三洋化成ニュース・月1回の山登り10……身体を守るエアコンディショニング
………2003.11



●三洋化成工業株式会社「三洋化成ニュース」2003年冬号 No.421(2003.11)




●写真番号2001.3.14-313
●清里から蓼科に抜けるメルヘン街道は、麦草峠が国道の日本最高地点とか。生まれて初めてスキーで下るという人にはドラマ、ドラマ、またドラマ。




●写真番号2002.1.9-229
●北八ヶ岳のしらびそ小屋から中山峠への登り。急な雪の斜面だが、狭いので雪崩の心配はない。深い雪の山につつまれているという満足感がある。




●写真番号2001.1.10-131
●雲取山の山頂から七ツ石山へと下る尾根。ラッキーなことに新雪の尾根を踏みしめることができた。1月上旬の、雪の山歩きの至福のとき。




●写真番号2002.3.13-226
●時々猛烈な地吹雪が襲ってくる3月の安達太良山。あだたら高原スキー場から3時間歩くと、厳しい雪景色と、温泉付きのあったかいくろがね小屋。




●写真番号2002.2.9-103
●靴はごくありふれたスニーカーで、防水のためにゴアテックスの靴下をはいている。土踏まずのところにあるのは軽アイゼン。




◆性能が劣化しない化学繊維で

●私は冬も夏と同じペースで山歩きの講習会を開いていますが、アイゼンやピッケルを使う本格的な冬山登山ではなく、雪の樹林帯(滑落もなければ雪崩もないところ)でのいわゆるスノーハイキングとか、歩くスキーとか、洋式かんじきのスノーシュー遊びです。
●そのときの私の服装は、夏冬兼用のドライタイプのTシャツ(ただし標高2,000m級では冬用の肌着上下の最軽量タイプ)に化繊の長袖シャツ。それにフリースの長袖シャツを着ます。それでは寒いかも……というときにはフリースを内側に。下はフリースのズボンです。
●やっぱり寒いということもあるので、フリースの厚手のジャンパーなどを往復や宿用としてもっていきます。
●行動中は外側にゴアテックス(といってもバーゲンで買った私のものを詳しく調べたら東レのゴアテックス対抗ブランドのダーミザクの上着と、タンパク質膜が湿り気を排出するとかいう透湿防水ズボンでした)のレインウエアをウインドブレーカー兼透湿防水のバリアスーツとして常用します。
●ずいぶん薄着に思えますが、私などにはラグビーの方が寒そう。山ではむしろ登り斜面で風のない場合が多いので日射しがあるとフリースでは汗をかきます。そのときには胸をはだけて、体温と気温の温度差を利用して積極的な換気をします。
●もし予想より寒いというときにはどうするか。「貼るカイロ」という発熱体を積極的に利用します。肌着に貼るので体温の環境下で安定した熱源となります。
●雪の山の服装は夏冬兼用のものに、段階的に耐寒性を備えていく、という考え方でいいのです。肌を湿らせないアンダーウエアと、湿り気を放出するアウターウエア。暖かくするというより、寒くしないというのが基本的な姿勢になります。

◆寒さより冷たさに用心深く

●神経を使うのは手・足・頭部の防寒です。頭はフリースや毛糸の帽子で耳までおおえるものとします。頭部からの放熱を防ぐというより、冷たい風から耳を守れればだいたいはOK。非常時にレインウエアのフードが強風の中でもきっちり閉まるようにしておくことが重要です。
●手袋は3枚必要です。まずは薄い化繊の手袋をアンダーグローブとして、はずさずに基本的な作業を全部こなせるようにします。そして2枚目はアウター。いろいろありますが、厚手のフリースが使いやすいと思います。それでマイナス10度Cぐらいまでは問題ありません。もし保温力が不十分なら、手の甲に「貼るカイロ」を貼ります。
●手袋に関してはさらに危機管理的な追加をふたつ。まずは非常用としてゴアテックスの透湿防水ミトンを用意します。内側から手先が湿ったり、外側から手袋が湿ることも多いのです。指先の冷えが戻らないときに、ゴアテックスの透湿防水ミトンをかぶせると、手袋の保温性能を確実に回復することができます。
●それよりもっと重要な危機管理的装備は、手袋につけたゴムの輪。手袋の内側の親指の付け根あたりの位置に20cmのゴムひもを輪にして取り付けます。手袋を外したときに手首にぶら下がるようにしておくのです。これで、手袋を風にとばされるといったかなり確率の高い事故を未然に防ぐことができます。
●足回りは、ドライタイプのアンダーソックスと、その足裏に「貼るカイロ」。その外側にふわふわ感のある厚手の靴下(貼るカイロを保温し、酸素を供給して鉄粉の酸化熱を安定的に獲得するため)をはいて、ゴアテックスなどの防水靴下をはきます。靴はごくふつうのランニングシューズでいいのですが、ゴアテックスの防水運動靴なら防水靴下は省略できます。
●まじめな山男が聞いたら「山を甘く見るな」といいそうですが、だいじなのは雪の山にできるだけ体をさらしてみるという精神です。樹林帯では環境はそうとうマイルドですから、そのなかで冷たさと寒さをきちんと体験しながら「気持ちよさ」を確かめていきます。ここ10年ぐらいの革命的な新素材によって、身にまとうバリアは私たちをほとんどスーパーマンにしてくれていることがわかります。


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