、テーブル広げてお菓子を食べている。手を振ったら、笑顔で手を振り返してくれた。ジイサン、嬉しくてたまらん。素敵なお花見だね、君たち。笑顔をありがとう。
【撮影】14時48分=秋田 守
県道へ出て、道路脇を歩く。と、行く手にまるき葡萄酒、という看板。店の前に行くと、やってきたお婆さんが、ここのワインは美味しいよ、試飲もできる、と言う。こりゃ寄らずにおられようか。店の女性が試飲を勧めてくれた。最近賞をとったばかりの白ワイン、次々3種類。赤も2種類。さらに、じゃんけんで勝ったら、有料の古酒を特別試飲できると。ぼくは負けたが、若井さん粘り勝ち。せっかくのご縁なので1本ずつお土産を買った。
【撮影】15時53分=秋田 守
駅に向かって最後は上り坂。もうまもなく上り列車が来る。必死に歩いた。勝沼ぶどう郷駅に着いたのは5分前。車内でビールを吞みたいと思ったが、キオスクや売店がない。あるのはワインショップのみ。念のため、訊いたが、ワインしかないと。がっかり。やってきた高尾行き鈍行列車に乗り込むと、ボックスシートは空いてない。おまけにその先、続々とお客が乗ってきて、車内でビール呑むなんて状況ではなかった。本日、歩行数2万5000歩。