山咲 野乃香……花いかだ
ドングリ達の新記録…両神山――2008.6.17
■ドングリ達の新記録…両神山――2008.6.17
ガイドブックを読むほどに、これはちょっと危ないかもしれないと思った。
八丁尾根には約20ヶ所、30本以上の鎖場という記述+脅し文句?イロイロ。体力度2、技術度、危険度、共にMaxの3。
私はといえば、岩っぽい山、鎖場も少しは経験があり、その都度コーチからは三点確保その他の必要最低限の事は教わってきたものの、「初心者」には間違いなく、技術度は限りなく0に近いわけ。
頼ったのは、コーチの「山の道 山の花」の記述。「『危険度は高くないが』スリル満点の登降」というくだりと、「『難易度は高くないが』歩く人の力量によって時間に長短の出る好例」という2ヶ所。
それに計画書の「雨ならまた考えます」と、当然ながら「安全第一」という文言。
加えて、どちらかと言えば「岩っぽいも好き」と思い込んでいる自分と、「わたしが50代なら絶対行く!」と言うMさんの激励で、参加を決心した。
「天気運」は先月2回の山行で使い果たしたかという感じの出だしだったが、新緑の時季の雨はさほど苦でもなく登山は静かに始まった。しばらくして、次から次へと二輪草の大群落。雨の中、皆花をすぼませうつむいており、何か全く別の花のよう。かわいらしさだけではない表情を感じる。
清滝小屋ではじわじわと暖まる薪ストーブがありがたかった。電気を消し、赤いランプに灯をいれてもらうとあー、この明るさにはどんな打ち明け話が似合うのかしらとピントのずれた事を考えていると、薄明かりの先には
歯ブラシをくわえたコーチの顔があり、少々興ざめする。
翌朝も出発時にはしのつく雨。コーチも管理人さんには「戻ってくるかもしれません」という挨拶で出立。
両神山山頂でもUターンかなぁ、雨があがってもツルツルは必至だょ・・・と内心弱気の私。
天気もこの気持ちを弄ぶかのようにドラマチックに変化する。そして、「晴天のへきれき」となる!
いつかは、一生に一度は見てみたいと思っていた。しかし、まさか今回、この両神山でとは!
晴天では見えぬ、「ブロッケン現象」を体験。
東岳を過ぎてしばらくの所だったと思う。右手の崖があまりに深く落ち込んでいるようでふと覗き込むと非常にはっきりした美しい虹色の輪がまん丸く見えるではないか。しかも二重!
中心の丸い影が自分の頭だということに気づくまでしばし時間がかかった。大声でコーチを呼び戻し撮影してもらう。
「まさにブロッッケン。ご来迎」とコーチに教えてもらうまでわからず。
子供の頃、富山出身で立山をこよなく愛した亡父からブロッケン現象の体験を聞いていた。幼い私は「ブロッケン」と「フランケン」がいっしょくたになり、山に映る大きな影というイメージで恐ろしげなものを空想していた懐かしい思い出がある。高山特有のものと思い込み、虹色の光輪も知らなかった私には非常な驚きだった。
「尾根の日陰側かつ風上側の急勾配の谷で、山肌に沿って雲(霧)がゆっくりと這い上がり、稜線で日光にあたって消える場合によく観察される」というウィキペディアの記述そのものだった。
光背を負った私・・・思わずはしゃいだものの、ちょっと待て、浄土はまだ早い!あわてて本物のお迎えにならぬよう念じた。
その願いも通じ、無事の帰途。車中で「参加を後悔した人います?」という思いがけないコーチからの問い。
私を含め4人のオバサンたちは口々に否定。ピンチで冷や汗をかいたり、少しばかりの擦りむき、あざ、痛み、必至の形相等々あったものの、大いなる達成感と共に「楽しかった」で落ち着いたと思う。
岩登りを習っているS氏の模範演技も見られたし。ドングリの背比べだったオバサンたちはそのスパイダーマンぶりに痛く感動したのだった。参加を後悔したのはコーチだったのでは? 岩稜の標準コースタイム2〜2時間半の所、コーチの今までの経験では5時間(参加者20名程)と言う。そしてこの度、4人のドングリ共はその記録を前人未到の域にまで大幅更新し、なんと7時間!「非常にコストパフォーマンスがよかった」とほざいてしまったが、コーチ曰く「追加料金もの!」
ごもっともです。目が離せぬドングリのおしりを見つめ続け、時には檄をとばすこと7時間。ウホッ。おまけに最後は借金までする輩のいる始末。(少しでも荷を軽くしようと財布まで軽くし、福沢さんを留守番させてしまった私)ドーモスミマセン。
いつでも懲りないワタクシメ、次回はぜひ晴天のもと軽々と岩稜をこなし、「剣」解禁のお墨付きを頂戴するのが夢でございます。
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