山旅図鑑…し
白馬三山(2023.8.21-24)
フォトエッセイ・秋田 守

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★糸の会 no.1277
2023.8.21-24(月〜木)
白馬三山



白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】08時59分=秋田 守=57
前日の八方尾根歩きはパスさせてもらい、8月22日、猿倉10時半出発に間に合うように、白馬駅8時35分発のバスに乗った。白馬駅前で登山姿の外人男性が、長野行きバスの運転士に行き先を確認したりしていたから、猿倉へ行くならこのバスだよと、やって来たバスを指して教えてあげた。乗客は2人だけ、白馬八方バスターミナルから1人乗り込んだ。猿倉荘で1時間ほど待つ間に、山上から早々に下山してきた人が数名、皆さん疲れ果てた様子だった。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】10時41分=秋田 守=36
猿倉荘脇の登山道を登り、しばらくすると、左へ鑓温泉への分岐。そのまま直進すれば白馬尻から大雪渓へ至る。18年前にはそのルートで登った。アイゼンをつけて大雪渓の上を歩くのは初体験で、涼しくて気持ちよかったが、その数日後に大規模な崩落事故があり、ぞっとしたことが忘れられない。今日の登り道は、とにかく暑い。暑くてたまらず、結果的には自分にとって記録的なほど大量の汗をかいた。水をたくさん持参してよかった。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】11時20分=秋田 守=21
森の中を歩いていて、ふと、下を見れば、キノコの脇に何やらヘンな物が付いていた。何だろうかと、よくよく見れば、大きなナメクジではないか。調べてみたら、キノコ類はナメクジの大好物らしい。栄養素をたっぷり含むキノコは、ナメクジにとって上等なエサなのだという。キノコにとっても、食べられた胞子は、ナメクジが糞をすると、すぐに発芽して菌根を作ることが出来るそうで、いわば運び屋の役割を果たしてくれるという関係。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時15分=秋田 守=41
今回、高山植物のピークは過ぎているだろうと勝手に思い込んでいたが、思っていた以上の多くの種類の花を楽しませてもらえた。道端に咲いていたのは、ツルニンジン。別名、ジイソブ(バアソブという別の花もある)。けっこう派手な造り。今回は、先月末に原因不明で膝を痛めたこともあり、とにかく荷物を軽くしようと努め、多い時には2台持参するデジカメは持たず、スマホとコンデジのみで撮影した。この写真はコンデジのマクロ撮影。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時21分=秋田 守=17
今回の山旅で見かけた花の多くは、青や紫色系と、もうひとつ黄色系。その黄色系の花、シナノオトギリ。ひょっとしたらイワオトギリかもしれない。難しいことはよく分かりません。そもそもオトギリソウの名前の由来は、弟が兄に切り殺されたという不吉な伝説によると伝わる。花言葉も怨念、迷信など辛気くさい。そのオトギリソウの高山型。人目を惹く鮮やかな造りの花は、山道を明るくしてくれるような気がして、嫌いではないタイプ。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時30分=秋田 守=09
今回は伊藤コーチのお嬢さんが参加されていて、驚いた。コーチ曰く、ご自身の体力に問題点ありという認識をお持ちで、助手という位置づけではなく、あくまで万一の時の連絡役などを期待されてのこと。しかし、端で拝見していても本当に仲良しの親子ですねえ。我が家は息子2人なので、娘さんは羨ましいと思いました。山歩きをしていた訳ではないとおっしゃりながら、お若いからでしょうか、バランス良くタフな歩きぶりに感心しました。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時39分=秋田 守=47
今回の山旅で量的に最もたくさん見た花は、トウヤクリンドウか、このトリカブトではなかったかしら。正しくはミヤマトリカブトかな。この花を見ると、ああもう夏は終わりかなと、いつも思ってしまう。ちょっとセンチメンタルな気分にさせられる。毒草だから、そんな呑気なこと言ってられませんが。薄い青色の花も、この写真のように濃い青紫色の花も、その中間あれこれ、実にとりどりの青グラデーションで目を楽しませてもらった。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時49分=秋田 守=07
この花も山の中でたくさん見たが、てっきりウメバチソウだとばかり思い込んでいた。が、コウメバチソウらしい。その違いは、仮雄しべの先につく球状の白や薄黄色の腺体の数。この写真だと11のように見えるが、ウメバチソウは一般的には12以上になるらしい。難しくてよく分からないけど、へええ、てな感じ。花自体も言われてみれば、やや小ぶりだったような気もするし。植物学は難しいですね。まんてんの槙野万太郎君の苦労が偲ばれます。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】12時59分=秋田 守=43
時刻は12時59分、夏空の下、とにかく暑くてたまらない状況が延々と続いている。この日に限っては、登りのしんどさより暑さのしんどさの方がはるかに上回っていた。長袖シャツはびしょびしょ、パンツも膝ぐらいまで汗染みで濡れ、ザックの肩ベルトも絞れるくらいの汗。給水してもそのまま汗になって流れ出ていく感じ。たまに風が吹き抜けてくれると、心からありがたく感じられた。1時間後に沢水で顔を洗った時の気持ちよかったこと!

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】14時08分=秋田 守=08
ミヤマコゴメグサ。典型的な高山植物で、各地域ごとに少しずつ形が異なり、コゴメグサの頭に地域名が付けられる。たとえば、ダイセンコゴメグサ、オウミ、サド、トガクシ、イブキ、イズ、キュウシュウ、トサなど。花期は7~8月。夏の花の印象が強い。初日の登山路には多く見られた。とある斜面は、一面を覆い尽くさんばかりに密生していて驚かされた。個人的には、こういう系統の花は、そっと咲いているのを眼を近づけて鑑賞したい。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】14時10分=秋田 守=30
チョウジギク。不思議な姿の花。花柄の部分にびっしり白い毛が密生している。キク類、キク科に属し、種としてはチョウジギク、ひとつ上の階層の属は、なんとウサギギク属という。えー、どこがウサギギクなんだろうか。ぱらぱら生えていたら可愛いが、ぼわっと密生しているところもあり、少々鬱陶しい見栄えとなる。で、別名はクマギク、理由は毛が多いからとの説明を見かけたが、白い毛だからホッキョクグマなのに、これもヘンだ。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】14時26分=秋田 守=10
歩き始めてから4時間、沢の上部に本日の目的地、白馬鑓温泉小屋がようやく見えてきた。コーチから事前に渡されていた計画によれば、本当はすでに小屋に着いているはずの時刻。この猛暑ゆえ、やむないことだが。残る標高差は150mほど。目的地が見えると、俄然、がんばる気も盛り上がってくる。結果的には、小屋への到着は1時間後。本来、15時までに着くべき所、1時間近い遅延。最後は、コーチが単独先行して我々の到着を伝えに向かった。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】16時30分=秋田 守=49
小屋で与えられたスペースは、2階建ての1階最奥の右(女性)と左(男性+コーチ親子)。布団がびっしり敷かれた伝統山小屋スタイル。1泊1万6000円もするので、もう少しゆとりあるのかと期待したが甘かった。露天風呂は20~21時のみ女性専用、それ以外は混浴。とりあえず、男子は露天へ。掛け流しの源泉がめちゃ熱い。奥の方に水が注がれるので、皆そこへ集中。少し前から雨が降り始めている。降られる前に到着できて助かった。撮影by若井さん。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】16時40分=秋田 守=00
風呂上がりに缶ビール。ロング缶1本1000円。高いが、吞まずにいられる訳がない。プッハー! いや、サイコー。本当に旨い。スーパードライは美味しいと思えないのでふだんは吞まないが、スーパードライでもこんなに旨いのかと驚くほど。隣で吞んでいた若井さん、ありゃ、缶を倒してゴボゴボこぼしちゃったよ。山と温泉へのお供えだあ、なんて粋がっていたけど、もったいなかったですね。飲み過ぎ注意の天の思し召しか。撮影by若井さん。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】17時39分=秋田 守=55
夕食は2廻り目の17時40分から。メインはハンバーグを添えたハヤシライス。たぶんコーチが写真を上げると思うので割愛。先ほど缶ビールを吞んだので、夕食のお供はワンカップ大雪渓。が、酒の肴になるようなおかずはほとんどない。ちょいと寂しい。貧乏人根性丸出しで、これで1万6000円かあ、と思ってしまう。それはさておき、夕食の前、17時前にひとりずぶ濡れになって小屋に着いた外人男性がいた。朝のバスで一緒になった人だった。

白馬岳、白馬三山
2日目【撮影】18時36分=秋田 守=19
夕食後、女性タイムになる前にもう一度露天風呂へ。と、さっきの外人さんが入ってきた。彼は猿倉から大雪渓を登り、白馬岳、白馬鑓ヶ岳と歩いてここまで下りたきた強者。しかも土砂降りの中、テントを背負って。話してると、DAYの発音がダイになる。オーストラリアの人だね。明日は猿倉へ下山して、松本に2泊した後、上高地へ、さらに大阪経由で帰国するという。ハードスケジュールだねえ。いくら若いとはいえ、よくやるわと感心しきり。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】05時15分=秋田 守=35
コーチから前夜、明朝は弁当で4時半に出発と告げられた。午後は発雷確率が高いので、早出して昼までに白馬山荘へ入ろうという作戦。夜はかなり雨が激しかった。ほとんど乾いていないウェア類を我慢して着込んだ。4時、荷物を持って、食堂外のベンチへ。弁当を食べると言うより昨夜100円で買ったお湯で流し込んだ。足下が見えるようになった4時40分過ぎ、出発。雪渓沿いの道を登り、5時過ぎ、ご来光を待っていると、見事な朝日が昇ってきた。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】05時19分=秋田 守=26
鑓温泉小屋で泊まりあわせた人の大半は、白馬岳方面から下ってきて1泊する人。明日、白馬岳へ向かって登るというと、皆さん、えー大変だねえと反応した。その意味は、登っていくと徐々に分かった。尾根筋へ出るまでに小屋で見た行程表だと3時間。ひたすら登る。しかもクサリ場も数ヵ所。まず初めのクサリ場が現れた。ここはたいしたことはなかったが、結局、3時間の所を3時間半かかって、尾根の分岐まで登ることが出来たのであった。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】06時09分=秋田 守=25
2日目の午前中前半は、なかなかきつい登り道だったが、いろいろな花が現れて、目を楽しませてくれた。チングルマは当然、とっくに花は終わっていて、カザグルマになっていたが、白い花が群れ咲いている光景を思い浮かべるだけでもわくわくしてくる。この後も、頻繁に見かけた。中には見渡す限り一面のチングルマ、という場所もあった。花の全盛期は1ヵ月ぐらい前だったのだろうか。花がとうに終わったウルップソウの株も多く見られた。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】06時37分=秋田 守=43
こちらは今が真っ盛りという状態のミヤマアキノキリンソウ。この後、あちらこちらでたくさん見かけた。アキノキリンソウの高山型品種。アキノキリンソウはキク科だが、似たような名前のキリンソウはベンケイソウ科で、植物の名前は本当に難しい。ミヤマアキノキリンソウ、夏の終わりから秋にかけて、山を歩けばよく見かけるが、なんだかモシャモシャしていて、個人的にはイマイチ惚れ込めないタイプの花。花には何の責任もないですが。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】07時20分=秋田 守=38
まだ薄暗い中を登り始めてから3時間近く、ようやく目指す尾根筋がドカンと立ちはだかって見えるようになった。ここまでの途中、下ってきてすれ違った人たちは、天狗山荘から下りてきたという人が多かったように思う。われわれは、尾根の分岐から右へ進むが、左へ行くと天狗池があり、その畔に山小屋があるのだ。とりあえず、お天気がいいのはありがたい。さすがに標高も高くなっているので、昨日ほど暑くは感じられないのも救われる。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】07時27分=秋田 守=34
こちらの花もずいぶんたくさん見かけた。ヨツバシオガマ。赤紫色の花はずいぶん目立つ色。さほど大きくはないけど、遠目にもすぐ分かる。割と好みのタイプ。ここ数年、毎年通っている北海道の北の果て、礼文島にはレブンシオガマという似た花が咲く。そちらは二回りほど大きく、花が十数段ほどにも高くなって派手な出で立ちとなる。来年もまた礼文島には行くことになるのかなあ。もう一度小笠原にも行きたいし、どうなることやら。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】09時10分=秋田 守=53
尾根の分岐に上がる直前、ライチョウらしき鳥を見かけた。スマホで撮ろうとしたが、距離もあって撮影できず。その先にはイワヒバリが数羽いて囀っていた。で、分岐から右へ尾根道を登って、9時過ぎに白馬鑓ヶ岳山頂に到着。三角点にタッチ。標高2903m。久しぶりだなあ、この高さは。本当なら絶景を楽しめるはずだが、雲が上がってきて視界が閉ざされている。時折、雲がはがれ周辺の山が顔を出す。頂近くにはトウヤクリンドウが多い。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】11時25分=秋田 守=28
白馬鑓ヶ岳山頂から下ると、白馬三山のひとつ杓子岳の平べったい山頂が目の前に。しゃもじを倒したような山容のため、その名が付いたというが、分かったような分からんような。われわれは先を急ぎたいので、山頂へは上がらず、巻き道を選択。11時半頃、丸山の手前、登山道脇にコマクサを発見。てっきり花は終わっているに違いないと思っていたので、萎れかけた花もあったが、一目見られただけで嬉しく、思わず大声を上げてしまった。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】11時26分=秋田 守=26
コマクサに歓声をあげたその直後、ライチョウがいた。逃げようともしない。悠然と歩いている。今度はスマホでもばっちり撮影できた。ライチョウの調査をしている専門家によれば、ライチョウを見るなら登山道沿いが一番とのこと。登山道は砂浴びできるし、登山道脇の浅いハイマツ帯には彼らのエサとなるガンコウランなどの植物もあり、さらに猛禽類やオコジョ、キツネなどライチョウを狙う外敵らが嫌う人間が通ることも理由という。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】11時54分=秋田 守=01
登山道の右下に頂上小屋を見ると、もう間もなく本日のお宿、白馬山荘が見えてくる。18年ぶりの再訪。遠くから見ても大きい。最後の上り坂、登っても登っても、なかなか近づかなくてもどかしい。雲に包まれてはいるが、まだ雷や雨はきていない。時刻は12時直前、なんとか昼までにという目標はぎりぎり達成できそうだな。みんな頑張りました。後で確認したら、この日の総歩行数は1万5000歩あまり。山登りは、思ったほど歩数が稼げない。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】12時22分=秋田 守=52
到着したのが12時。まずは、山荘に併設されているスカイプラザ白馬でランチ。ランチメニューはすべて1500円。ラーメンを注文された方が多かったが、ぼくは生ビールのお供にふさわしそうな「山賊焼バーガー」を。サブタイトルは長野県ご当地グルメ、とある。山賊焼は松本生まれ、鶏肉を醤油や生姜などのタレに漬け込み、片栗粉をまぶして揚げたもの。バンズから大きくはみ出した山賊焼はビールによく合う。付合せのポテトもいいよ。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】12時40分=秋田 守=36
バーガーよりこっちの方が先に来ないと話は始まらん。生ビール! 3000m近い山の上で、ジョッキで生を飲めるなんて、それだけで幸せとしか言いようがない。しかも平地で飲むより、格段に旨い。若井さんも、山で飲むビールはどうしてこんなに甘いのかね、と感慨深げ。プッハー。1200円の価値はある。18年前は860円。1500円ぐらいになってるかと思っていたが、まあナットクのお値段かな。撮影by若井さん。この後、大雪渓かき氷を食べた。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】13時42分=秋田 守=43
ランチを食べ終えたら雨が降り始めた。おお、際どいところだったんだ。昨日も今日も、うまく降られずに済んだ。さすがコーチの判断と仕切りは素晴らしい。割り当てられたのは2階の個室だった。女性2部屋、男性1部屋。部屋は五竜、布団3枚敷いても余裕。雨はますます激しくなる。個室に加えて、今日の小屋には乾燥室まであった。素晴らしい。館内探検。トイレ、洗面所、自炊場、談話室、食堂、資料室など。今夜の宿代1万5000円、値打ちあり。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】18時29分=秋田 守=21
17時から夕食。食事写真はコーチがあげるだろうから割愛。缶ビールと共に昨夜より充実したおかずを美味しくいただいた。食後、男性部屋でミーティング。明日の予定確認後、コーチが登山中のぼくの発言を強引に曲解し、こちらがまるで「がんばらない山歩き」否定論者みたいにボロクソに罵り始めたので(WEB上でも同じような展開アリ)、それは違うでしょと反論。そんなことしてると、窓の外が明るくなっていた。夕陽が当たってる! 表へ。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】18時34分=秋田 守=31
西に沈む夕陽そのものは向かいの山(旭岳かな?)に遮られて見えなかったが、富山湾とその向こうに能登半島が朱に染まり、荘厳な眺め。そして左の方には、威厳をもって佇む剱岳から立山への山並み。さらには、今日歩いてきた白馬鑓ヶ岳、杓子岳からの登山路。今まで雲に隠れて見えなかった絶景が、突然広がった。小屋から続々、泊まり客が出てきて、この贅沢な景色を見呆けている。いや何て粋な演出か。直前の不快な気分が吹っ飛んだ。

白馬岳、白馬三山
3日目【撮影】18時40分=秋田 守=52
山上の絶景に圧倒されながら、景色を楽しんでいると、徐々に周囲は朱に染め上げられていった。気温は下がってはいたと思うけど、実はさほど寒くはなかった。中にはダウンジャケットを着込んで飛び出してきた人もいたが、若井さんはフツーの夏用長袖シャツだけ。ぼくは一応、パーカーを羽織った。次第に小屋自体も赤く輝き始めた。一緒に撮ってもらおうよと、若井さんがアサさんに頼み、珍しいツーショットとなった。撮影byアサさん。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】04時27分=秋田 守=48
最終日の朝、天気が良ければ、朝食前にご来光を眺めに白馬岳山頂へ登ることになっていた。4時半、富山平野の明かりが輝いている。山の上での2泊は、どちらも午後から夜にかけて雨、朝から昼間では晴れ、というありがたいパターンとなってくれた。4時起きは別に苦にもならない。昨日は昼食後、14時から男部屋は全員で昼寝をした。あれは気持ちよかった。深夜0時頃、3人ともトイレに起きて、順番に部屋を出て行くことになったのは笑えた。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】05時08分=秋田 守=43
山小屋から登ること20分ほどで白馬岳山頂、標高2932m。空身なので登るのも実に楽勝。しばらく待つと一面に広がる雲海の上に、5時8分、ご来光のお出ましとなった。前日より少し早いのは、今日の方が標高がかなり高いからかな。山頂は思ったほど大混雑にはならず。北東方向には、日本海に横たわる佐渡の島影。本土側の海岸線も薄赤くくっきり。眼を右に転じれば、雲上に雨飾から妙高への連なり。早起きは三文の得ですね。まことに眼福なり。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】05時12分=秋田 守=57
ご来光に見とれた後、山頂で山小屋方面を振り返れば、劔岳のテッペンが朱に染まり始めていた。しかし、湿度が高いからか、劇的な朱に染まるほどには至らず。ぼんやり赤っぽくなっただけ。残念だがしょうがない。左奥のピークが立山とは、後で教えてもらって分かったこと。すぐに位置関係がピピッと理解できないのが情けない。写真は割愛したが、白馬岳の影が映る影白馬もはっきり見ることが出来た。早朝から今日も気分は上々なり。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】05時36分=秋田 守=21
山頂から下って、出発準備を整え、食堂へ。前日は暗い中で食べる弁当だったから、今朝は比べものにならないほど美味しく感じる。納豆が添えられているのもぼくにとっては高評価。体が塩分を欲しているせいか、みそ汁が殊の外美味しく感じられる。美味しいのだが、普段よりは多量のご飯を茶碗に盛られているので、とてもお代わりはできない。お向かいのコーチはてっきりお代わりをされるのかと思ったが、みそ汁だけのお代わりだった。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】06時45分=秋田 守=06
白馬山荘を出発したのは6時20分過ぎ。今度は荷物を背負って、もう一度白馬岳山頂へ。コーチが、山頂で仰向けになってみて下さい、ここでしか体験できない眺めが楽しめるからとおっしゃる。そう言われたら、素直に従う。おお、空が近い。いつもより3000mほど自分の体に近い空の圧倒的な存在感。圧を感じるほど。さすがですね、コーチ。と、昨夕からは一転、ヨイショをする。サラリーマンはこれだから嫌い、と陰口が聞こえてきそうだが。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】06時45分=秋田 守=30
白馬岳山頂で同様にごろり寝転がった若井さん。自分でやってる時は何とも思わなかったけど、これって端で眺めてると、相当ヤバイですよね。何をやっとるんじゃ、こいつらは、と呆れられても仕方ないです。ま、怒られなかっただけ、良かったのかも。そういう意味でも貴重な体験をさせてもらうことができました。コーチに感謝。ところで、若井さんはこの時、この瞬間、何をどのように感じていらっしゃったのか聞き忘れてしまいました。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】08時18分=秋田 守=24
白馬岳から尾根を下る。新潟、富山方面がよく見える。三国境まで下ると、今度は小蓮華山へ向かって登り道。この道中、とても気持ちよく歩くことが出来た。いいぞ、ずっとこのまま下山できたら、と思っていたが、後半、あんなに苦労することになるとはこの時点では想像もしていなかった。小屋を後にして2時間ほどで小蓮華山の山頂。標高2766m。新潟と長野の県境に立つ。新潟県では最高峰。大日岳とも呼ばれ、山頂には鉄剣が立っていた。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】09時03分=秋田 守=16
小蓮華山から下り、ずっと尾根筋を辿っていくと、行く手に船頭ノ頭と呼ばれるピーク。その先の下山路は基本的には下りのみとなるはず。いやあ、今日は気持ちよく最後まで歩けそうだぞ、とまだこのあたりでもルンルン気分だった。ずっと気がかりだった左膝の調子も悪くはならずに済んだし、疲労度もさほどではない。時折、風が吹き渡ると、本当に気持ちいい。足下にはチシマギキョウの群落が現れたりもして、眼を楽しませてくれる。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】09時14分=秋田 守=53
船頭ノ頭、標高2612m。おお、白馬大池とその畔の山小屋が間近に見下ろせるぞ。あそこまで下れば、その先はYAMAPによれば、2時間でロープウェイの駅だ。まずは大池、これもYAMAPによれば、40分ほど。天気もよさそうだし、12時半にはロープウェイかな、などとチョー楽天的観測を勝手に思い描いていた。このあたりまでは。ぼくだけでなく、若井さんも。ちなみにぼくはこのルートは初めて歩くが、若井さんは以前歩いているとのことだった。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】09時48分=秋田 守=59
順調に大池に向かって下っていくと、前を歩く若い男性がなぜか立ち止まっていた。あれ、と思って彼の目線の先を見れば、ありゃ、またまたライチョウだ。眼の上が赤いからオスだね。ただし、昨日とは違って、速歩で立ち去っていく。ヒナでも近くにいたのかしら。なんとか1枚だけ写ってくれていた。ありがとう。この先、さらに下ると、一面のチングルマのカザグルマ。あら、ガスが立ちこめ始めていた。あたりは次第に真っ白の世界となる。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】12時14分=秋田 守=08
大池山荘の食堂で大休止。皆さんはキーマカレーを食べてたが、お腹が空いてないので、卵スープ(300円)で塩分補給。この先が大変だった。まず天気。小雨がぱらつき、ザックカバーと念のためレインウェア。でもこれはすぐに外した。巨岩がゴロゴロする下り道。ストックも使いづらい。岩が濡れているので滑らないよう注意も必要、足も踏ん張るからくたびれる。その先、傾斜が緩やかになるか、という場所に大きな1枚岩が横たわっていた。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】12時39分=秋田 守=18
やっと辿り着いた天狗原。花の時季なら美しい湿原なのだろうが、花は終わり、ガスが一面立ちこめていては、長居は無用。小休止の後、木道を進んだ。延々と続いた巨岩ルートが終わってくれて一安心ではあるが、雨に濡れた木道は滑りやすいので要注意。さらに、先には木の板で作られた下り階段が待ち受けていて、これは本当にツルツル滑って怖かった。このあたりでロープウェイ駅に13時までに着くことは不可能と分かっていた。ありゃ。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】12時45分=秋田 守=19
結局、栂池山荘前に着いたのは13時40分過ぎ。トイレを済ませ、車道を下り始め、ロープウェイ駅が見えた時、iPhoneがないと気がついた。山荘のこの写真を撮影したのは覚えていたから、その後、忘れたか落としたか。ひとり引き返すと、どこにも見当たらず、山荘の人に確認しても、ない。もしやと思い、ストックの先を濡れた葉っぱで拭ったあたりへ行くと、道路上に黒いiPhoneケース。よかった。慌てて20分後のロープウェイで追いかけた。

白馬岳、白馬三山
4日目【撮影】18時35分=秋田 守=38
ロープウェイ山麓駅からはタクシーに分乗し、白馬ハイランドホテルへ。温泉でさっぱり汗を流し、缶ビールをグビリ。タクシーで白馬駅へ戻り、切符自販機の対話モニターで若井さんはジパング手帳を見せつつ帰路の切符を3割引きで購入。ぼくは未指定席をその隣席に変更。便利。松本駅でロング缶とワンカップ、酒肴たっぷりの駅弁を買い求め、発車前からプッシューと開栓。お疲れさんでした、の乾杯。いろいろあったけど楽しい山旅でした。



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