軽登山講座────伊藤幸司
*この講座はBIGLOBE(NECビッグローブ)が公式に設置したstation50において2005年から2010年にかけて105回連載したものです。

【伊藤幸司の軽登山講座030】飛行機をうまく利用する――2007.1.10



■伯耆大山――2003.1.17
樹林帯なら雪崩も滑落もほとんど危険なしに行動できる。まずは登れるだけ登ってみて、楽しい下りを考える。



■伯耆大山――2003.1.25
霧島の最高峰・韓国岳。頂上には雪も霧氷も見えないが、期待の霧氷はたっぷりと味わえた。遠くに高千穂峰がそびえている。



■礼文島――2003.3.4
残念ながら利尻富士は見えなかったし、海が荒れて利尻島へ渡ることもできなかったが、北国の骨にまで突き刺さるような風はたっぷりと味わえた。



■八甲田山――2005.2.9
ロープウェイ山頂駅からの下り。樹氷の中、深い雪に埋もれかかりながら下っていく醍醐味は八甲田山ならではのものといえる。



■八甲田ホテル――2006.2.14
この日、泊まり客は私たちと黒髪の外国人女性ひとりだけ、だったようだ。巨大なログハウスのレストランで評判どおりの夕食を楽しんだ。


●個人参加でグループ化

 最初に断っておかなければいけないのだが、私は最近、飛行機を「うまく利用」できていない。
 理由は簡単で、国内線大手二社の過激な競走による格安チケットブームにのって一時期飛行機利用の登山計画を積極的に立てた……ことがある、という程度のことなのだ。
 私の場合は個人的な計画のように自由でもなければ、旅行代理店を利用したグループツアーの仕組みを使ったものでもない。基本的にはグループで、個人個人がチケットをゲットして、かつ同じスケジュールに合流してくるというあたりを狙ったゲームと考えていた。
 2002年10月から2003年3月にかけていくつかの計画を集中させた。そのチケットゲット作戦を当時の文書から振り返ってみたい。

【2002.10.2の文書】
●飛行機の「格安チケットをゲットできたら参加」シリーズの追加計画を立てました。各自スノーシューを持参して、雪道をパタパタと歩き回るというイメージのスノーシュートレッキング・シリーズです。これならけっこうな斜面でも楽しめますから。
●ANAには期間限定の「超割」と、期間+地域限定の「ふるさと割引」、毎月1日の「1日乗り放題」の、どれも10,000円のチケットがあります。
●JALには毎月7日間程度限定+区間限定で7,000円からの「バーゲンフェア」、JASには同様の「ウルトラ割引(1万円以下)があります。
●なお、各社の予約・案内電話はANA=03-3490-8800、JAL=03-5460-0522、JAS=03-5457-5566、SKY=03-3433-7670など。かけてみるとあんがい親切という印象ですから納得のいくまで確かめてから予約して下さい。フリーダイヤルもありますし、パソコン、携帯電話からのネット予約も可能です。
●とりあえず、街の旅行代理店店頭で航空3社の時刻表をもらって、各データをまずご確認下さい。申し込み時点で便名、発着時刻が違っているときには、原則として始発便と最終便ですのでそれを押さえておいていただければ、計画のほうを調整します。

290=1f2=1.17-19(金土日)
大山山麓=米子空港
●11.17(日)発売のANA「超割」(10,000円)、11.17(日)発売のJAS「ウルトラ割引」(9,000円)を利用。
1.17(金)ANA811=0725羽田→0840米子
1.19(日)JAS279=1840出雲→2000羽田
*なお米子発着はANAのみ、出雲発着はJASのみです。ANAなら、
1.19(日)ANA820=2010米子→2130羽田
でもけっこうです。
●桝水高原スキー場あたりの大雪原で、大山を眺めながらのスノーピクニックというイメージです。レンタルのXCスキーはあるようですから利用するかもしれませんが、持参のスノーシューでまずは出かけてみましょう。
●2泊目は、せっかくですから出雲方面のとびっきりひなびた温泉宿などどうでしょうか。冬の山陰の景色と味をテーマにして……。1.18(土)に帰京という1泊参加も可能とします。

283=1f=1.25-26(土日)
霧島山/開聞岳=鹿児島空港
●11.17(日)発売のANA「超割」(10,000円)、11.25(月)発売のJALバーゲンフェア(9,000円)とスカイマークエアラインズのカウントダウン割引(60-49日前で8,900円、47-28日前で14,500円、27-21日前で17,000円)を利用。
1.25(土)SKY301=0700羽田→0840鹿児島
1.25(土)ANA619=0715羽田→0855鹿児島
1.26(日)SKY306=2010鹿児島→2200羽田
1.26(日)JAL398=2035鹿児島→2215羽田
●1日目に雪と霧氷の霧島山に登ります。霧島温泉泊まりで、2日目は鹿児島経由指宿で開聞岳に登ります。もちろん、3日目以降の居残りはご自由に。
●……としましたが、1日目に開聞岳をやったほうがいいか、など、まだ悩んでいます。行動の細部についてはまだ、変更ありという状態です。悪しからず。

291=2f=2.1(土)
支笏湖畔=新千歳空港
●12.1(日)発売のANA「1日乗り放題」(最大9区間乗り継ぎまで10,000円)を利用。
2.1(土)ANA53=0700羽田→0830札幌
2.1(土)ANA74=2050札幌→2225羽田
*これは往復の予約が取れないと意味がないので、とれない場合の予備としてはANA51=0625羽田→0755札幌、ANA970=2140札幌→2310羽田としておきます。
●10,000円で往復ですから、中味は器に合わせます。空港からあまり遠くないところで雪遊び、ということでとりあえず「支笏湖畔」としておきます。

292=3f=3.2-5(日月火水)
利尻・礼文=稚内空港
●1.2(木)発売のANA「超割」(10,000円)を利用。
3.2(日)ANA571=0935羽田→1120稚内
3.5(水)ANA574=1450稚内→1640羽田
●以前、国立公園の取材で真冬の利尻・礼文に行きました。冬の利尻山は北アルプスなどよりも神々しい白い峰となってそびえ立っていました。
●おおよそ、3.2利尻島泊まり、3.3礼文島泊まり、3.4稚内泊まりという見積もりです。ほとんど観光旅行ですが、雪原も歩いてみたいと思います。

 ――というのが「格安チケットをゲットできたら参加」シリーズの最盛期の計画だった。
 遠くの山に行くのなら、団体ツアーに参加するのが割安だし、近くの山でもある程度の人数がまとまれば、バスを借り切るのが安くて楽だという大原則がある。
 しかし私は、あえて、みなさんに「切符を買って」参加してもらう。首都圏郊外にお住まいの主婦のみなさんなどには、特急列車の切符の買い方さえ知らない人がけっこういる。
 かつては旅行会社にかんでもらってバスを使ったシリーズもあるが「弁当付きのバスツアー」では、参加者はいつまで経っても自立できない。だから金額的に割高になっても、面倒くさくても、ひとりで立てた計画に近いかたちを厳守することにした。アプローチまでをお勉強と考えたのだ。
 飛行機も同様に、自分で電話して予約するという方法を基準にして、ネット予約や、旅行代理店での予約など、みなさんがそれぞれアプローチして体験を集積したいと考えた。「格安チケットをゲットできたら参加」シリーズというのはそういう意味を含んでいた。


●片道1万円

 いろいろやってみてわかったのは、「片道1万円」という目見当だと、広島空港以遠、あるいは青森空港以遠なら新幹線と比べて、絶対的な割安感があるということ。金額的にJRの運賃相当、あるいは夜行バスの料金と並んでくるし、所要時間でも新幹線と甲乙つけがたいものになる。
 格安チケットを極めるということについてはくわしい人がたくさんいるに違いないが、私は金額的には「片道1万円」前後という目安で手を打つことにした。
 そうすると、東京からいくつかの大都市への出張旅行者、帰省客向きの格安チケットで実質「片道1万円」見当のものがいろいろある。ビジネスホテルの宿泊がセットされて、さらに滞在日数が8日以内というような自由度の高いものもある。
 それから、温泉旅館や観光ホテルの宿泊とのパック。さらにスキーパックなど、購入しやすい旅行商品としての格安チケットがいろいろある。
 その一例として2004年から八甲田山のスノーシューハイキングを5回やったが、いずれもスキーパックを利用した。青森空港からの送迎付き(じっさいは利用しなかったのだが)で酸ヶ湯温泉に泊まった。プラス1万円ほどで八甲田ホテルにしたときもかなりの割安感が得られた。
 またスカイマークエアラインズが撤退した後の鹿児島空港へは指宿温泉泊まりのパックを利用して冬の霧島山+開聞岳をやっている。
 通用可能日数の多い滞在型格安チケットを利用すれば、阿蘇山や九重山へも足を伸ばす周遊も可能になる。そうなると福岡空港を起点とする計画も重なってくるので九州は意外に近いという印象をもっている。
 北海道の場合は、札幌起点ならかなり自由度が高いのだが、ピンポイントで旭川、稚内、根室中標津などに飛ぼうとすると、席数が少ないためかなかなかむずかしい。
 個人の場合であれば、マイレージ還元や誕生日割引の同伴者というかたちで小さなグループ旅行を計画できる。しかしもっと自由度の高いグループ登山を個人参加ベースで組み立てようとすると、ちょっとしたコツがいる、ということを知った。
 八甲田・酸ヶ湯温泉利用のスキーパックを使用したとき、かなりやっかいなトラブルが発生した。
 
【2005.2.8-9の計画書】
チケットをゲットしてください
●近くの旅行代理店で「JAL STAGE」(ジャルステージ)の「ステイ八甲田2日間・酸ヶ湯温泉旅館」(商品コードNJ8072C)を2月8日出発分で購入してください。1人部屋で33,500円です。2-3人だと31,500円になります。のっけからダメな場合はお教えください。奥の手が使えるかもしれません。
●飛行機は往路JAL1201便(0745羽田→0855青森)、復路2月9日JAL1210便(2045青森→2200羽田)にしてください。ただし往路がとれない場合はそのあとのJAL1203便(1010羽田→1120青森)でもけっこうです。空港から宿までは無料の送迎サービスがついていますからご心配なく。合流できます。
●けっきょくとれない場合で、なおかつ参加したいという場合には青森行きの夜行バスが往復17,000円であります。ちなみに2120渋谷マークシティ→0800青森駅通り、2115青森駅通り→0727渋谷マークシティとなります。しかも宿の無料送迎あり。

 この結果、なにが起こったかというと、参加希望者がそれぞれの最寄りの旅行代理店から申し込むと、座席はとれても部屋がないということになった。
 宿はガラガラのはずなのに満室とはいかなることか……というと、じつは該当する宿泊付き格安パックに対して設定された「1人部屋」は数室しかないということが判明した。こちらはひとりひとりで申し込むので、すぐに「満室」ではじかれてしまうのだ。
 申込みを受けた旅行代理店はまず飛行機の座席を確認する。それから指定された旅館にファクスを送って部屋の確認をするのだが、そこではじかれているということがわかったのだ。
 では、ということで旅館に直接連絡して、こちらの事情を説明して、最終的に部屋は「1人部屋」でなくていいので、受けるだけ受けてほしいというお願いをした。
 はじめから団体として申し込めば問題ないのに、ひとりひとりで申し込もうとするから話がややこしくなる。しかしややこしいのは話だけで、実態はシンプルなのだから問題ない。
 個人ベースでやれることを、結果としてグループ化できないかという課題を掲げてみんなでやってみると、旅行代理店の対応の良し悪しだとか、まったく別の方法論だとかが浮かび上がってくる。ともかくみんなで同時にやると、いろいろな発見がある。
 しかし、まあ、あまりにもお邪魔虫の方法なので、次にはまったく同じ方法を、1か所の旅行代理店でやってもらった。申込みとキャンセルを個人ベースで進めながら、結果的にグループ行動ができるというシステムが、それに関しては完成した。


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