山岳保険のこと
………1996.7.1(糸の会お知らせ)


■山岳保険に関するお答え

●茨城県下館市のM.佐藤さんの初参加がなかなかうまく実現しません。まずは[09]鳴虫山の後でいただいた手紙を紹介しておきます。
★前略。昨日は電話で失礼いたしました。(5月)11日、日光までの所要時間を勘違いしたのか、東照宮付近の駐車場に7時半に到着しました。鳴虫山山頂には10時に着きました。頂上でしばらく休んでいましたが、山行計画では、皆様の到着は13時ころと判断しました。頂上での3時間が待ちきれず、約束を違え下山させていただきました。
★この時期、鳴虫山へはヤシオツツジを目あてに登られた方が多いと思います。昨年は多くの花をつけたようですが、今年は例年の半分程度の花しかつかず残念なことでした。
★さて、鳴虫山への初参加がかないませんでした。6月8日の大岳山と、8月10日の丹沢=モミソ沢の山行予約をお願いします。
★山岳保険について確認したい件があります。私は東京都岳連の個人会員登録をしております。そのため山岳保険にも通年で加入しております。山行毎の保険に入る必要があるかどうかご連絡下さい。

●この手紙に対して2つほど書いておきたいと思います。
●佐藤さんは日光のご出身だそうで、鳴虫山は裏庭みたいなところだそうですから、現地で合流できれば……という含みを残していましたが、「糸の会」の基本的な考え方では、集合場所でいっしょになった人だけが当日の最終的な参加者です。いない人の捜索などはしないと決めています。つまり遅刻は切り捨てです。(リーダーである私が遅刻した場合にどうするかを決めておかなければいけませんが……)。電車を1本待ってみることができる場合もありますが、できない場合もありますから、集合できた人だけで山歩きを行なうという原則は立てておいたほうがいいと思います。したがって佐藤さんと山頂でお会いできるかもしれないとは思いましたが、それ以上のことは考えませんでした。
●佐藤さんの手紙に関するもう1点は保険のことです。山行ごとに毎回掛けているのは通常の国内旅行傷害保険で、死亡約1,000万円、入院6,000円/日、通院4,000円/日というもので、掛け金を最低金額の500円ジャストにするために死亡補償の金額を微調整しています(団体割引が効く人数の時には補償金額がすこし大きくなります)。いろいろ考えたのですが、やはり「糸の会」が初歩の山歩きに徹するという意味で、毎回のこの保険は省かないほうがいいと思うのです。(小さな事故に関して少額の補償をしてもらうというのがこの保険の役目だと考えています。それと対社会的な最低限度の備え)
●それとダブリますが山歩きが生活の一部に入り込んできた人には個々に「山岳保険」に入っていただきたいと思います。佐藤さんが加入されている山岳保険もそれに当たると考えていただきたいのです。
●この山岳保険については4月のお知らせ(通算118ページ)で、小屋泊りの計画に参加される方に掛けていただこうかと書いたまま、そのままになっています。かならずしもドンピシャではないらしいという部分がまだひっかかっているのです。
●山岳保険というのは山岳遭難の捜索・救出・移送・ヘリチャーターなどの経費をカバーする「遭難捜索費用保険金」を中心にしたもので、死亡保険金や入院保険金はきわめて低く押さえられているのが普通です。山岳団体が仲間の迅速な遭難救助を可能にするために作り上げてきたものだからです。最近の中高年登山ブームで、その保険に個人加入の道が開けてきたと考えておくといいでしょう。

●たとえばH.小池さんが加入した千代田火災海上保険の山岳保険は、国内でのあらゆる山岳登はんに対して遭難捜索費用が補償されます。
★Aコース……捜索費用100万円、死亡・後遺障害140万円……保険料1年間8,000円
★Bコース……捜索費用100万円、死亡・後遺障害150万円、入院1,000円/日……保険料1年間10,000円
★Cコース……捜索費用100万円、死亡・後遺障害190万円、入院2,000円/日……保険料1年間13,000円
●捜索費用というのは捜索隊が編成された結果生じた費用請求や有料の遭難救助隊を依頼した費用などがありますが、大きな目安は民間のヘリコプターを捜索・救出・移送にチャーターした場合の費用で、頼めば100万円はかかるというプレッシャーをはねのけて、迅速に手配ができるというところに一番大きな意味があるのだと思います。
●この保険では捜索費用を200万円まで増額できるようですし最長5年までの一括支払いをすると保険料は割安になります。
★問い合わせ……千代田保険センター/155世田谷区代沢2-48-33/電話03-5453-4480/ファクス03-5453-1932/担当天野博文

●これよりも新しい時代感覚で登場したのが三井海上火災保険の山岳保険・ハイキング保険です。
★問い合わせ……三井海上火災保険(株)東京第三中央支社/新宿区西新宿2-2-1新宿三井ビル18階/電話03-3343-1076/ファクス03-3343-1076/フリーダイヤル0120-756657/山岳・スポーツ保険担当大川淳
●三井海上火災の山岳保険は岩登り、雪山を含み、ザイル、ピッケル、ハンマー、アイゼンを使用した登山をカバーします。
★A-1コース……遭難捜索費用150万円、死亡・後遺障害150万円、入院なし、個人賠償250万円……年間保険料10,000円
★A-2コース……A-1に入院1,900円/日を加算……年間保険料13,000円
●これは登山計画書の提出の義務はありませんから、事故が発生してから手続きすればいいのです。
●山岳保険は千代田火災海上でも三井海上火災でも大差ありませんが、三井海上火災のほうにあるハイキング保険は休日登山者には大変割安になっています。この場合の「ハイキング」の範囲ですが、山の高さや場所で山岳保険と区別することはなく、「軽登山、沢登り、夏の縦走、スキー登山用」と規定されています。さらに「春山などで雪が所々にあるためにアイゼンを携帯使用する場合、沢登りで補助的にザイルを携帯使用する場合、森林限界あたりをスキー登山するときに一時的にアイゼンを使用する場合、等、冬山、岩登りとしての特殊な技術を必要としない場合は、ハイキング保険の適用範囲となります」と明記されています。北アルプスなどの夏山縦走も一般コースであればもちろん適用されるわけです。
★Bコース……遭難捜索費用500万円、障害見舞金100万円、個人賠償1,000万円、死亡・後遺障害400万円、入院2,250円/日、通院1,500円/日……年間保険料5,000円
●ただしこのハイキング保険には大きな条件があります。(夏休み、冬休みなどを除く)平日の日帰り登山は対象外になっているのです。
●平日も山歩きができるという人のために曜日を問わないハイキング保険(年間保険料7,000円)がありますが、これは割増料金ではなくて、保障内容がガラッと変わるまったく別の保険です。
★7,000円のハイキング保険……遭難捜索費用500万円、死亡・後遺障害210万円、入院1,800円/日、通院1,000円/日、個人賠償100万円
●しかしよく考えてみると、体調を崩したり、病気になる、あるいは転倒してケガをするといったことはいろいろ考えられるのですが、捜索隊や救助隊が出動するような遭難に至るという可能性は行動内容からいってきわめて少なく、これらの保険の遭難捜索費用保険金が「糸の会」の行動でどの程度適用されるか、まだよく見えてこないのです。
●ただ、いろいろなかたちで山歩きをするという場合にはハイキング保険の5,000円(一般勤労者向け)か7,000円のどちらかに入っていたほうが安心だと思います。それとダブる人が出てくるかもしれませんが、「糸の会」では従来どおり毎回500円の旅行保険を参加者全員に掛けます。ご理解下さい。
●とりあえず電話で資料を請求してみることをすすめます。


★トップページに戻ります