三洋化成ニュース・月1回の山登り7……ごみ用ポリ袋でキャンプ
………2003.5



●三洋化成工業株式会社「三洋化成ニュース」2003年初夏号 No.418(2003.5)




●写真番号1987.8.7-131
●田無市公民館の青年向けサバイバル講座の実技編。秩父から奥多摩へ抜けようということで、これはゴミ袋キャンプの第二夜。就寝前のひととき。




●写真番号1997.5.24-206
●防水靴カバーのとりあえずの終着点。テープを巻いてから、靴底部分を切り取った。残ったテープのおかげでかなり型くずれしにくくなった。




●写真番号1996.11.20-221
●90リットルポリ袋で作った半身ポンチョと巻きスカート。頭巾部と反対側の袋底部が背中に回るので、かなり大きなザックでも入ってしまう。




●写真番号1996.5.22-207
●全員に手つきポリ袋の靴カバーをしてもらったら、山頂までなんとかもった。が、よく見ると型くずれし始めている。これからかなり悲惨な状態になっていく。




●ゴミ袋キャンプの本意

●湾岸戦争が勃発したころ、テレビ朝日の深夜番組の中でアウトドアのミニシリーズをつくっていました。その(ほとんど幻の)最高傑作が「ゴミ袋キャンプ」なんですが、ゴミ袋が5枚あれば山の中でも快適(?)に寝られるという実証ロケを初夏と(こともあろうに)真冬にやってしまったのです。
●その発端はさらに数年遡って1987年の夏のこと。いまは西東京市となっている田無市の公民館活動で、青年向けのサバイバル講座を頼まれたのです。大企業の独身寮の多い土地柄で、土日の実技に出られる人がどうしても確定しない。
●そこで、たまたまその日集合できた人を参加者として、食料や必要装備をコンビニで購入して出かけようという行き当たりバッタリ方式をとったのです。
●70リットルの業務用ゴミ袋があれば、1枚を貫頭衣とし、1枚を(底に2カ所穴を開けてパンツのようにはき、もう1枚に足を突っ込むと全身が覆えるのです。残りの2枚は古新聞2、3日分を中に入れてマットとすると腰から背中までの断熱とクッションが得られます。
●都会が熱帯夜の真夏に、秩父盆地のあたりに出かけてみると、森の中の夜の気温は20度C前後。寒さで目を覚まさなかった人はいませんでした。標高が高くなって気温が下がるのではなくて、緑が地面を覆っていると地熱があがらないということの体験でした。
●最近、京都の写真家(水野克比古さん)を訪ねたら、西陣の町家には水やりのひんやりした空気がみごとに流れていましたが、コンクリートで固められた今の京都でもまだああいう涼風を作り出せるんですね。
●そういうイメージと現実とのギャップを埋める体験には、ゴミ袋のように、タネも仕掛けもない道具を使うのが一番だと考えたのです。
●真冬のロケでは、気温は零下、雪が舞っていました。風呂用のスポンジマットを断熱シートに、農業用ビニールシートで風よけテントを作り、貼るカイロを体中にベタベタと貼ったりしました。ゴミ袋だけじゃないけど、女優志願のタレントさんと女子大学生2人といっしょに、やはりゴミ袋で寝たのでした。

◆ポリ袋雨具の進化

●1995年に山無し県の千葉で最初という登山教室を朝日カルチャーセンター千葉で始めました。平日の主婦対象と考えていましたから、必要な装備はゆっくりじっくりそろえていくという方針をとったのでした。
●ところがその講座には強力な雨女がいたらしく、みごとに雨ばかり。秋まで傘でがんばってもらって、その後、きちんとしたゴアテックスのレインウエアを買ってもらおうという方針でゴミ袋雨具の開発に集中したのでした。
●雨具としては90リットルのゴミ袋が合理的なんです。まずはザックごとかぶれる半身ポンチョを作ります。
●まずはポリ袋に2本切れ目を入れておきます。底から25cmと30cm上がったところに(片側だけでいいのですが、底と平行に)25cmの切れ目を入れます。
●切れ目でできた三角が頭巾、5cm幅のテープがあごひもになるのです。
●ズボンを濡らしたくないときにはポリ袋の底を開いて筒にして、巻きスカートにします。止めるのはロープを使ってもいいのですが、南アジアの腰巻きのようにいろんな止め方をやってみるとおしゃれ(?)になります。
●それで非常用雨具としてはほぼ完璧なのですが、欲をいえば靴も濡らしたくなかった。ズック靴の雨よけ作戦も展開したのでした。
●スーパーのレジ袋を包装用品店では手提げポリ袋と呼んでいます。底辺が30cmのものを100枚単位で仕込んでおくのです。
●発想は簡単でした。手提げポリ袋を靴ごとはいて、足首のあたりできちんと縛って、靴底の部分だけをハサミで切り取っておくのです。
●やらされる中高年主婦のみなさんの平均的な想像力では、ポリ袋をはいたまま歩くと足が滑るから切り取っている……というものでした。歩き出したらすぐにポリ袋は擦られ、引きちぎれて路上に散乱するだけでなく、切れ端が垂れ下がってメチャメチャになるという現実的な進行を予測できないようでした。
●真冬の北八ヶ岳で黒百合ヒュッテから渋ノ湯まで、ズック靴にポリ袋をはいただけで下ってみましたが、雪道ではポリ袋が靴底にぴったり張り付いてポリ袋製オーバーシューズとなりました。軽アイゼンなどを袋の上から装着すると、もう何の不安もありません。
●しかし、雨に対しては最後の詰めがなかなか決まりません。靴底を切り取ったときにポリ袋の末端を両面テープで止めてみました。それでザッツオーライなのですが、はがした後の靴に残ったテープ糊の汚れが気になるのと、靴が濡れてからではテープが効かないという欠点が露わになってきたのです。
●最終的に手を打ったのは、ポリ袋をはいた後、細い布粘着テープで靴ごとぐるぐる巻きにします。それから靴底部分を切り取ると、テープが構造材となることから、おおよそ靴の形で長時間耐えてくれるようになりました。歩き方に気をつけて、不用意にめくり上がらせないようにすれば、1日使える程度にはなりました。

◆単純な防水袋として

●ポリ袋はまた、ザックに入れて携行する装備類の防水袋として便利なことはみなさんすでにご存じですが、ザック全体の防水機能を高めたいというときにはひと努力されることをすすめます。
●大きさはザックがすっぽり入るサイズ。登山用ザックの容量はリットル表示されていますからそれを手がかりにします。
●ポリエチレンなり塩化ビニール、あるいはゴム引きの防水袋や透湿防水のスタッフバッグなどなんでもいいのですが、私は東急ハンズで買った0.1mm厚のポリ袋を愛用しています。丈夫さの目安としては米袋。その、ザックが入る袋をザックの中に入れるのです。これでザック本体の内側に防水処理をしたのと同じ使い勝手になります。


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