発見写真旅(時系列速報写真)
高川山
2022.7.14

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★糸の会 no.1235
2022.7.14
高川山
登り14p→稜線24p———38パワー

★最寄り駅はJR中央本線・初狩駅
0850-0905ごろ_初狩駅で雨具など出発準備
0905ごろ_初狩駅を出発(標高約460m)27℃
0935ごろ_新しい登山口(標高約560m)
0940-0945ごろ_休憩(標高約600m)
1000ごろ_男坂・女坂分岐(標高約710m)
1030ごろ_男坂・女坂合流(標高約870m)
1035-40ごろ_雨具調整(標高約880m)24℃
1055-1110ごろ_高川山山頂(標高=976m)
1120ごろ_田野倉駅・壬生駅方面分岐(標高約950m)
1210-20ごろ_休憩(標高約660m)
1225ごろ_田野倉駅方面分岐(標高約660m)
1240-45ごろ_休憩(標高約600m)
1305ごろ_天神峠。国道20号・花咲トンネル分岐(標高約510m)
1315-20ごろ_雨具調節(標高約580m)23.6℃
1325ごろ_584m峰・峰山(標高約584m)
1415-25ごろ_むすび山・大月防空監視哨跡(標高=463m)
1440ごろ_大月市立中央病院(標高約370m)
・タクシーで寄り道の湯へ
・1630都留市駅発の富士急行電車で大月へ
・浜野屋で食事・時間調整
・千葉行きあずさ50号で大月駅から帰途

★振り返って
天気予報は「曇り時々雨、場所により豪雨」ということで千葉発あずさで参加の3人でした。ただ、その3人のうち佐藤さんと永田さんとにとって、この高川山の、初狩駅からのルートは思い出深いものでした。朝日カルチャーセンター千葉での、(388回の実技登山の)最初がこの高川山だったからです。1996年4月10日の山頂には富士山を背景にして富士桜(マメザクラ)がちょうど満開でした。
じつは私にとってもその日の高川山は貴重な体験でした。そのときの長文の資料をページ末に掲載しておきます。1996.4.10講義資料
その資料を参考にして、多くのみなさんが「運動靴」で参加したのですが、「はきなれた運動靴」の人と、そうではなく軽登山靴で参加した人との歩き方をじっくりと見た結果、急斜面の下りで重要なのは靴底のブロックパターンでなしに、つま先荷重で歩ける柔軟な「運動靴」の重心管理のほうが圧倒的だという私の「論」が目の前で確認できたのです。「登山靴」と称する靴のブロックパターンに依存する人たちは、そのほとんどが滑りやすそうな急斜面ではかかとに重心のある後傾姿勢(ひどくなるとへっぴり腰)になっているんです。それが「転ばせてください」という準備姿勢であることはスキーの初心者を見ていれば明らかです。
……という確信をもてたのがこの「高川山」だったのです。1996年から、今年で25年のお付き合いになるんですかね。
もちろんお二人はその後も何度か高川山に参加されていますから今回のように大月まで下ったり、大月駅から直接歩きはじめて登ったりという体験をしています。
私はこのところ初狩駅と山頂の間は大岩経由の道を使っていましたから、今回はぜひ、私にとっての「クラシックルート」を歩いてみたいと考え、それに長い、大月駅までの稜線の道を加えたのです。

★今回の写真出展メンバー————伊藤 幸司
*「時系列速報写真」はいわば粗選びの段階(ラッシュ・プリントに近いですかね)で「写真だけでどれだけ行動を記録できるか」という方向を考えています。
*その後に発表する(予定の)「山旅図鑑」には、撮影者が自分の写真と(再度)向き合った結果としての文章(キャプション)がつけられます。キャプション(文字数自由、内容自由)がつくことによって、写真と撮影者の関係を軸にした「フォトエッセイ」という資質をそなえることになるでしょう。私(伊藤)は「たまたま撮ってしまった写真」に自分なりに理解度を見定めようとしてWeb上でのサーフィンを楽しんでいます。
*「山旅図鑑」では写真を見てくださった方の自由なコメントも加えさせていただきたいと考えています。(いくぶん、編集的作業を加えさせていただく場合がありますので、問題があればお知らせください)


★参考
高川山1994———1994.10.22 東急セミナーBE(第1回実技)
高川山1996———1996.4.24 朝日カルチャーセンター千葉(第1回実技)
高川山1997———1997.9.4(木)
高川山1999———1999.7.27(火)
高川山2000———2000.1.19(水)朝日カルチャーセンター千葉
高川山2000———2000.4.25(火)東武カルチュアスクール
高川山2002———2002.3.19(火)
高川山2002———2002.12.11(水)
高川山2005———2005.1.18(火)
高川山2007———2007.2.17(土)朝日カルチャーセンター千葉
高川山2007———2007.4.17(火)
高川山2007———2007.11.28(水)朝日カルチャーセンター千葉
高川山2009———2009.5.17(日)
高川山2012———2012.4.14(土)
高川山2014———2014.6.24(火)
高川山2016———2016.3.12(土)








08:00

高川山
【撮影】08時42分=伊藤 幸司=006

高川山
【撮影】08時52分=伊藤 幸司=009



09:00

高川山
【撮影】09時09分=伊藤 幸司=010

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【撮影】09時09分=伊藤 幸司=012

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【撮影】09時11分=伊藤 幸司=015

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【撮影】09時12分=伊藤 幸司=017

高川山
【撮影】09時12分=伊藤 幸司=018

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【撮影】09時12分=伊藤 幸司=019

高川山
【撮影】09時13分=伊藤 幸司=020

高川山
【撮影】09時13分=伊藤 幸司=022

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【撮影】09時14分=伊藤 幸司=024

高川山
【撮影】09時15分=伊藤 幸司=025

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【撮影】09時17分=伊藤 幸司=029

高川山
【撮影】09時20分=伊藤 幸司=030

高川山
【撮影】09時20分=伊藤 幸司=031

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【撮影】09時21分=伊藤 幸司=033

高川山
【撮影】09時21分=伊藤 幸司=034

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【撮影】09時23分=伊藤 幸司=037

高川山
【撮影】09時23分=伊藤 幸司=038

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【撮影】09時24分=伊藤 幸司=040

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【撮影】09時29分=伊藤 幸司=042

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【撮影】09時31分=伊藤 幸司=043

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【撮影】09時31分=伊藤 幸司=044

高川山
【撮影】09時31分=伊藤 幸司=045

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【撮影】09時32分=伊藤 幸司=046

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【撮影】09時32分=伊藤 幸司=047

高川山
【撮影】09時33分=伊藤 幸司=050

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【撮影】09時34分=伊藤 幸司=051

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【撮影】09時35分=伊藤 幸司=053

高川山
【撮影】09時36分=伊藤 幸司=056

高川山
【撮影】09時36分=伊藤 幸司=057

高川山
【撮影】09時39分=伊藤 幸司=061

高川山
【撮影】09時40分=伊藤 幸司=064

高川山
【撮影】09時42分=伊藤 幸司=068

高川山
【撮影】09時50分=伊藤 幸司=071

高川山
【撮影】09時51分=伊藤 幸司=074

高川山
【撮影】09時52分=伊藤 幸司=076

高川山
【撮影】09時55分=伊藤 幸司=078

高川山
【撮影】09時56分=伊藤 幸司=082

高川山
【撮影】09時57分=伊藤 幸司=087



10:00

高川山
【撮影】10時01分=伊藤 幸司=090

高川山
【撮影】10時01分=伊藤 幸司=091

高川山
【撮影】10時01分=伊藤 幸司=092

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【撮影】10時03分=伊藤 幸司=093

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【撮影】10時06分=伊藤 幸司=095

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【撮影】10時14分=伊藤 幸司=098

高川山
【撮影】10時32分=伊藤 幸司=102

高川山
【撮影】10時42分=伊藤 幸司=109

高川山
【撮影】10時43分=伊藤 幸司=111

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【撮影】10時45分=伊藤 幸司=113

高川山
【撮影】10時53分=伊藤 幸司=115

高川山
【撮影】10時53分=伊藤 幸司=116



11:00

高川山
【撮影】11時00分=伊藤 幸司=117

高川山
【撮影】11時12分=伊藤 幸司=121

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【撮影】11時12分=伊藤 幸司=126

高川山
【撮影】11時12分=伊藤 幸司=128

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【撮影】11時14分=伊藤 幸司=129

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【撮影】11時15分=伊藤 幸司=130

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【撮影】11時19分=伊藤 幸司=132

高川山
【撮影】11時21分=伊藤 幸司=134

高川山
【撮影】11時21分=伊藤 幸司=136

高川山
【撮影】11時23分=伊藤 幸司=137

高川山
【撮影】11時24分=伊藤 幸司=139

高川山
【撮影】11時26分=伊藤 幸司=142

高川山
【撮影】11時35分=伊藤 幸司=147

高川山
【撮影】11時39分=伊藤 幸司=149

高川山
【撮影】11時39分=伊藤 幸司=150

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【撮影】11時40分=伊藤 幸司=151

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【撮影】11時41分=伊藤 幸司=153

高川山
【撮影】11時42分=伊藤 幸司=154

高川山
【撮影】11時43分=伊藤 幸司=157

高川山
【撮影】11時45分=伊藤 幸司=160

高川山
【撮影】11時47分=伊藤 幸司=163

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【撮影】11時48分=伊藤 幸司=164

高川山
【撮影】11時48分=伊藤 幸司=167

高川山
【撮影】11時53分=伊藤 幸司=168



12:00

高川山
【撮影】12時06分=伊藤 幸司=172

高川山
【撮影】12時11分=伊藤 幸司=173

高川山
【撮影】12時23分=伊藤 幸司=174

高川山
【撮影】12時24分=伊藤 幸司=175

高川山
【撮影】12時24分=伊藤 幸司=176

高川山
【撮影】12時29分=伊藤 幸司=179

高川山
【撮影】12時30分=伊藤 幸司=180

高川山
【撮影】12時30分=伊藤 幸司=181

高川山
【撮影】12時36分=伊藤 幸司=184

高川山
【撮影】12時39分=伊藤 幸司=185

高川山
【撮影】12時55分=伊藤 幸司=188

高川山
【撮影】12時56分=伊藤 幸司=199

高川山
【撮影】12時56分=伊藤 幸司=191

高川山
【撮影】12時58分=伊藤 幸司=193

高川山
【撮影】12時58分=伊藤 幸司=195

高川山
【撮影】12時59分=伊藤 幸司=197



13:00

高川山
【撮影】13時00分=伊藤 幸司=198

高川山
【撮影】13時04分=伊藤 幸司=201

高川山
【撮影】13時04分=伊藤 幸司=202

高川山
【撮影】13時05分=伊藤 幸司=204

高川山
【撮影】13時05分=伊藤 幸司=205

高川山
【撮影】13時16分=伊藤 幸司=210

高川山
【撮影】13時23分=伊藤 幸司=211

高川山
【撮影】13時25分=伊藤 幸司=214

高川山
【撮影】13時32分=伊藤 幸司=218

高川山
【撮影】13時54分=伊藤 幸司=223



14:00

高川山
【撮影】14時06分=伊藤 幸司=224

高川山
【撮影】14時10分=伊藤 幸司=227

高川山
【撮影】14時10分=伊藤 幸司=228

高川山
【撮影】14時11分=伊藤 幸司=229

高川山
【撮影】14時15分=伊藤 幸司=231

高川山
【撮影】14時23分=伊藤 幸司=232

高川山
【撮影】14時23分=伊藤 幸司=233

高川山
【撮影】14時24分=伊藤 幸司=234

高川山
【撮影】14時32分=伊藤 幸司=237

高川山
【撮影】14時38分=伊藤 幸司=238

高川山
【撮影】14時49分=伊藤 幸司=241



15:00



16:00

高川山
【撮影】16時20分=伊藤 幸司=243

高川山
【撮影】16時30分=伊藤 幸司=246

高川山
【撮影】16時52分=伊藤 幸司=247



17:00

高川山
【撮影】17時04分=伊藤 幸司=248

高川山
【撮影】17時06分=伊藤 幸司=249

高川山
【撮影】17時35分=伊藤 幸司=250



1996.4.10講義資料

★最初に必要な道具
 山歩きに限らず、なにか新しいジャンルに挑戦するとなると、最小限必要な基本的な用具が必要になります。3点セットとか5点セットというやつです。
 私が大学で探検部というクラブに入ったときに、最初に買わされたのは特大のキスリング型ザック(横幅が2尺4寸)と革の登山靴、それにフォーシーズン用の寝袋の3点セットでした。靴はワンゲル(ワンダーフォーゲル部)御用達の靴屋でオーダーメイドにすると担保も保証もなしに月賦になりました。いま冒険小説の第一人者といわれる船戸与一(先輩)も「3点セットを買わされたから、部をやめられなかった」という口だったと記憶しています。
 ただし、そういう強引な道具のそろえ方はあくまでも基本セットにとどまるべきで、なにからなにまでおそろいというのではお粗末です。
 そういう思いで見ていると、カタログ雑誌などの影響か、いまや、みんながペアルックという感じに思えます。それだけなら文句をつける筋合いではないのですが、本来なら技術の受け皿であったはずの道具が、道具の受け皿になりさがった技術を従えて歩いているような印象がしてなりません。そういう点で、最近はやりの「道具から入る」というかたちに、私は不満です。
 とくに、ハードウェアをそろえることによってソフトウェアの比重を軽くできそうな錯覚に陥ることがこわいのです。この本ではとくに靴の悪口をたくさんいうことになると思いますが、足を守ってくれるだろうと思って大金を払って買った山歩き用の靴が、多くの人の足を傷めているという現実があることを明記しておきます。道具から入る愚かさについて語るのに、いまは登山靴を引き合いに出すべき時期だと考えています。
 で、いま、山歩きを始めるのにどうしても必要な道具は何かと聞かれたら、登山用品店で買ってもらいたい道具を一点だけ挙げることにしています。肌を湿らさないタイプの登山用Tシャツです。
 それ以外は何があればいいのか。私が主宰する山歩き講座の会「糸の会」で初参加者に求める装備をすこしくわしく解説しながら、ここではあくまで概観的に紹介してみたいと思います。

★足ごしらえ
 足ごしらえについては、とりあえず、普段はいている運動靴とソックスでOKです。ただ、「運動靴でいい」のではなくて「運動靴がいい」と強調することにしています。
 どういう運動靴がいいかと聞かれた場合には、こう答えることにしています。
「普段はいていて足にあっているものならなんでもけっこうです。靴の種類より、歩き方の方が決定的ですから」
 適当な運動靴を持っていないという人には買ってもらうことになりますが、その場合はふたつの答えを用意しています。
「安売りの運動靴でいいです。1980円なんていうので十分です」
 というのと、
「きちんとした店できちんとしたテニスシューズかランニングシューズを足にあわせて選んでもらってください」
 安売りの運動靴でも、スポーツ種目にきちんと対応した運動靴でも実際にはどちらでもいいのですが、運動靴を山ではくと、ひとつだけ困った問題が起こるのです。下りで足指の爪をいためる危険があるのです。これは靴の中で足が前にずれたときに、靴の爪先と足の爪先との微妙な関係から爪を刺激して、ひどい場合には爪を殺してしまいます。ベテランになれば爪の1枚、2枚へしゃげていてもいいとしても、軽い気持ちでトライした最初の山歩きで爪をはがしたりしたら困ります。
 それは歩き方でかなりのところまでフォローできるのですが、靴と足の相性は、歩いてみないと分かりません。
 登山靴なら足首のところできちんとひもを締めれば、靴の中で足が勝手に前方にずれることを防げるということになっています。たとえそういかなくても、登山靴を買って爪をつぶしたのならシロウトさんに「しょうがない」と思わせる説明はいくつでも用意できるのです。が、運動靴となると、山歩きなんぞにわざわざはかせた人間の責任が大きい——という感じですから不思議です。たぶん登山靴風のダメ靴がたくさん売られているのは、商売人たちのエクスキュースのためなのでしょう。
 だから相性にかかわる不安があるときには、テニスやバスケットのように激しいブレーキングを必要とする種目の靴を、きちんとした店で相談して買えば、爪を傷める危険がかなり低下する——という意味なのです。この場合も運動靴の種目は問いません。したがって靴底の形状も気にしないでだいじょうぶです。
 足に合いさえすれば安物の運動靴でも歩くには問題ないので、十中八、九は問題ないのですが、とくにこの「安物の運動靴」というのは重要な伏線となっているのです。
 たとえ日帰りの低山歩きでも、冬、悪天候の場合を考えると、足ごしらえは定価で3万円以上のしっかりした登山靴(最上級の軽登山靴)でないと安心できなくなります。それに匹敵できる安価版が、わたしが知る限り、スキー用品店や雪国の靴屋で買える(実売価格5000円以下の)雪国用運動靴「スノトレ」なのです。価格帯から見てスノトレの上に位置する見てくれだけの軽登山靴/トレッキングブーツ/ハイキングシューズ/ウォーキングシューズなどは、冬にはまったく信用ならないものに成り下がります。
 じつは北八ヶ岳の真冬の山歩きに一番ふさわしいのがスノトレだとわたしは信じているのですが、安物の運動靴をはけない人には不安で歩けないだろうと思います。安物運動靴の通気性をゼロにし、防水靴にしただけのものが、わたしのすすめるスノトレだからです。だから、冬の山歩きの足回りをスノトレで万全にしてもらうために、夏は運動靴で存分に歩いてもらいたいというのが本心なのです。(スノトレについてはあとで詳しく語ります)
 ソックスについても後でくわしく語りますが、とりあえず、普段はいているものでけっこうですとしています。

★行動着
 山歩きの服装については、簡単に「登山用肌着+長袖シャツ+長ズボン」と書くのですが、よほど寒い時期を除いて一年中これでいいと思います。
 一般にいうアウトドアスポーツは「屋外運動」という意味のものがほとんどなので、行動が終わったらすぐに着替えてサッパリするというのが常識になっています。海水浴もゲレンデスキーもゴルフも、困ったら逃げ込めるところがあるので「オープンエア」を満喫すればいいのです。はやりのオートキャンプも逃げ込めるドアが近くにあるという意味でのアウトドアだから、別荘生活に限りなく近いかたちといえそうです。
 それに対して山歩きは、どんなにレベルを落としても野外完結型の行動です。途中で動けなくなるかもしれないという不安がある間は、衣服は第二の肌であり、環境から身を守るバリアという重い役目を与えられています。
 めいっぱい汗をかいて、パッと着替える——というのの対極にあって、濡らさないように歩く、濡れたら歩きながら乾かすということが基本的な考え方になっています。そういう汗くささが善良な市民のみなさんに嫌われるところだとは思いますが、それゆえに、帰りがけに温泉につかって、着替えて帰る、というのが登山者の至福の瞬間ともなるわけです。
 行動着の長袖シャツと長ズボンはゆったりしていて丈夫ならなんでもいいと私は考えています。夏は夏らしい、冬は冬らしい生地のものを着るに越したことはないのですが、私などは関東平野の周辺に限定される日帰り登山では、一年中ほとんど同じ服で過ごしてしまいます。
 これらは登山用品店やアウトドア用品店で買うと安心に思えるのですが、専門店で買ってほしいのはもう少し機能を限定した衣類で、普通の登山用行動着は割高なだけで、払った分だけの価値があると思えないものが多いという印象をもっています。
 登山用品店にあるカッターシャツはチェック模様ばかり、と文句を言っている人がありましたが、もっとおしゃれなシャツを、自由に、積極的に山で着てみていただきたいと思います。
 山歩きを始めるに当たって最初にこれだけは買ってもらいたいというのが登山用肌着ですが、これは毛細管現象によって肌の湿りを外へ吐き出してくれる新素材のシャツのことです。日常用の肌着でも次第に認知されてきている機能ですから同様のものが近くの店にもあるかもしれません。しかし私は「登山用品店で定価3000円前後のTシャツを買うこと」と言明します。
 近くの店でもいい品物を買えるかもしれませんが、一般のユーザーには肌触りをよくしたり、ポカポカと暖かく感じるような付加価値をつけないと売れないらしく、「肌を湿らさない」という本来の機能を見失ってしまうものも多いようです。まずは一枚、登山用品店で買ってほしいのはそのためです。
 その一枚のTシャツで行動中の着替えが不要になり、普段と違う環境の中で風邪をひくなどの失敗を未然に防いでくれる効果は想像以上のものがあります。冬なら保温用の服が一枚減らせるのですが、誤解を招くといけないので詳しい説明は防寒と保温についてきちんと書いてからにしたいと思います。

★防風・防雨
 ここで対象とする山歩きは、山岳雑誌などでは「低山」と分類する範囲です。本州中央部(たとえば日本アルプス)で標高2500m以上に現われる高山帯、すなわち森林限界の上の世界とは一線を画しています。
「低山」対象とはずいぶん読者をバカにしているように思われるかもしれませんが、日本アルプスだって、下から登れば八割方は森林帯の中の登山。そういう意味では日本の山登りの基本的な部分について考えている——というふうにもいえます。
 覚えておいてほしいのは、森林帯の中では雨はほとんどまっすぐに落ちてくるということです。最近の都市のビル風による風雨などよりずっとやさしい雨が降る。これは嵐の日に山に出かけてみるとよくわかることです。したがって、山道では折り畳みのカサがもっとも合理的な雨具です。
 ただ、行程上の特定の場所で強風と共に横殴りに吹き付けてくる雨もあります。ほんの一時的のことですが、非常用バリアとしてのカッパ、レインコート、ポンチョ、レインスーツなどがほしいということになります。非常用ですから、最初は使い捨てのビニールガッパでもかまいません。あるいはゴミ袋を何枚か用意しておくと、かなり実用的な非常用バリアを適切に用意することが可能です。私は「ゴミ袋キャンプ」なるものの提唱者を自認していますから、それについても後で少しページを割きたいと考えています。
 防風は、夏はあまり気にならないのですが、寒い季節にはバリアに求められる機能として比重がどんどん大きくなってきます。しかも必ずしも完全防風がいいわけでもありません。風に対する自在な対応は、かなり高度な技術ということになるでしょう。
 そういうことの一切合財を含めて、野外完結型の行動である山歩きでの安全性を高め、持つべき衣類をコンパクトに保つために、いずれは購入してほしいのがゴアテックスのレインスーツです。これなどは雨具としてのみ評価するのではおばかさん、非常用バリアとしていまのところ絶大な価値をそなえているという多目的装備という視点で選びます。

★食べ物・飲み物
 経口燃料としての水と食糧については、書き出せばきりのないところです。とりあえず次のように列記することにしています。
「水筒+昼食用飲み物+昼食+おやつ」
 水筒の容量はここでは問いません。休憩ごとに取り出して一口ごと口を湿らせることが、ここでいう水筒の一番重要な役目です。容量よりも扱いやすさが重要です。
 そこで昼食時にお茶代わりに飲むものは別に考えます。紙パック入りの飲み物や、缶飲料を臨機応変に用意すると無駄がありません。途中に茶店があるときにはそれを当てにしてもいいわけで、計算が狂った場合のために、缶飲料一本を非常用としてザックに放り込んでおくようにすればいいのです。この非常用を自動販売機でホットでも売られる缶飲料にしておくと、冬には缶ごと暖めて値千金のホットドリンクとすることができます。
 昼食は「駅で買える弁当も可」としています。私の場合、妻が弁当を作ってくれないわけではないのですが、出がけに駅でおにぎり3つ買っていくというのがスタンダードになっています。ポケットに入れておいて歩きながら食べられるし、何回かに分けても食べられるという臨機応変が身上の行動食として、おにぎりは、まあ、上出来な選択なのではないかと思っています。安いですしね。
 そしておやつについては、凝り出せばきりなしです。私のように持たないという原則でもいいのですが、日帰り登山なら、予備の行動食と非常食を兼用するようなもので、ちょっとぜいたくなものを持ってみることから始めてみることをすすめます。

★小物・袋物
 私の「糸の会」ではその他の装備を「小物・袋物」とくくって、次のように列記しています。
「地図+時計+ポケットライト+(高度計)+(カメラ)+デイパック」
 出発前に地図上でどのようなシミュレーションをするかについてはこの本の重要な骨格のひとつなので見ていただくとして、その地図に行動時間を重ねていけばナビゲーションはほとんどOKというのが私の考え方です。(もっとも「一般コース」で「道をはずれない」という条件を前提にしているわけですが)
 森林帯の登山道は天候の悪化に対してはきわめて安全なのですが、展望がきかないために、道標がしっかりしていないと道に迷います。これが「低山」の一長一短というわけです。
 そこでナビゲーションの基本として、ルートをはずさないためには、日本の山では高度計によって現在位置を把握するのが合理的です。(現在地点を経度・緯度のかたちで直接知ることのできるGPSはまだすこしおおげさかもしれません)
 中高年の登山者はその社会的な環境から単独行が多くなり、ゆるい関係で結びついたチームのリーダー役をやることになる可能性も大きいようです。そこで高度計内蔵の腕時計を使うことを常識としたいと私は考えています。
 ポケットライトは安くて小さくて、口にくわえられて、もちろんポケットに入れておけるような正真正銘のポケットライトという意味です。これの使い方には十分なスペースが必要なので後で書きますが、とくに秋の山歩きには忘れてならない第一級の非常用装備です。
 そしてデイパック。入れ物は、ここまでの装備ならデイパックで十分でしょう。あわてて中途半端な登山用ザックを買うことに私は反対なのですが、それは靴と同じくらいいい加減なものを買わされてしまうことが多いからです。登山用ザックは目が肥えてから、きちんとした店で、十分に時間をかけて選ぶことをすすめます。
 それに対してデイパックというのは、いまや若者たちの日常的な道具にもなっていて、どこで買っても、シロウト考えで選んでも、まあ安全です。こまかな機能にこだわるよりも、むしろ全体的なデザインなど、自由な目で気に入ったものを選んだ方が賢いかもしれません。あえて付け加えれば、「大きめのものがいいですよ」というくらいです。

伊藤幸司=初歩の山歩き(原稿)
1996.4.24実技資料



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