2008.8.22_矢野 博子――ワンポイントレポート「トムラウシ山」


■2008.8.22――矢野 博子さんからレポート「トムラウシ山」
●8月12日 
 10時40分羽田発の飛行機で帯広空港にむかう。帯広に嫁いできた高校時代の友人が空港に出迎えてくれる。
 昼食を済ませてから 登山中の食料を近くのスーパーで調達。
 3日分となるとかなりの量になるが パンにスープというのが基本になった。高級な無添加のパンでなく 安い添加物の入っているパンを敢えて購入。
 買物を済ませて大雪高原山荘に向かう。所要時間3時間。この山荘は”秘湯の宿”に選ばれているだけあってお風呂がとても良かった。露天風呂、湯質ともに申し分なく お料理も山小屋というより 日本旅館並みで食事の最後に出されたメロンは逸品だった。今年の9月は予約が一杯で空き室なしというのも頷ける。
 旅館で明日の朝食とお昼のおにぎりを用意してもらう。

●8月13日 
 午前4時 宿を出発。車で40分あまりでクッチャンベツ登山口に着く。途中の林道は暗証番号を知らないとゲートが開けられない。(因みにこの番号は毎年変わるとかで 忘れてしまうと 帰りに林道から出られなくなってしまうので要注意)
 車の中で 朝食を済ませていると 雨がポツポツと顔に当たる。天気予報ではこれから下り坂。予定を変更するかの決断を迫られたが 荷物を全部持って予定通り行く事に決定。(何せ お盆の一番運賃の高い時の飛行機を使っているので そうそう止められない(笑)
 沼の原北尾根取付まで平坦な道を30分歩くが 途中二箇所 かなりの急流の川の丸太橋を渡る。荷物が重いので バランスを崩すのではと不安があったが 最終手段としては丸太に抱きついて 這って行こうと開きなおり進む。
 今回の登山では 案内してくれる友人が普段私がはいているゴアの運動靴をみて”それでは北海道の山は無理よ”と忠告をしてくれていて 立派な登山靴を購入していたのだが 一度練習に履いてみたら その翌日腰痛になってしまい あえていつもの靴で挑戦することになった。この丸太橋は ダブルストックとこのいつもの靴で苦労なく通過できた。
 登り二時間半。標高差345m。沼の原は湿原植物群落が見られ 広々とした景色に足どりも軽い。残念ながらトムラウシ山は見えない。大沼から五色岳まで登り3時間半。標高差433m。五色岳の頂上で幾つかのパーテイに出会う。
 ここからヒサゴ非難小屋まで標高差なく主に木道を二時間歩く。沢山の花畑に目を奪われる。ヒサゴ小屋に下りていく所の脇には大きな雪渓があったが 以前はもっとこの雪渓が大きく 木道などの整備はなかったとのこと。
 二時前に小屋に到着。沼の回りには テントがいくつも張られていて賑わっていた。山小屋の近くに水場があることは何よりも有り難かった。3人でまず寝床を確保して 夕食の準備にかかる。
 シーズンを少し外れているのかギュウ詰めではなかったが 夕方近くに入ってくる人が二階でドンドンやっていて 既に寝る体制に入っていた私達は中々寝られなかった。それでも 8時になるとシーンとした。

●8月14日
 荷物を小屋に置いて トムラウシ山往復だけの私達は小屋をゆっくり出発。往復6時間の予定。小屋からは遠くにニペソツ山が見える。
 憧れのトムラウシ山まで本当に行けるのだろうかとここまで来ていても信じられない気持ちだ。
 今の所 足も痛くなく 問題はない。ヒサゴ小屋からしばらく行くと 雪渓があったが 軽アイゼンを使うほどでも無く 巨岩に突き進む。ナキウサギがどこかで鳴きあっているが ついに姿は見せなかった。沼あり、日本庭園あり、岩場ありで変化に富んだコースだ。
 巨岩には黄色のペンキで道案内がついているので必ず次の印を確認してから足を進めないと迷ってしまう。足を踏み外すといけないのでゆっくりのテンポで慎重に登っていく。
 小屋から3時間 ついにトムラウシの頂上に立つ。360度の眺望にしばし見とれる。十勝岳連峰が間近に見える。頂上で喜びに浸っていると にぎやかな声が聞こえてくる。”日本百名山達成最年少(10歳)”という家族が到着した。
 3歳で富士山から始まって 100番目のトムラウシ。用意していた横断幕を張って記念撮影をしている。喜びと感動を私達も味わった。記録達成した本人は少しも疲れた様子なく 一番嬉しそうだったのはお父さんだった。
 百名山達成という夫婦も上がってきて こちらは奥さんが感激の涙を流していた。
 山頂でしばらく時を過ごし 同じ道をヒサゴ小屋まで下りる。普通下りの方が時間がかからないのだが 巨岩はゆっくりでないと渡れず 3時間かかった。小屋は昨日より随分少ない利用者だ。

●8月15日
 ヒサゴ小屋早朝出発 一路 来た道を戻る。途中何度も 後ろを振り返り 景色を目に焼き付ける。泊まった小屋が段々小さく 下に見えていく。
 一路来た道を戻るはずだったのだが 化雲岳に出てしまう。これは未だに謎なのだが 道をどこかで間違えたらしい。何回もここを訪れている友人も首を傾げていた。
 朝露と昨晩少し雨が降ったのか 途中の 背丈ほどの這い松林を抜けるのに 上半身がびっしょりとなり ゴアの雨具をつけて下山となる。 途中で湯を沸かして 飲んだ 熱いコーヒーがこの上もなく美味しかった。
 あと一時間で下山というところで 大雨になる。最後にあの急流の丸太橋があるので緊張したが 無事通過。林業に携わっている人なのか追い抜いていった人3人が 履いていたのがゴム長靴だったのには驚いた。2時前には下山。糠平温泉で汗を流し 20時30分帯広発の飛行機で帰路についた。
 登山暦の浅い私でも 月イチの山歩きの積み重ねで大きな山に行く事が出来 そんな事実に自分で感動してます。


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