2007.3.8_コーチから――「ワンポイント・レポート」粗製乱造のすすめ


■2007.3.8_コーチから――「ワンポイント・レポート」粗製乱造のすすめ
◆2007年度上半期の計画を発表した「3.5お知らせ」に次のように書きました。
◆ポイントゲット・レポートの改名と変更について
●2005年の後半からはじまった「ポイントゲット・レポート」についてです。以下に前回お知らせの文章をそのまま再録しておきます。
●その前に、「ポイントゲット」はいくぶんえげつない名前ですので今後は「ワンポイント・レポート」(1,000字以上)としたいと思います。1テーマレポートという意味と、1ポイントゲットレポートという両方の意味にかかっています。
●趣旨は以下のとおりです(当初発表した文章をそのまま引用しています)
――(糸の会にかかわらず)山から帰っての印象、感想、考えたこと、ハプニング、事件、反省……などをエピソード的に(エッセイ的に)書いてメールで送って下さいというお願いです。
――山歩きのなかのひとつのポイントについて1,000字以上(いくらでも)書いていただければ、すなわちポイントゲットになります。
――まず、ホームページの「糸の会」欄に掲載させていただいて「1ポイント」を差し上げます。力作(と判定したもの)には「2ポイント」差し上げて、「10ポイントで☆印1個」としたいと思います。このポイントは年度に縛られません。
――お送りいただいたレポートは会員欄から表のページに移して公開することになるかと思いますが、ホームページの外には出しません。
――文章の上手、下手などは関係ありません。自由にお書き下さい。コーチに対して、きつい、批判的な内容があっても当然かまいません(ただし他の参加者を傷つける内容はご遠慮下さい)。点、丸や改行、数字、記号、スペースなど外観的な調整はしますが、いわゆる加筆、書き直しに類することはしません。もちろん執筆者名もきちんと出します。
――「ポイントゲット・レポート」によって、山歩きのなかにひそむさまざまなおもしろさが立体的に浮かび上がってくるはずだと考えています。総花的な「行動記録」を除外する理由はそこにあります。
●……ずいぶんたくさんの方に参加していただきましたが、現在までに10ポイント獲得された方はいません。当初、「1日で10本書いて、1回タダにしてやる」などという人が現れるのを期待していたのですが、想像以上に身構えがあるみたいですね。ほんとうは「1日10本」ぐらいの軽いレポートをいただきたいのですが、とりあえず暫定的に、2007年度は「5ポイントで☆1個」とさせていただきます。
●……となると現在のところ国木田 之彦さんが6ポイント、日比生 夕紀子さんが5ポイントですから、新年度早々に☆印1個にエクスチェンジ。ほかに4ポイントの方が何人かいらっしゃるので、どうぞもう1本お送り下さい。もちろん「1日で5本」というような量産レポートの登場もあいかわらず期待しています。

●と、以上がすべて引用です。
●多くのみなさんが戸惑っているのは「量産レポート」という部分ではないでしょうか。
●私は本気で「粗製乱造」を期待しているのです。
●話はすこし長くなりますが……、大昔、粗製乱造覚悟によって、文の書けないカメラマンだった私が、文を書くおもしろさ、原稿料をもらううれしさにひかれていったという過去があるからです。
●30数年前のことですが、私は近畿日本ツーリストの社長室に併設されていた日本観光文化研究所というところに出入りしていました。民俗学者の宮本常一が所長。合併前の日本ツーリストの社長と意気投合して「旅」について考える研究所を立ち上げたところでした。
●宮本常一の長男の宮本千晴さんが都立大山岳部のOBで、相棒の向後元彦さんが東京農大探検部の創設者。ふたりはその後世界のマングローブ植栽に転進して現在に至っていますが、当時は日本の九大学(だったか)の山岳部OBが集まってぶち上げた南極大陸最高峰・ヴィンソンマシッフ登山計画が挫折した直後でした。「旅」を考える研究所をつくるなら地球規模で考えたいという「海外部門」を立ち上げるべく、大学探検部・山岳部の若手OBを横断的に呼び集めたのです。
●そのころ、山と渓谷社のAさんという編集者が単行本の企画を持ち込んできました。「400枚書けたら本にする」といういい加減な話でした。
●そのときに400字づめ原稿用紙400枚を書き上げたのは2人でした。ひとりはオートバイのオフロードツーリングに興味あるひとなら知らない人がいないという賀曽利隆さん、もうひとりはテレビでグレートジャーニーを展開している関野吉晴さん。正直、2人ともひどい文章ではありましたが、一気に書き上げてきたのです。
●400枚書くということは、文章がうまいとか、体験がおもしろい、というような単純なことではないのです。どんな内容であれ、どんな文章力であれ、エネルギーを書ききるという一点に集中できるかどうかです。マラソンでいえば、完走できるかどうかなのです。
●そのあと、地形図を1枚持って歩いて400枚書くという企画が大阪の本屋さんからありました。10人ぐらいが取材費をもらってスタートしたのですが、その出版社が教科書部門を拡充しなければならないということで企画を撤回したのです。
●そのときに原稿が上がっていたのは私だけでした。その原稿が雑誌「岳人」で連載され、『富士山・地図を手に』という単行本になったのです。
●文の書けない連中が、気合いで書いただけの原稿でも、一定量以上が書けるならとりあえず道が開けるという体験をしたのです。その後長い文章を書くというチャンスは近畿日本ツーリストのPR誌「あるくみるきく」でたっぷりと体験させてもらえました。
●そういうことから、旅から帰った人にレポートを書いてもらうというプロジェクトをはじめたのです。
●1974年ごろから始まる「あむかす・旅のメモシリーズ」で、ひとつは手書き(校正作業が不要になる)、もうひとつは50枚以上(50ページ以上になると書籍となって国会図書館に納本できる)というガイドシリーズでした。
●旅から帰った人が、つぎに出る人のために書き残す赤表紙のミニ本。紀伊國屋書店(新宿本店)とマップハウス(渋谷パルコ、のちに三省堂本店)にながく置かれることになりました。
●89冊出て、1988年で廃刊するのですが、私の自慢は、書棚の獲得が日本一難しいといわれた紀伊国屋書店に幅1mほどのスペースをがっちりと確保して、納本も請求もすべて私のワンマンプレイというあり得ない特権を獲得できたこと。
●……今だからいいますが、たくさん売れていたわけではないのです。ところが外国の旅から戻って人たちが、新宿紀伊国屋に売っているという口づてでやってきたらしいのです。当然、あのぎゅうぎゅうづめの書店では聞きますよね。「あむかす旅のメモシリーズ」ってどこですか?
●要するに売り上げよりも、広報価値で許されていたらしいのです。
●旅行から帰って、50枚以上(400字ベースでした)書き切れた人は、それだけの「何か」があったといえるのです。
●いま糸の会で提案している「ワンポイント・レポート」は1,000字以上です。50枚でも、400枚でもないのですが、一気呵成に10本ぐらい書き殴ってみていただければ、それがどういうことかわかります。
●文章がうまいとか、内容がおもしろいとかではないのです。体験したものから具体的な話を絞り出せるかどうかなのです。ですから「書ける人」と「書けない人」にはっきりと分かれます。ほんの一面的な課題ですから「できる」「できない」にあまり意味はないのですが、それが「できる」人にとっては、ひょっとするとなにか大きな発見のきっかけになるかもしれません。
●へたくそな文章でも、あほな話でも、10本書き続けられるなら、それは「何ものか」ではあるはずです。5本ではちょっと軽いかなと思いますが、同じかもしれません。
●だまされて、調子に乗って、一気に5本書いてみようかというひとがひとり、ふたり出てくるはずと見ています。すこし穏やかな人は、山に行ったら、かならず1本書くというような縛り方でもかまいません。「書ける」「書けない」ではなく、「書く」「書かない」ということだと思います。
●やめるのは自由ですから、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
●……というお誘いなのです。


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