曽根 一郎さんから「飯豊はいいで」
………2006.8.24
■2006.8.24――曽根 一郎さんから「70の手習い」のパソコンでポイントゲットレポート「飯豊はいいで」。今回は大作ですので2ポイント進呈しますが、今後はワンエピソードに絞って、いくつかに分けてお寄せ下さい。
◆飯豊はいいで――曽根 一郎
●私にとって、飯豊連峰縦走は今年の山行の最大のイベントであった。参加する何ヶ月も前から期待と不安の入り混じった気持で当日を待っていた。
●飯豊山、大日岳、を初めとして全部で11の山々を縦走することになっているので、大いにやり甲斐のある山行であるというチャレンジの気持と共に大丈夫かなという不安もあった。
●参加者は男性は私だけ、あとは女性の方つわもの揃い7名ということで、紅一点ならぬ、白一点ということになった。
◆1日目
●初日は喜多方の民宿で泊まることになり、有名になったラーメンを食べに行ったり、隣の駅の山都までそばを食べに行ったりと英気を養った。
●ラーメンはどんなに美味しいものが出てくるのかと待っていたが、出てきたものは汁がやや油っぽくて麺はごく普通の柔らかめのもので、期待したほどではなかった。
●そばは手打ちのためしばらく待たされたが、歯ごたえがありまずまずの味であった。そばそのものの風味を味わうため、水につけてたべる「水そば」なるものを食べたのは初めてであった。
◆2日目
●2日目からいよいよ縦走が始まり、うす曇りのなか川入の御沢登山口を9時すぎに出発、地蔵山までの約600mの登りと、そこから三国岳の小屋までの約160mの登りを経て15時30分ごろ三国小屋に着いた。
●各人とも重さ13kgほどのザックを背負っての地蔵山までの登りはかなりきつかった。伊藤コーチのザックは30kgとのことだった。
●到着後、食事の準備のため伊藤コーチと私は約50m岩場を下った水場へ水汲みに行き17〜18リットルの水を手提げ袋状の5リットル入りポリ袋2つと鍋2つにいれて、伊藤コーチがあの大きなザックに入れて運ばれた。
●水場の水量は割合豊かで例えが悪いが小便小僧が勢いよく出している感じで、水質は良好である。
●三国小屋は改築されたようで鋼板張りの綺麗な2階建ての小屋で、40人ほど収容できる。トイレは小屋の中にあり水洗で使うとき1人ペットボトル1本分の水を提供しなければならない。
●展望は良好で、東南方向には遠く安達太良山、磐梯山を望み、近くではほぼ北側に飯豊山が、そしてその左側には大日岳がみえる。
●小屋の外での食事の準備が進むとともに夕刻が迫り、雲海にブロッケン現象を見ることができた。小屋の管理人の話によれば夜になると、10数個の人工衛星が飛んでいるのが見えるそうだ。
●泊まり客は私たち9名のほか5〜6名だったので、ゆったりと寝袋に収まることができた。
◆3日目
●心地よく小屋泊まり第一夜をすごし、翌朝4時に起きて各人に割り当てられた10食分の食料の中からひとつを準備して、日の出を仰ぎながら食事を摂った。そして6時すぎに飯豊山を目指して出発した。
●今日は快晴となり、厳しい岩稜や急降下や急登もあったが、景色は良し、花も良しという中での稜線歩きは最高の気分であった。
●飯豊山まで5時間の予定を7時間あまりかけてゆっくりと歩いた。
●途中、切合小屋で水槽に溢れている綺麗な冷たい水で喉を潤しひと息いれた。小屋のすぐ前に水場があるのはありがたい。
●小屋は古いが100人以上は泊まれそうな規模である。トイレを新築中でヘリコプターが何回もセメントをはこんでいた。
●飯豊山は二つの峰があり、東峰に飯豊山本山小屋と飯豊山神社がある。神社のお社に入り賽銭を入れて縦走の安全を祈願した。
●そこから20分ほど歩くと西峰に至り、飯豊山山頂に立ったときは「やったあ」という喜びの感動が湧いてきた。展望はすばらしく暫し茫然と眺めていた。
●ここで記念写真を撮ったあと、今夜の宿泊地の御西小屋を目指して2時間ほどあるいた。これから先、3日目、
4日目とまだまだ道のりは長い。
●この縦走でたくさんの花々を観ることができて楽しかったが、その中でも特に印象深いのは、イイデリンドウ、ヒメサユリである。クロユリを観たかったけれど見落としたようだ。
●御西小屋の周りは広々とした台地になっており、展望は良い。建物は三国小屋と同じような鋼板張りで新しく、管理人の話では去年改築されたとのこと。しかし、階段の位置が悪く2階に上がるのが不便であった。
●収容人数は40人ぐらいで、この日は満員の状態であった。トイレは小屋の中にあり、水洗で使用前と後に延べ棒のハンドルを2〜3回手前に引いておかなければならない。
●水場は300mぐらい離れたところで、20mぐらい降りたところにあり、水量は豊かである。
●9時間ほどの長い道のりを縦走したあとのビールはとても美味しかった。ところで、ビールの値段は三国小屋では350ml入り700円で、御西小屋では1000円だった。夕食を摂りながら景色を眺めつつ時の過ぎゆくのをあじわった。
◆4日目
●小屋泊まり第二夜が明け、4時に起き5時過ぎにサブザックで大日岳の往復登山に出発した。 快晴の爽やかな早朝の中をやや早いペースで進み、山頂近くの急な登りも一気に登りつめ6時半に頂上に到着し、飯豊連峰の最高峰(2128m)をきわめた。
●しばし眺望を楽しみ写真を撮ってすぐに引き返し、8時半に御西小屋を出発して烏帽子岳、北股岳へ向った。
●途中、御手洗の池で水を汲みカレーライスとコーヒーの食事をした。小さな池でオタマジャクシやボウフラもいたようだが、濁っていなかったのでこの水を使った。
●第3番の小屋の門内小屋まで、5時間の行程を7時間かけて歩き縦走の本命部分を楽しんだ。空はどこまでも蒼く澄みニッコウキスゲが鮮やかに映える。
●マツムシソウの紫、ハクサンイチゲやチングルマの白、シナノキンバイの黄、ヒメサユリのピンクと色とりどりの花が咲き競っている。燦々と照りつける太陽の下、ほとんど疲れを感ずることもなく歩いた。
●門内小屋に3時半に着くと、大勢の人が先に着いていたので場所取りの割り当てで、私たちは小屋泊まりが4人と、テント泊まりが5人に分れた。各人の希望で小屋泊まりは伊藤コーチと私と女性2人となり、あとの女性5人は200mほど離れた下の方にテントを張った。
●水場は200mほど離れたところに雪解け水が豊かに流れており清らかだった。
●テントにみんな集まり赤飯やいろいろなスープで縦走最後の晩餐を楽しんだ。
●この小屋は古いが御西小屋より大きく60人ぐらい収容できる2階建てである。トイレは外にあって男女別になっており水洗式で水のくみ上げは自転車こぎで20回行う。
◆5日目
●翌朝4時に起きて朝霧が立ちこめるテントで食事をとり6時に出発した。
●いまだ晴れぬ霧の中を地神山から丸森尾根を下って飯豊山荘へと向ううち、霧も晴れ軽やかな気分で標高差およそ1500mを下っていった。
●行程もいよいよ最終段階に差しかかった頃、ギザギザした岩場を降りていた私は左足を滑らせて、そのはずみにバランスを崩して前のめりになった。
●そのまま地面に降りようとしたが、ザックの重みで頭から左の木の茂みに転がって一回転した。幸いにも怪我も何もなく済んだがこれは飯豊神社に安全祈願したご利益だと思っている。
●転がる瞬間を見ておられた伊藤コーチが痛いところは無いかどうか訊いてこられたので、大丈夫であることを告げて這い上がろうとしたら、そのままそこに居るようにといわれた。
●待っていると伊藤コーチは枝をかきわけ私のところにやってこられた。私に何の怪我も無いことを確認されたので私は3mほどよじ登って坂道にでた。
●坂下で待っていた女性の皆さんから「大丈夫ですか」と声をかけられたので、恥ずかしさの混じった照れ笑いをして手をふった。
●気をつけて下山していたが一瞬の出来事で転がり落ちてしまった。今後の教訓にしたいと思っている。
●伊藤コーチから半ば冗談まじりに「転がり落ちるときどんなことを考えたか」とたずねられたので、私は「茂みの中だから死なないと思った」とこたえた。
●いま考えると無傷で済んだのは、かえって手足で支えたり踏ん張ったりしなかったからかも知れないと思っている。
●ようやく12時半ごろ飯豊山荘にみんな無事到着してお互いに長い縦走での健闘をたたえあった。そしてお風呂上りのビールとそばは何ともいえずうまかった。
●その後、新潟に出て寿司を食べて今回の縦走の締めくくりをした。
●おわり
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