山咲 野乃香……花いかだ
ほんとうの空のもと・・・――2008.2.15
■ほんとうの空のもと・・・――2008.2.15
くろがね小屋では「紙」を食べてもわからなかった。
4×2センチほど食してしまってからやっと気付く。それは豆乳ドーナツについていたパラフィン紙。
ドーナツの底には薄くホワイトチョコ、上にはスライスアーモンドが乗り、若干のわかりにくさはあったにせよ、何をそんなに動転していたか?
いやあ、何って、あのよろめかんばかりの猛吹雪のせいに決まってるでしょうが!
コーチ的には足跡やらスキーヤーやらで「演出不十分」だったかもしれないが、ワタクシ的にはサイコーの雪山舞台でありました。
実は、出がけに「もうお前の顔は見られないかもしれないから」と夫(日頃から雪山にだけは絶対行ってはならぬとのたもうヒト)はまじまじと私を見つめ、私も「そうね」と見つめ返して別れを告げ、既に自宅玄関先から雪山演出はムード満点(熱い抱擁はないにせよ)で幕開けしていたのです。
まだ3回しか孫を抱いていない、死ねない!と思ったヒロインのクライマックスがヤギのようなザマではいけない。
いや確かに、未体験の緊張で集中力は高まり、五感も研ぎ澄まされ別人格にパワーアップするがごとき感触があったのに! 暖かい小屋に入った途端全て緩んで、いえ緩みすぎたのが真相か。
失敗はまだ続く。手袋にはゴム輪をつけていたのに手を通し忘れ落として飛ばされそうになる。
記念撮影の時にはザックカバーの被せが甘くなびいてしまう。しまうのに手間取り、結局コーチに押し込んでもらう。その間、数分素手になってしまった哀れなヒロイン。
そしてマヌケはまだまだ続く。手袋をしてザックを背負うとチェストベルトも自分でははめられず、メンバーにやって頂く。
あ〜、最悪! 手袋の選択を間違えた。していたのはスキー風のもの。アンダーはフリース地でゆるめのため細かい作業ができず、アウターはストックを握った形で半分凍って固まったような状態。(因みにブラックダイヤモンド製。5千円近くした)
もう1組用意していたのは昨年高峰高原で使用した、アンダーはぴったりのフリースに肘まであるゴアのミトン。こちらにすればよかった。前者のほうが暖かいかと思ったのが誤り。フリースでゴア製のものをしている方もあり。学習しました。
次なる間違いは顔まわり。小屋までかけていたサングラスは氷結(あまりの顔寒に口元を襟で覆い蒸気をあげまくったせい)。ならば小屋からはスキー用ゴーグルに変え、ポリエステルで筒状の目出し帽風のものを被るも、同じ理由でゴーグルもあえなく氷結。
花粉症で新型マスクに目のない私は、99%めがねが曇らないといううたい文句の鼻脇にパット付のものを持参していたのだが、そちらがベターだったのか。胸内ポケットで日の目見ず。アホ!
マチガイだらけの逆境の中、頂上をめざすも、目印の赤旗のついたさおのなんと心細いこと。初参加のI氏の霜だらけの顔は皇軍の八甲田彷徨を連想させる迫力。
登頂を断念したところで正直ホッとした情けない私。
雪穴でのお茶と竹炭まんじゅうでかなり正気になって、落とし穴を楽しんだゲンキンな私。
そして、突然のようにゴンドラの駅に出てしまった時には、いつもなら耳障りなだけのBGMが少々懐かしく聞こえ、まるで遭難者の心境となった私。
また来冬、吹雪の安達太良で別世界のヒロインめざす、懲りない私です。
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